木村さんのアルブレヒトは、
前回はルグリを思わせる高貴さが冷たくさえ感じたけど
今日は通常運転で暑苦しい愛だった。
義務いっぱいの人生で初めて知った恋に夢中なお武家様っぽい。
一途ではあるけど、恋いに浮かれて過ぎてはいない、
なんというか分別のある大人だけど、
それでも溢れる気持ちは止められない、
そこに悲劇があるというかんじかな。
ヒラリオンが吹く笛の音に、全てが終わったことを知る。
その時の表情が切なくて涙。
バチルドへのキスの前にジゼルを見るのがもう辛くて!
ジゼルに申し訳なく思いつつも、
振り切って自分の世界に帰ろうとしたんだな。
狂乱の場面ではウィルフリードに頼りまくりだけど、
無茶振りされても困るよねえ。
(どうしたらいい?知らないっす、無理っす、みたいな雰囲気)
木村さんらしいアルブレヒトだけど、
水香ちゃんの方が高貴に見えるのが惜しい。
木村さんは辺境貴族の分家で、
水香ちゃんは中央の王家の御落胤みたいな雰囲気なんだな。
それはそれで悲劇だけど。
ちょい前に上野&高岸で見たこともあり、
水香ちゃんも木村さんもそれぞれ自分の芝居をしているんだけど
いまいち役としては噛み合っていないように見えました。
古典の芝居をする木村さんと
現代女性の水香ちゃん、みたいなかんじ。
ただ、踊りは2人とも素晴らしかった。
水香ちゃんの踊りは脂がのっていて、今まさに盛りだね。
木村さんの踊りは細かいところまで正確で美しかった。
パ・ド・ドゥ後はアントルシャ。
渾身の踊りでした。
初役の森川くんのヒラリオンが、とても良かった。
ビジュアルはムサいんだけど
粗野と言うほどでもなく、ストーカーでもなく
一途で純愛系だけど、可憐な乙女系でもない。
心底ジゼルを愛し、ジゼルのためを思って行動しているのが分かるけど
「ジゼル、こっちにしとけよ!」と思わせることも
さっさと諦めろよ、と思わせることもない。
いろんな要素のバランスが良かった。
芝居心のある人だな。
とにかく、横恋慕感がいいんだわ!
弾くんは生真面目な面が出過ぎてて
無理矢理割り込むところにキャラ違いの違和感があったから。
弾くんは忠実ではあるけれど
一歩引いて見ている感じもするかなあ。
アルブレヒトの愚かさを認識しているかんじがする。
奈良さんのバチルドは美しく、
身分の高さを自覚している貴族のお姫様らしかった。
以前は香椎由宇に似てると思ったけど
最近はすーちゃん(憧花ゆりの)に似てると思う。
高木さんは精霊というより幽霊だけど
人間ではない怖さがあった。
統率感もよく出ていた。
乾さんはだいぶ学年が上がっちゃったな。
もうちょい、チャンスが欲しいなあ。
木村さんとユカリューシャの「ジゼル」がもう一度見たいな。
いや、むしろ、斎藤ジゼル、高岸アルブレヒト、木村ヒラリオンをもう一度見たい。
【主な配役】
ジゼル:上野水香
アルブレヒト:木村和夫
ヒラリオン:森川茉央
バチルド姫:奈良春夏
公爵:高岸直樹
ウィルフリード:柄本弾
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):
乾友子(黄)-岸本秀雄(緑)、吉川留衣(橙)-杉山優一(橙)、
川島麻実子(緑)-梅澤紘貴(橙)、河谷まりあ(桃)-入戸野伊織(緑)
ジゼルの友人(パ・ド・シス):
渡辺理恵、矢島まい、小川ふみ、伝田陽美、二瓶加奈子、政本絵美
ミルタ:高木綾
ドゥ・ウィリ:矢島まい、川島麻実子