芭蕉
「奥の細道」より
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千じゆと云(いふ)所にて船をあがれば
前途三千里のおもひ胸にふさがりて
幻のちまたに離別の泪(なみだ)をそゝく
行春(ゆくはる)や鳥啼(な)き魚の目は泪
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やはり名文ですね。
「幻のちまたに離別の泪をそゝく」というのは
「この世は幻だと知っていながら、やはり別れは悲しく、
その幻のちまたに立って別れの涙を流すのだ。」ということ。
理屈でいえば、どうせこの世は、幻のようにはかないものだから
旅の別れなど、悲しいはずもないわけなのですが、
それでも、別れは悲しいといって、涙なんか流すのが人間だね、ということでしょう。
それはそれとして
「鳥啼き魚の目は泪」という表現が童話的でカワイイですね。
魚が目に涙をいっぱいためているっていうんですから。
芭蕉という人は面白い感性をもってるなあと
いつも思います。