「帰還兵は何故自殺するのか」デビッド・フィンケル著に着想を得て制作された映画です。
ストーリー
下の画像の左から、アダム(マイルズ・テラー)とトーソロ(ポーラ・コール)、ビリー(ジョー・コール)は
イラクに派兵されて、任期を終えて本国に帰還しますが、それぞれ、戦闘体験に起因するPTSDによる
フラッシュバック症状や、簡易爆弾の爆発に巻き込まれた影響による認知機能や記憶力の低下などで帰国しても
普通に暮らすことができません。
アダムは帰国後も車に乗ると常に仕掛け爆弾を探して警戒することを止められず、予期しない所で
フラッシュバックの症状が出て、日常生活も困難で、ビリーは恋人に去られ自殺し、
トーソロは暴力の発作から、出産直前の奥さんに去られます。
アダムとトーソロの二人は退役軍人省に行きますが、医師との面談などは6~9か月待ちで、それまで
様々な補償金も治療も受けられません。
トーソロの障害のもとになった出来事も記録の不備から、自分で上官に証明してもらう書類を作成しなければ、
補償の対象にすらならないほど、サポートが欠けています。
アダムはビリーの母親の伝手で治療施設に入れることが決まりますが、トーソロは何の医療的ケアも受けられません。
エクスタシーという麻薬が症状に効くと他の退役兵に聞いたトーソロは密売人のところに行き、
手に入れようとしますが、上手くいかず、湾岸戦争の退役兵のギャングに運び屋の仕事をすれば、
エクスタシーをやると言われて、当然、違法な事と解りますが、それでも運び屋をやり、
エクスタシーを手に入れます。ここら辺のところは、薬物依存の臨床家の松本俊彦氏の言う、
依存症の患者さんは、快楽のために薬を摂取するのではなく、苦しさを麻痺させるために薬を摂取する、
という主張と重なっています。
しかしながら、2回目の仕事の最中に病院から奥さんのことですぐに来るように連絡があり、
そこでは奥さんが無事に赤ちゃんを出産していました。
しかしながら運び屋の仕事を勝手に中断したことで、ギャングに命を狙われたので、
アダムは自分の入るはずだった治療施設にトーソロを入所させます。
感想
制作はドリームワークスですが、このような重いテーマをメジャーな映画制作会社が映画化するというのも
アメリカの現状を表しているのでしょう。
米国では軍人の人は、日常の様々な所で敬意を示されるとのことですが、様々な障害を負った帰還兵の人は、
何か月も待たないと、治療を受けることすらできないというところに、米国社会の歪みを感じさせる
内容でした。
米国は多額の財政赤字を抱え、医療従事者も多額の奨学金を返さないとならないという現状を考えると、
米国政府は日本や韓国、NATO加盟国にさらに負担を求めるのではないだろうかと思わせる内容でした。