徒然なか話

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御花畑邸の能舞台

2021-07-07 20:41:13 | 歴史
 最近、「熊本市史」(昭和7年出版)をあらためて読み直している。その中の図版の一つに明治初期に描かれた「御花畑惣絵図」があった。「御花畑」は、江戸時代に熊本藩の藩主を務めた加藤氏・細川氏の屋敷があったところ。その広大な敷地には南側に白川から引いた泉水と築山で構成された庭園が整備されていて、泉水の北側には能舞台があったという。この図は上が東となっており、右下の隅に木々(四ツ木?)が描かれているが、この一角が現在の花畑公園にあたるのでその広大さがわかる。
 能舞台に焦点を当ててみると、中央に「御舞台」があり、橋掛かりの先に「鏡之間」「御楽屋」「御役者之間」などが描かれている。見所も余裕を持ったつくりで、ひょっとしたら隣接する「御廣間」からも見ることができたのかもしれない。
 この能舞台でいったいどんな演能が行われていたのか興味津々だが、金春流肥後中村家のサイトにその一部が紹介されている。中でも寛文5年(1665)10月28日に行われた、金春流肥後中村家の二代目・中村伊織の舞い納めの演能は、喜多流の志水一学、中村伊織嫡子庄右衛門が中心だが、ワキには上方にもよく知られた横田善太夫、京都狂言役者野村又三郎、藤崎宮雇太夫佃三郎左衛門、江戸細川家屋敷で幕府囃方と共演する菊池高木次兵衛などそうそうたる名手が揃ったことが記載されている。
【演目】
  梅が枝  一学
  朝長   庄右衛門
  関寺   伊織
  船弁慶  一学
  芦刈   一学
  羅生門  三郎左衛門
  猩々乱  庄右衛門


全体図 その広大さがわかる


能舞台とその周囲(現在のみずほ銀行熊本支店辺り)


2016年9月18日 藤崎八旛宮秋季例大祭 段山御旅所奉納能 金春流「猩々」