きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「NO MAN’S LAND(ノーマンズランド)」

2007年06月07日 | 宝塚・劇団四季以外の舞台(落語含む)
 ボスニア紛争。ボスニア軍のチキとツェラは巡回中、敵の攻撃に遭い、戦地の中間地帯「NO MAN’S LAND」に逃げ込む。倒れたツェラの元をチキが一時離れたとき、セルビア軍のニノが、ツェラの身体の下に地雷を埋める。ボスニア軍がツェラを発見し、彼の死体を動かしたとき、周囲50Mが吹き飛ぶのを期待してだ。ニノが地雷を埋め終えたとき、隠れいていたチキがニノを撃つ。倒れるニノ。チキが優勢に見えたが・・・。

 誰が場を支配するのか。密室劇ではある。チキとニノの支配権争奪戦と思ったのに、途中から生きているとわかったツェラが一番優位となる。彼が身体を動かしたら周囲が吹き飛ぶのだ。動かずに場を支配するツェラ。その流れも「芝居的に」見応えがあった。

 大東亜戦争もヴェトナム戦争も、年代的には私には遠い話だけど、ボスニア紛争は、自分が「大人」の時の出来事なので、(ヘンな例えだけど)身近だ。ソビエトの支配力が東欧から消えれば、自由な民主国家が生まれ、みな幸せになると思ったのは、大いなる幻想だった。紛争を押さえるのはさらに大きい軍事力なのかなあ。だからといって冷戦を肯定するのもイヤだったし。ヨーロッパ大陸内をNATO軍が空爆したのもビックリした。「平和」を信じていれば「平和」になるなんてことはない。つい、ほんのちょっと前まで、普通に暮らしていた人々が、敵同士になり、戦争が始まる。軍事力の行使、というのは、日本人が思う以上に、世界的には一般的なんだなあ。誰が加害者で誰が被害者か。どちらか一方に括るには、現実は複雑すぎる。

 兵士3人は、その複雑な状況をよく演じていた。坂本くんは、台詞の通りが良く、華がある。(客に対し)緊張感を最後まで保たせてくれました。内田滋さんは、前半の動作(地雷を埋めるとか)がいくぶん段取りが見えていたけど、後半は迫力がありました。市川しんぺーさんが上手かった。家族どころが村全体をセルビア人に滅ぼされたチキと違い、村で平和に暮らしていたときに招集されたツェラは、つまりは職業軍人ではなく、どことなく「普通」の雰囲気を残しています。それが「ユーモラス」「ブラック・ユーモア」に繋がり、芝居にアクセントをつけていました。

 ただ、浅野さんがね。声の通りは悪い。TVの演技。に、加え、シリアス=力む、みたいな演技は苦手。というか、「またか」というか。こういう演技しかできないんだろうなあ。せっかく男性3人が「戦争」を表していたのに、一人だけ、違う存在だった。平和ニッポンの女優に過ぎなかった。場違い振りがマチオみたい、と言えば、わかる人にはわかってもらえるかしら。
 
 その他は、銃がいやに軽く見えたのが難点かな。それでも、「戦争」について、考える機会を与えてくれる作品だと思う。それが、ジャニーズの、V6の、坂本君が主演、というのは、そういった機会を、より広めることになるので、いいことだと思いました。坂本くんは、文字を口にするような空虚な演技ではなく、ちゃんと伝えるべき事を伝えていました。いい役者さんですね。

 
 芝居とは関係ないのですが、お隣が子連れで、ちょっとビックリ。お子さんは男の子で、どう見ても小学校低学年なのよ。お母さんが時々話しかけているし、爆撃シーンで子供は本気で怖がっているし。子供に見せるのはちょっと早いんじゃない?ベビールームとかに預けるよりは、8500円で一緒に劇場に入っちゃう方が安くて便利なんだとは思うけど・・・。周りの迷惑も少し考えようよ、お母さん。
コメント
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