社会問題を取り入れたミステリーですが、いろいろと考えさせられる内容でした。
【あらすじ】
アパートで恋人と暮らす市子ですが、プロポーズされた翌日に何も言わずに姿を消します。
恋人は警察に届けますが、該当する氏名の人物自体が存在しないと言われたので、
彼女が何者だったのかを自ら調べ始めます。
市子は親の都合で戸籍がなく、学校には難病である妹の月子として通います。
母親はスナック勤めで、その間は市子が妹の世話をしているのでした。
市子の母親も夫のDVから逃がれたり、借金問題を抱えたり、娘の月子が難病になったりで、
市子の戸籍の事まで手が回らないのでした。
市子を助けようとする高校の同級生などはいますが、それまでの暮らしで色々と表に出せないことを
してきた市子と母親だったので、なにかと困難なのでした。
【感想】
「戸籍のない気の毒な市子」を助けようとする人もいますが、市子と母親は自分たちでいろいろと乗り越えてきていたので、
その事が却って助けられることの障害になりますが、そのようなことは結構あるのかもしれません。
自分のために他人を利用したり使ったりする人のことを「サイコパス」や「ボーダー」などと名付け、
解った様に感じるのは簡単ですが、本人の経験や生育歴などの積み重ねが、そのような行動を選ばせているという
面も大きいのかもしれません。
その辺りに関しては国分功一郎さんの書いた「中動態の世界」という本を思い出しました。
この映画の中では、小学校の同級生のリッチな家の少女や、高校の同級生である彼氏も、市子の暮らしを見て
去って行くので、家の外の他人に関わったりしても、そのうち去って行くだろうという他者への感覚が
埋め込まれたという見方もできそうに思いました。
外的要因がメインか、先天的要因がメインかは、人によってその組み合わせが違いすぎるので、
比べることはできなさそうに思えます。
この映画では主役が女性でしたが、同じようなことは男性でも起きるのでしょう。
冷酷な犯罪者やテロリストとされる人物に、このような事は結構あるのかもしれません。
映画『市子』予告編|主演:杉咲花
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