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一日一書 1515 寂然法門百首(1)

2019-01-04 21:48:12 | 一日一書

 

無明転為明如融氷成水〈出典:『摩訶止観』一・上〉

 

無明は転ずれば、すなわち変じて明となる。氷を融かして水となすが如し。

 

 

春風に氷とけゆく谷川の心のうちにすましてぞみる

 

【通釈】

春風に氷が解けて流れる谷川の水を(真理を観ずる知恵に煩悩の氷が解けて流れる真理の本姓を)心の中に澄まして見るよ。

 

 

【考】

煩悩の水が菩提の水に変じるという題を、春風に解ける谷川の水という「立春」の景により詠んだ。

春部の冒頭歌なので「立春」の歌を配する。悟りの感覚を伝統的な季節感の中でとらえた一首。

新年、初日がのどかに昇れば、すべてが新しい空気に包まれる。旧年の汚れは払われ、

春風の中にすべては生まれ変わる。凍った深き谷川は静かに音を立てて流れ出し、山の自然もにわかに動き出す。

止観禅定により研ぎ澄まされた心は、その中に煩悩が菩提に転ずる悟りの感覚をふととらえたのである。

(山本章博『寂然法門百首全釈』)

 

〈注〉「煩悩」心を煩わし、身を悩ます心の働き。心身を悩ます一切の精神作用の総称。(『日本国語大辞典』)

「菩提」世俗の迷いを離れ、煩悩を断って得られたさとりの智慧。(『日本国語大辞典』)

「止観」雑念を止めて心を鎮め集中し、真実を観じる心の状態をいう。(『全釈』)

「禅定」仏道修行の一つで、三学・六波羅蜜の一つ。心を一点に集中し、雑念を退け、絶対の境地に達するための瞑想。心を統一して静かに対象を観察し、思索して真理を悟ること。坐禅によって無念無想になること。(『日本国語大辞典』)

 

 

 

 

ぼくの長男山本章博の著書「『寂然法門百首全釈』(以後『全釈』と称す)は、風間書房から2010年に出版され

それをぼくも寄贈されたのですが、なかなか通読はできませんでした。

このままでは、ずっとほったらかしになってしまいそうなので、この「一日一書」で

断続的にとりあげ、できれば、年内に100首全部を書いてみたいと思います。

 

 

「釈尊と教えを詠んだ歌のことを釈教歌というが、その中でもこの『法門百首』のように、

仏典の文句を題とした釈教歌を法門歌という。」(『全釈』)とのこと。

 

しがたって、今回の書のように、最初に漢文(これが仏典の文句)

その後に、寂然の歌という形式になります。

実際には、歌の後に、説明の文章があるのですが、それは割愛します。

【仏典の文句の詠み】【通釈】【考】などは、すべて、『全釈』からの引用です。

 

 

この歌のように、春風によって、すべてが生まれ変わることを

新年にあたって、祈りたいと思います。

 

 

 

 


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