3/23(金)、NHK奈良UHFで、NHK奈良特集「本音で語ろう!奈良 観光のこれから」(19:30~20:43)という討論番組が放送された。
番組ホームページには《全国有数の観光資源を有しながら、観光産業は十分成熟しているとは言えず、旅館・ホテルなどの宿泊施設数も全国最下位レベルである奈良県。観光客の数は低迷を続け、奈良の観光産業は豊富な歴史・文化遺産に依存するだけの「大仏商法」だと揶揄する声さえあります》
《どうすれば観光復活が果たせるのか。奈良在住の方を中心にした20人による徹底討論で迫ります》とある。2010年の平城遷都1300年を控えた今、タイムリーな企画だ。同局は2010年まで、毎月この企画を続けていくそうで、大いに期待している。
討論に参加した20人は、年齢も職業も国籍もまちまちだが、奈良を愛し、この奈良をなんとかしたい、と考えている人たちばかりだった。まずは番組中で印象に残った発言を紹介したい。
【テーマⅠ.奈良に足りないものは?】
・奈良近鉄タクシーの方は、「奈良に来られる方の90%は神社仏閣が目当て。奈良は、観光地としての楽しみや魅力に乏しい。奈良でしか味わえないものを提供すべきだ」。
・「お迎えする人のもてなしが大切」というNPO職員の言葉を受けて、コメンテーターの高田昇氏(立命館大学政策科学部教授)は「町全体での心配り、温かさが必要だ」。
・中国人(NPOに所属)は「中国で、奈良の交通情報を得ようとネットで検索しても、ヒットしない。国際奈良学セミナーハウスのような安くて良い宿も出てこない。奈良に来ても中国語の情報マップがない」と、外国人向けの情報発信の不足を指摘。
・奈良交通(地域振興部長)は「奈良に、強いリーダーシップを持った人がいない。和を尊ぶ『調整型』のリーダーばかりでは問題が解決できない」。
※全体として「奈良には魅力があるのにPR不足」という意見と「観光地としての魅力に乏しいし、行きたいと思わせるものがない」という意見に分かれる。
・取材VTRに登場する若い観光客は「店が早く閉まるので、夜に遊ぶところがない。見どころは1日で回れるので日帰りで十分」という。
・高田教授は「団体バスで乗りつける『マス・ツーリズム』は十数年で1/2以下になっているのに、それに対応できていない。買物・食事など『都市型観光』としての楽しみが必要。また『あまり奈良のものにこだわりすぎない』ことも大切」。
・黒須宏志氏 (財団法人日本交通公社 主任研究員)は「『手段としての宿泊』(キャパシティを増やす)と『目的としての宿泊』(奈良らしい和のリゾートなど、宿泊の魅力を高める)を分けて考えなければならない」。情報誌の女性編集者は、オーベルジュ(宿泊施設付レストラン)や高級志向のホテルなどを提案する。
・長浜市(滋賀県)のVTRを見て高田教授は「長浜は1、2年でガラリと町並みを変えた(1、2年で一気にやらないとできない)。それには強力なリーダーシップが必要だ」。
・海竜王寺住職は、「県の『代官山iスタジオ』は、あの外観では周囲とマッチしない。壁を看板に使うなど、もっと工夫が必要」。学生は「看板に描く絵を全国の若者から募集すれば、奈良を見に行くなど、若者の目が奈良に向くのでは」。
【テーマⅡ.奈良の観光振興のためのコンセプトは?】
・八坂豊氏(奈良ロイヤルホテル支配人)は「奈良ランドオペレーター」を提案。ランドオペレーターとは「現地において観光客やビジネス客の旅の手配や案内を行う仕事、手配会社」で、学術研究的なことまで手配する。海外への奈良情報発信も、ここが行う。
・中島史子氏(エッセイスト)は、「のんびり、ゆっくり、じっくり。『小京都』はあっても『小奈良』はない(こんなに自然に恵まれた古い街はない)。寺も、京都の寺のように塀で囲われていなくて、とてもオープンなのが素晴らしい」。
・北浦弘順氏(南都銀行バリュー開発部長)は「歩く・体験する奈良(素通りするのではなく、奈良の歴史・文化を体験する)」を提案。この銀行は、全国の金融機関で初めて、同部内に「観光企画室」を設置している。
・高田教授は、「和の風、緑(自然)の風、新しい(若い人の)風 」。
このように番組では、辛口の意見を含め、さまざまな問題点が浮かび上がった。今朝(3/29)の奈良新聞にも、奈良市内のホテル・旅館(対象=53施設)には車イス用のトイレが少ない(11施設のみ設置)、廊下に手すりがない(47施設が未設置)など、高齢者や身障者の旅行に対応していない、という記事が載っていた(「障害者の自立をすすめる会・創ゆう」調べ)。
これら弱点を是正し、逆に奈良のすばらしさをもっとPRしよう。2010年まで、残された時間は少ない。早く着手して「観光復活」を図らねば。
※参考:観光地奈良の勝ち残り戦略(2)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/ff90160e804629a80dcdfd1f4b9f4522
※写真は、平城遷都祭(06.4.29)のミス奈良たち。
番組ホームページには《全国有数の観光資源を有しながら、観光産業は十分成熟しているとは言えず、旅館・ホテルなどの宿泊施設数も全国最下位レベルである奈良県。観光客の数は低迷を続け、奈良の観光産業は豊富な歴史・文化遺産に依存するだけの「大仏商法」だと揶揄する声さえあります》
《どうすれば観光復活が果たせるのか。奈良在住の方を中心にした20人による徹底討論で迫ります》とある。2010年の平城遷都1300年を控えた今、タイムリーな企画だ。同局は2010年まで、毎月この企画を続けていくそうで、大いに期待している。
討論に参加した20人は、年齢も職業も国籍もまちまちだが、奈良を愛し、この奈良をなんとかしたい、と考えている人たちばかりだった。まずは番組中で印象に残った発言を紹介したい。
【テーマⅠ.奈良に足りないものは?】
・奈良近鉄タクシーの方は、「奈良に来られる方の90%は神社仏閣が目当て。奈良は、観光地としての楽しみや魅力に乏しい。奈良でしか味わえないものを提供すべきだ」。
・「お迎えする人のもてなしが大切」というNPO職員の言葉を受けて、コメンテーターの高田昇氏(立命館大学政策科学部教授)は「町全体での心配り、温かさが必要だ」。
・中国人(NPOに所属)は「中国で、奈良の交通情報を得ようとネットで検索しても、ヒットしない。国際奈良学セミナーハウスのような安くて良い宿も出てこない。奈良に来ても中国語の情報マップがない」と、外国人向けの情報発信の不足を指摘。
・奈良交通(地域振興部長)は「奈良に、強いリーダーシップを持った人がいない。和を尊ぶ『調整型』のリーダーばかりでは問題が解決できない」。
※全体として「奈良には魅力があるのにPR不足」という意見と「観光地としての魅力に乏しいし、行きたいと思わせるものがない」という意見に分かれる。
・取材VTRに登場する若い観光客は「店が早く閉まるので、夜に遊ぶところがない。見どころは1日で回れるので日帰りで十分」という。
・高田教授は「団体バスで乗りつける『マス・ツーリズム』は十数年で1/2以下になっているのに、それに対応できていない。買物・食事など『都市型観光』としての楽しみが必要。また『あまり奈良のものにこだわりすぎない』ことも大切」。
・黒須宏志氏 (財団法人日本交通公社 主任研究員)は「『手段としての宿泊』(キャパシティを増やす)と『目的としての宿泊』(奈良らしい和のリゾートなど、宿泊の魅力を高める)を分けて考えなければならない」。情報誌の女性編集者は、オーベルジュ(宿泊施設付レストラン)や高級志向のホテルなどを提案する。
・長浜市(滋賀県)のVTRを見て高田教授は「長浜は1、2年でガラリと町並みを変えた(1、2年で一気にやらないとできない)。それには強力なリーダーシップが必要だ」。
・海竜王寺住職は、「県の『代官山iスタジオ』は、あの外観では周囲とマッチしない。壁を看板に使うなど、もっと工夫が必要」。学生は「看板に描く絵を全国の若者から募集すれば、奈良を見に行くなど、若者の目が奈良に向くのでは」。
【テーマⅡ.奈良の観光振興のためのコンセプトは?】
・八坂豊氏(奈良ロイヤルホテル支配人)は「奈良ランドオペレーター」を提案。ランドオペレーターとは「現地において観光客やビジネス客の旅の手配や案内を行う仕事、手配会社」で、学術研究的なことまで手配する。海外への奈良情報発信も、ここが行う。
・中島史子氏(エッセイスト)は、「のんびり、ゆっくり、じっくり。『小京都』はあっても『小奈良』はない(こんなに自然に恵まれた古い街はない)。寺も、京都の寺のように塀で囲われていなくて、とてもオープンなのが素晴らしい」。
・北浦弘順氏(南都銀行バリュー開発部長)は「歩く・体験する奈良(素通りするのではなく、奈良の歴史・文化を体験する)」を提案。この銀行は、全国の金融機関で初めて、同部内に「観光企画室」を設置している。
・高田教授は、「和の風、緑(自然)の風、新しい(若い人の)風 」。
このように番組では、辛口の意見を含め、さまざまな問題点が浮かび上がった。今朝(3/29)の奈良新聞にも、奈良市内のホテル・旅館(対象=53施設)には車イス用のトイレが少ない(11施設のみ設置)、廊下に手すりがない(47施設が未設置)など、高齢者や身障者の旅行に対応していない、という記事が載っていた(「障害者の自立をすすめる会・創ゆう」調べ)。
これら弱点を是正し、逆に奈良のすばらしさをもっとPRしよう。2010年まで、残された時間は少ない。早く着手して「観光復活」を図らねば。
※参考:観光地奈良の勝ち残り戦略(2)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/ff90160e804629a80dcdfd1f4b9f4522
※写真は、平城遷都祭(06.4.29)のミス奈良たち。