日々是好日

懐かしき過去、期待の未来を希んで!

8月5日は生涯の記念日

2011年08月05日 | Weblog
 丁度今から57年前のこの日、戦争の真っ只中、本土決戦を前に陸士将校生徒として、最期の帰郷が許された。これが今生の最後と思う時!、うたた覚悟と感慨が自ずと過る。今朝早朝に、早々と陸士校門を後に、電車を乗り継いで、午前11時頃に加須駅に着いた。
  駅頭でたまたま下級の兵隊さんに敬礼を受けて、吃驚した。将校生徒の方が上官なのである。答礼もそこそこに、急ぎ足で、不動岡の稲荷神社に拝礼し、神社隣の平山写真屋にお願いして、楠の太い幹を背景に、写真を1枚撮って貰い、実家へ届けておくよう頼んで、その足で我が家へ向かった。全て郷里も親子兄弟も、これが最後と思う時!、胸が詰まる思いと、見聞きするもの全てが、新鮮で見納めだった。
 家では、父母と義弟や皆が(男子は皆兵隊さんに執られて留守、女子供だけ)大変喜んでくれて感慨無量で、この上も無かった。心尽くしの会話や、苦労して用意したお萩がとりわけ美味しく、食べながら嬉しく会話が弾んだ。その後、自転車で岡古井の家へ向かい面談し、小学校を経て、中学同級生を訪ねたが、これも徴用に執られて留守。急いでまた実家へ戻った。
 この間終始、父が自転車で絶えず後に追い付いて見届け心配してくれた。これが生死の別れと思うと、きっと息子の最後を見届けたい気持に駆られたに違いない。その親心は、何とも有り難く嬉しく、感謝一筋だった。
 袖を引かれる思いで、家郷家族に別れを告げ、将校生徒の軍装の身支度を整え、吾が家を後にした。誠に想い出深い最期の帰省であった。若冠18歳の、真剣な親子別れの風景であった。と今想う! 私の心には、今も生き生きとした生涯の記念日となっている。