亜紀書房 - 「心のない人」は、どうやって人の心を理解しているか 自閉スペクトラム症者の生活史
京都府立大学の文学部で教えながら、発達障害当事者として色々と当事者研究の本を書かれたり
当事者の会を運営したりしている方の著書ですが、7人の当事者のインタビューをとりあげながら、
自らをマコトAとマコトBに分け、コメントを書かれた一冊です。
【感想】
発達障害当事者の方たちを取り上げていますが、それぞれ各年齢ごとに色々と考え、
漫画やアニメ、映画や本などから様々な物を取り入れて生きてきたことが分かる内容でした。
そのあたりが当事者の会などに出席したりして、同じ様な特性のある方々と交流している
主な層なのでしょう。
数年前に亡くなったうちの父親のようにずっと何かの言いなりになるのみで、周囲の人のことをほとんど気にしたり
考えたりしないレベルの発達障害の場合は、自分が何か周囲と違うということを感じる自分というものすら無いので、
当事者の会などに行っても会話に参加するなどは出来ずにいるのだと思います。
色々と考えたり感じたりしなくなるきっかけは、家庭内で暴力にさらされたり、特定の目標を決められて
何かをさせられる事が多いのでしょう。
そのあたりに関しては、自他境界というものがいかに必要なのかを考えさせるところです。
いかに生活の中に余裕や自由な時間が必要なのかがよく解るところです。
ルネ・デカルトは17世紀に「我思う、故に我在り」との言葉を残しましたが、近代化により
生活に余裕が出来たことで、自らいろいろ考える人が出てきたことで、その言葉が残ったのでしょう。
臨床心理の本などを読むと、10歳くらいから描画の中でも「川が立つ」というものが見られるようになり、
そのあたりから抽象的認識が始まるとのことです。
周囲と違う自己というものを認識するところまでいかなければ、SSTなどで色々と教わっても、
適切に使うことは難しいだろうと思います。