徒然なか話

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愛おしき映画たち・・・その8 ~ 旅情(1955) ~

2012-07-13 21:51:47 | 映画
 先日BSプレミアムで映画「旅情」を放送した。いうまでもなくデビッド・リーン監督の不朽の名作で、僕は以前にもこのブログに書いた覚えがあるが、好きな映画を10本選ぶとしたら必ず入れるであろう1本だ。初めて観たのはたしか大学1年か2年の頃、銀座で観たと思う。初公開は昭和30年(1955)なので最初のリバイバル上映だったと思う。僕は小学生の頃から洋画を中心に随分映画館に通っていて、この映画の評判も映画情報誌などで知っていたが、それまでこの映画を観ていなかったということは、多分この映画は「新世界」で公開されたのだろう。当時、熊本には洋画の一番館として「大劇」と「新世界」が通町筋に並んでいた。僕が母親から預かっていたパス券は「大劇」のものだったから、そちらで上映される作品は逃さず観ていた。ディストリビューターの系列で言えば、ワーナーブラザース、MGM、パラマウント、20世紀FOX、コロンビアなどだ。一方の「新世界」はユナイテッド・アーティスツやユニバーサルなどだった。
 そんな話はさておき、この映画の魅力は水の都ヴェニスの風情もさることながら、キャサリン・ヘプバーン演じる50歳を目前にしたアメリカのオールド・ミス(死語?)ジェーンの魅力だ。僕は今まで観た映画のヒロインの中でも最も好きかも知れない。ちょっと気取ってはいるが、階段につっかかったり、運河に落っこちたりと今風に言えば“天然”系。少女のように恋に恋する純真さがちょっとせつない。ロッサノ・ブラッツィ演じるレナトとサンマルコ広場のオープンカフェで初めて出逢うシーンや、最後のデートで「この一瞬一瞬を憶えていたい」と別れがたい心情を吐露するシーンなど、すべてのシーンが秀逸で、これにアレッサンドロ・チコニーニの音楽がかぶってくるとこれはもう名作以外の何ものでもない。