編者の杉山登志郎さんは、以前から『子ども虐待という第四の発達障害』などで、虐待の影響により
発達障害に似た症状のある症例を取り上げてきましたが、本書ではその後の研究や臨床の発展について
取り上げています。
冒頭の 友田明美・中西正史・杉山登志郎氏らの対談は興味深く、これまでの臨床上の位置づけや対応方法の
変遷などが解りいいのですが、その後の部分の多くはトラウマへの対応の方法が並べられているのが、
少し疑問でした。
様々な心理的、身体的なトラウマ由来の症状への対応方法が増えてきて、知見が蓄積されてきたことは
いい事なのですが、発達障害圏の方は主体が未成立だったり曖昧だったりすることが多いので、
治療者がクライアントを苦しめる症状への対応に気を取られ、何かの手法を提供して
症状をやわらげることばかり考えていると、クライアントもそれで何とかなると考え、
そのことにより余計にクライアントの主体が曖昧になる、生成しにくくなるという事も、
かなりありそうな事だと思いました。
ASD傾向の強いクライアントには、トラウマ処理の手法より、箱庭などのクライアント自体が自己生成することを促す
対応のほうが、そのようなことが起こりにくく良さそうだと思います。
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