徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

北琵琶湖 竹生島(ちくぶしま)

2015-01-26 21:23:59 | 音楽芸能


 滋賀県の彦根にいた頃、一度行ってみたいと思いながら行けなかったところの一つが琵琶湖の北部に浮かぶ竹生島だ。ある年の夏休みに家族と遊覧船で彦根の沖に浮かぶ多景島に渡った。次の夏は竹生島だなと思っていたら、転勤になってしまい、竹生島はとうとう行かずじまいになってしまった。
 竹生島は古より「神の住む島」と呼ばれた聖なる島。都久夫須麻神社や宝厳寺などの由緒正しい寺社もあり、土日には観光客やお遍路さんたちで溢れる。白洲正子の「近江山河抄」にこんな一節がある。

「竹生島がいつも女性にたとえられるのは、その姿が優しいだけでなく、母なる湖を象徴したからであろう。祀られているのも、ツクブスマという女神で・・・」

 そんな竹生島を題材にした金春禅竹の作ともいわれる能「竹生島」のあらすじは次のようだ。

 延喜帝(醍醐天皇)の臣下が、竹生島の弁才天の社に詣でようと、琵琶湖にやって来ます。臣下は、湖畔で出会った老いた漁師と若い女の釣り舟に便乗し、湖に浮かぶ竹生島を目指します。湖春のうららかな景色を眺めるうちに竹生島へ着き、老人は臣下を社に案内します。連れの女も一緒に来たので、臣下は老人に、竹生島は女人禁制ではないのか、と問いかけます。するとふたりは、竹生島は女体の弁才天を祀り、女性をお隔てにならないと返し、島の由来を臣下に語り聞かせます。その後女は、自分は人間ではないと明かして社の御殿に入り、老人は湖の主であると告げ、波間へ消えていきました。
 臣下が社人に宝物を見せてもらい、時を過ごしていると、御殿が鳴動し、光輝く弁才天が現れます。壮麗な天女の姿で、弁才天が夜の舞楽を奏するうちに、やがて月が湖上に澄み輝く頃を迎え、湖中より龍神が現れました。龍神は金銀珠玉を臣下に捧げ、祝福の姿を表します。そして、ある時は天女となって衆生の願いをかなえ、ある時は下界の龍神となって国土を鎮めるのだ、と衆生済度の誓いを現した後、天女は社殿に入り、龍神は湖水の波を蹴立て、龍宮のなかへ飛び入りました。(the能ドットコム)より

 その能「竹生島」をもとにした長唄が下の長唄「竹生島」で、詞章もほとんどそのまま使っている。



弥生半の海の面、霞わたれる朝ぼらけ、長閑に通ふ船の路、うき業となき心かな
此の浦里に住みなれて、明けくれはこぶうろくづの、数をつくすや釣人の、誓の船に法の道
比良の根颪吹とても、沖漕ぐ船はよもつきじ、旅の習のおもはずも、
雲井のよそに見し人も、同じ小船になれ衣
あれ竹生島も見えたりや
船が着きて候、御上り候へ
不思議やな、此の島は女人禁制と承り候に、あれなる女人は何とて参られ候ぞ
それは知らぬ人の申す事にて候、
忝くも此の島は、九生如来の御再誕、
そりや言はいでも住の江の、松のひじやうも妹と背の、そのあひ中はあるものを、
弁財天は女体にて、結ぶ縁の糸竹に、道も守りて新たなる、天女と現じましませば、
女子に隔てなみならぬ、深き心の願事も、利生は更におこたらず
何の疑ひ荒磯の、島松影のあま小舟、乙女の姿忽に社壇の扉へ入るとよ見えしが、
又釣人も立帰り、波間に入らせ給ひけり
実に/\かゝる有様に、信ずる心弥勝る、神の示現を松のかげ
御殿頻に鳴動して、光り輝く日月の、山の端出る如くにて、現れ給ふぞ忝けなき
抑々是は此の島に住んで臣を敬ひ、国を守る弁財天とは我が事なり
虚空は音楽数々の、花降り下る春の夜の、月に輝く乙女の袂、かへす/\も面白や
夜遊の舞楽も時過ぎて/\月澄み渡る海づらに、波風頻に鳴動して、下界の龍神あらはれたり
龍神湖上に出現して/\
光も輝く金銀珠玉、彼のまれ人に捧ぐるけしき、有難かりける奇特かな/\