思い起こせば92年前の戦時中のこの日こそ、許されて、本土決戦前の故郷の訪問の日であった。戦況が熾烈を極め一億総玉砕が叫ばれる中、故郷の父母・神社・山河の見納めと挨拶の為に、陸士校門を後に家郷に向かった。悲壮感など微塵もなく、むしろ勇猛感さえ高揚して居た。父母に永遠の別れを告げ、神社や不動尊に別離の拝礼を成し、午後4時38分に校門に帰着した。そして意外にもその10日後には終戦!その現実に直面したのであった。遣る方無き虚無感のみ感じられたのである。その後は終戦後の収拾のみで、国の将来像と陸士生徒の覚悟の堅持のみが共通認識の最たるものであったのである。斯くの如きは、18歳の若き青年の国を念う気節の挫折でもあり、一先ず復員して再招集を待つのみが、最期の通達であったようである。あれから79年、世界の国情は一変して我が国は平和国家を目指してその先陣を承けたまっている現世の現状である。今朝は珍しく霽れて薄曇りながら蝉の鳴く声が喧しい。今頃になってそれほど夏の気分が横溢している。69年の医師人生が先月末でその勤務を終えた。感慨無量である。