マチンガのノート

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「紙の動物園」 ケン・リュウ著

2016-12-05 23:38:17 | 日記
SF短編集なのだが、表題作は、貧しい頃の中国から、
豊かだった頃の米国の田舎町に、米国人に妻として買われてきた母親と
その一人息子の話。
主人公が子供の頃は、大人の事情を解らずに母親に遊んでもらったり、
世話をしてもらっていたが、
年齢が上がるにつれ、母親が貧しい国から売られて来た事が解るようになり、
その事へのコンプレックスから距離を置くようになり、他の子どもの持っている
アメリカのプラスチックのおもちゃと、自分が母親に作ってもらった、
折り紙の動物達を見比べると、紙の動物達はチャチで貧相に見えるので、
それで遊ぶことも止めて、子供の頃に母親と会話していた
中国語も話さなくなり、両親から離れ、大学に行く。
癌になった母親が亡くなってから、母親が病床で書いた手紙を中国人観光客に
読んでもらい、それとともに小さな頃に作ってもらった、折り紙の動物を見つけ、
子供時代の母親と近かった頃の事を思い出す、というストーリー。
日本にもロシアや東欧、中国、フィリピンなどから来て、日本人と結婚して出来た
子どもたちがかなりの数居るのだろうが、母親の国の貧しさなどに
コンプレックスを感じて、距離を置くようになる事は多いのだろう。
その一部分として、大量生産の工業製品でしかない、表面的にピカピカした
プラスチックのおもちゃなども影響を与えているのだろう。
表面的にキラキラして安い刺激を子どもに与える大量生産のおもちゃなどがいかに
意味のない、さらには有害な影響を与えるかを考えさせる。