tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

向原寺=豊浦宮=豊浦寺(産経新聞「なら再発見」第71回)

2014年03月31日 | なら再発見(産経新聞)
産経新聞奈良版・三重版ほかに好評連載中の「なら再発見」、今回(3/29付)は「向原寺(こうげんじ) 飛鳥時代を今に伝える」、筆者はNPO法人「奈良まほろばソムリエの会」会員の辰馬真知子さんである。辰馬さんは、当欄の原稿とりまとめと内容のチェックをしていただいている。縁の下の力持ちとして、当欄の運営を陰で支えて下さっているのである。その上、今回は原稿も書かれた。有り難いことである。では、全文を紹介する。

 向原(こうげん)寺は、明日香村豊浦(とようら)にある浄土真宗本願寺派の寺だ。今、集落のなかにひっそりと建つこの寺には、驚くような歴史が詰まっている。
 「日本書紀」には欽明天皇13年(552)、蘇我稲目(そがのいなめ)が百済王から献上された釈迦像を向原(むくはら)の家に安置した、とある。いわば、日本仏教における最初の寺だ。

 推古天皇はここで即位し、592年、豊浦宮(とゆらのみや)とした。飛鳥で最初の宮だ。小墾田宮(おはりだのだのみや)へ移る際、蘇我馬子に宮跡を授けた。馬子はここに、本格的な寺院としては法興寺(ほうこうじ 現在の飛鳥寺)に次ぐ2番目の寺院として、豊浦(とゆら)寺を建立した。その跡に現在の向原寺が建つ。



豊浦宮跡の遺構(向原寺境内)

 豊浦宮から豊浦寺への変遷を物語る遺構が、向原寺境内で保存されている。6世紀後半の宮跡と思われる掘立柱(ほったてばしら)穴と石敷きがあり、その上の土を突き固めた版築(はんちく)は、7世紀初頭の寺の講堂の基礎部分と考えられている。
      ※   ※   ※
 向原寺は「明日香村理解の一助になれば」と、快く遺構の見学に応じてくれる。さらに周辺民家の玄関先にある「推古天皇 豊浦宮跡」碑の横には、塔の中心の礎石と思われる巨石もあり、飛鳥川のほとり、甘樫丘の麓(ふもと)に壮大な伽藍(がらん)をもつ寺であった往時をしのぶことができる。



豊浦寺五重塔の礎石(心礎)。舎利を受ける穴がある

 向原寺はまた、元善光寺(もとぜんこうじ)ともいわれる。欽明朝に百済よりもたらされた仏像は、蘇我氏によって向原の寺で祭られていたが、排仏派の手により「難波(なにわ)の堀江」に棄てられた。それを信濃国の本田善光が拾い上げ、信濃に持ち帰り祭ったのが長野の善光寺だそうだ。
 向原寺の南には難波池と呼ばれる小さな池があり、ここが「難波の堀江」であるという土地の伝承がある。この難波池から江戸時代中期、古い仏像の頭部が発見された。はじめは難波の堀江に棄てられた釈迦像かと思われたが、観音菩薩像の頭部だった。体部や光背、台座は江戸期に補われ、寺宝としてお祭りされていたが、昭和49年に盗難にあい、行方不明になっていた。



 その盗難仏がオークションに出品されているのが判明。仏像を買い取り、平成22年、36年ぶりに寺に戻ってきた。実に数奇な運命をもった像である。事前に連絡すれば、お寺の説明を聞きながら拝観することができる。
      ※   ※   ※
 観音菩薩像は、優しい表情が飛鳥時代の仏像の特徴をよく表している。もしかすると飛鳥時代の豊浦寺で祭られていたものかもしれない。
 観音菩薩像の特徴として、頭部に「化仏(けぶつ)」と呼ばれる小形の阿弥陀如来像がある。この像の化仏は線刻だが、これが実にかわいい。「カワイイ」が大好きな日本人の源流を、ここに見る思いがする。
 私はこの像に出合ってから、飛鳥時代の観音菩薩像の化仏を拡大鏡で拝観させていただくようになった。今では奈良だけでもかなりの数の「カワイイゆるキャラ化仏」を確認し、仏像拝観の楽しみのひとつになっている。
 春まだ浅い飛鳥。千数百年変わらぬ和やかな雰囲気をたたえ、優しく包みこんでくれる仏像に、また会いに行きたくなった。(NPO法人奈良まほろばソムリエの会 辰馬真知子)

向原寺に、こんな優しい表情の観音さまがいらっしゃるとは、初めて知った。しかも線刻された化仏が、こんなに「カワイイ」とは。女性ならではの目の付けどころだ。「豊浦寺跡(とゆらでらあと)」のことは、『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』(山と渓谷社刊)には、このように出ている。あわせて読むと、理解が深まることだろう。

豊浦寺は推古天皇十一年(六〇三)に創建された。推古天皇が豊浦宮から小墾田宮に移る際、蘇我馬子が豊浦宮を譲り受け、寺とした。日本で最初の尼寺といわれ、建興寺・小墾田豊浦寺・豊浦尼寺とも呼ばれた。また、向原寺・桜井寺も豊浦寺の地にあったとされる。九世紀にはすでに堂宇が崩れ、中世には衰亡。講堂跡に現・向原寺がある。

伽藍配置の詳細は不明だが、金堂・講堂・塔・回廊や尼房の基壇と思われる遺構が部分的に確認されている。金堂は、向原寺の南・豊浦集会所の辺りで一部分検出され、規模は東西一七㍍・南北一四㍍におよぶと想定される。講堂は飛鳥寺とほぼ同規模と推定されるほど巨大。また豊浦寺下層では、豊浦宮のものとみられる石敷きを伴う掘立柱建物跡が見つかっている。

早いもので「なら再発見」も70回を超えた。いよいよこの秋には100回めを迎える。最近は原稿も滞りがちだが、何としてもあと1年は継続したいと思っている。書き手の皆さん、それまで頑張りましょう! 辰馬さん、興味深い話を有難うございました。

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忍坂から泊瀬・朝倉の万葉歌(大和歴史紀行バスツアー)、4月26日(土)開催!(2014Topic)

2014年03月30日 | お知らせ
いよいよ今年(2014年)の4月から、奈良まほろぱソムリエと行く「大和歴史紀行バスツアー」がスタートする。奈良交通のHPによると

■大和歴史紀行(歴史講座または展示解説)
奈良県内にある公立博物館や資料館などで専門的な歴史講座(展示解説)を拝聴し、午後からそのテーマに沿った歴史的な故地をご見学いただくコースです。午後のバスツアーは「奈良まほろばソムリエ」認定者に同行案内していただきます。
歴史講座講師:各博物館・資料館の学芸員等


4月のコースは、忍坂・泊瀬・朝倉コースである(明日香村~桜井市)。

■平成26年4月26日(土)
■忍坂から泊瀬・朝倉の万葉歌
■主な見どころ:万葉文化館(万葉集の講座)・祟峻天皇陵・舒明天皇陵、鏡女王墓、
大伴皇女墓・白山神社
■講座講師 竹本 晃氏(奈良県立万葉文化館 学芸員)
■コース内容
近鉄奈良駅=JR奈良駅=明日香・万葉文化館(万葉集の講座)=明日香(昼食)=倉橋・祟峻天皇陵=忍坂・舒明天皇、鏡女王墓、大伴皇女墓=朝倉宮伝承地(車窓)=白山神社(万葉集発祥の地碑)=JR奈良駅=近鉄奈良駅(18:10頃)
※舒明天皇陵のある忍坂地区では、往復で約3kmの徒歩区間があります。

■旅行代金(おひとり)8,000円(日帰り/昼食付)

5月以降の予定も紹介すると、
5月 7日(水) 知られざる陣屋町と船宿寺のつつじ(葛城市・御所市)
6月13日(金) 金屋・三輪山から檜原の万葉歌(明日香村・桜井市)
7月12日(土) 大和の原風景を求めて[国中編](奈良市・田原本町・広陵町)
8月31日(日) 丹生川上神社三社めぐり(下市町・川上村・東吉野村)
9月18日(木) 古代ヤマト王権の故地・纒向遺跡を歩く(桜井市)

なかなか個人では行きにくいコースをうまく突いている。すべて博物館や資料館の学芸員さんなどの講話がついているし、案内はすべてNPO法人「奈良まほろばソムリエ」のメンバーなので、バス車中や現地で、詳しい解説も聞ける。

これらのコースは、もともと「奈良ファン倶楽部」(奈良県ビジターズビューロー)の会員向けに企画されたもので、同倶楽部の会員は、一般価格より500円安い費用で参加できる仕組みである。

募集が始まって日が浅いので、各コースともまだ空席がある。皆さん、ぜひご参加ください!

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大和郡山お城まつり(第54回)は、4月11日まで!(2014Topic)

2014年03月29日 | 奈良にこだわる
いよいよ昨日(3/28)から、大和郡山のお城まつりが始まった。観光サイト「遊びに行こうぜ!」によると、

夜桜のライトアップをはじめ数多くのイベントを開催
奈良県大和郡山市では、「第54回 大和郡山お城まつり」が、郡山城跡一帯にて、3月28日(金)~4月11日(金)の期間で開催される。期間中は、夜桜のライトアップ(18:00~21:00)をはじめ、「金魚品評会」(3月30日 12:00~/柳澤神社前)、「時代行列・白狐渡御」(3月30日 14:00~/市内巡行)、「市民パレード」(4月6日 14:00~/市内巡行)など、土日を中心に多くのイベントが開催される。



金魚の名産地、城下町大和郡山市の春の祭り
「金魚品評会」は、1907年から、毎年4月上旬の桜花満開の頃からおこなわれ、さまざまな高級金魚が一堂に会し、品評され訪れる人たちの目を楽しませる。また、「金魚品種展」(3月28日~3月29日、3月31日~4月11日/柳澤神社前)や「即売会」(3月28日~4月6日 12:00~)も実施予定。「白狐渡御」は、子どもたちが、白衣に狐の面をつけて、源九郎神社から白狐ばやしに合わせて市内を練り歩きくもので、昭和初期からの伝統を誇る。源義経や静御前、戦国武将も登場する「子ども時代行列」もおこなわれる。

4月6日(日)正午からは、大和郡山市観光PR大使の歌手・山口智世(さとよ)さんによる「ふれあいコンサート」も、追手向櫓広場で開催される。3月30日(日)の「白狐渡御(びゃっこどぎょ)」のことは、先日の「なら再発見」でも紹介されている。なお詳しい情報は、大和郡山市のHPに載っている。

一昨日からの陽気で、奈良県下でも桜が咲き始めた。お城まつり期間中には満開の桜も楽しめる。皆さん、ぜひ郡山城址に足をお運びください!

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奈良まちなか市場(第17回)は、3月29日(土)と30日(日)に開催!(2014Topic)

2014年03月28日 | お知らせ
昨日(3/27)のランチタイム、片桐新之介さん(株式会社まちづくり奈良)にバッタリお会いした。「この土日の“奈良まちなか市場”で、『奈良“地理・地名・地図”の謎』も販売されます!」との有り難いお知らせ。「奈良まちなか市場」のことは奈良市観光協会のFacebookに、コンパクトに紹介されている。

第17回奈良まちなか市場
3月29日(土)、30日(日)10時~17時 「本をたのしむ週末」が、きらっ都・奈良(奈良もちいどのセンター街)で開催されます。古本市や書道の体験教室、本にまつわるトークショー、商店街やきらっ都・奈良の当日のお買い物レシートを提示すると図書カードがあたる抽選会などが催されます。しかまろくんやせんとくん、まんとくんも登場します。ぜひお越しください。詳しくは まちづくり奈良のHP でご確認ください。


詳しい情報は上記HPに載っている。展示・即売会だけでなく、トークショーや演劇の上演など、楽しいイベントがてんこ盛りだ。この土日は、ぜひ「きらっ都・奈良」に足をお運びください!

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吉野貯木まちあるき(第3回)は、3月29日(土)開催!(2014Topic)

2014年03月27日 | お知らせ
ガイドブック「ちょぼくブック」の発刊を記念して、第3回「吉野貯木まちあるき」は、3月29日(土)、近鉄「吉野神宮駅」周辺で開催される(参加費無料・事前申込制)。イベントのFacebookによると、

まちがひとつの製材所、吉野貯木。近鉄吉野線の吉野神宮駅を降りると、一瞬にして木の香りに包まれます。ふもとに広がる吉野貯木場には、製材所、集成材工場、木工所、樽丸工場、原木市場の木材関連施設が38軒も集まっているのです。このまちのガイドブック「ちょぼくブック」が間もなく誕生します。

発刊を記念して、2014年3月29日に第3回吉野貯木まちあるきを開催します!この日に参加していただいた方に、まず最初に「ちょぼくブック」をプレゼントいたします。これを使って、吉野貯木を探検して、吉野の人と木を楽しんで下さい!事前に参加申し込みが必要です!詳しくは吉野貯木まちあるきホームページをご覧ください。

【スケジュール】
10:30~11:00 まちあるき受付(吉野神宮駅)
11:00~17:00 まちあるき(参加費無料・事前申込制
17:00~ ちょぼくブック発行記念 餅まき

主催:ちょブック製作委員会、吉野ビジターズビューロー、Re:吉野と暮らす会
協力:吉野木材青壮年経営者協議会、日本全国スギダラケ倶楽部、吉野貯木のみなさん


18:30から開催される懇親会(参加費3,000円・事前申込制)と宿泊(1泊朝食付6,000円 事前申込制・先着順・相部屋)は、すでに満員御礼だそうだ。なおアクセスは、

お車でご来場の方⇒駐車場をご利用ください。(町営「吉野神宮駅」裏手にパーキングあり¥300/回)
電車でご来場の方⇒近鉄「吉野神宮駅」改札を降りてすぐが受付です。


11:00からのまちあるきでは、「まちあるき企画」として、15:00までは「屋台ブース(ワークショップ&物販)」や、15:30~17:00までは「吉野木材最新事例報告会」も開催される。

貯木場が集まって1つのまちを形成するという、全国でも珍しい「吉野貯木」に、ぜひ足をお運びください!

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