この7月12日は私にとって生涯のエポックともなった懐かしい嬉しい日であった。生涯のあれほど難関で、誰しもが合格を期して入試に心血を注いで、夢にまで見た陸士。受験後45日目の今朝何故か数匹のトンボが家の軒先をぐるぐる回って飛んでおり、なかなか立ち去ろうとしないのである。学校から帰っても、まだ大越礼羽の往還道路上に飛び回っているではないか?なんでだろうと思いきや?きっとそろそろ陸士の合格の予兆かなと、良い思いが頭を過った。果たしてその数日後に埼玉朝霞陸士校の、陸軍将校生徒試験常置委員会からの縦長の大き目の封書が届いたのである。あっ!これがあのトンボの舞だったのかな!と予兆を合点した次第であった。天にも昇る気持ち、意気衝天の生き甲斐、心地よい思いであったのである。その時必死に勉強した甲斐があったと自信を深めた次第である。早速父母に報告して本当に喜んで貰った思いが、今でも心に蘇る。それほどの自信と歓びの絶頂だった71年前の今日、7月12日前後の心境なのであった。苦心して勉学した想い出は懐かしく、幾つになって思い出しても楽しく元気が出る、生きる縁となっているのである。