tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

暗~い奈良の夜 花街で照らせ(産経新聞夕刊)を考える

2014年05月31日 | 観光にまつわるエトセトラ
誰が、こんな悪意に充ち満ちた記事を書いたのだろうか。産経新聞5/28付夕刊(大阪本社版)の「暗~い奈良の夜 花街で照らせ」という記事である。中見出しには《駅前8時で真っ暗/泊まる理由ない》という誹謗や《観光都市なのに「大仏商法」》という意味不明なフレーズが並ぶ。以下、記事全文を紹介(青字)しつつ、私のコメント(黒字)を加えさせていただく。

国内外から1300万人超の観光客が訪れる観光都市でありながら、主要駅周辺の飲食店の多くが午後8時に閉店するため「夜の街が暗い」と指摘される奈良で、こうした不満を解消しようと市が対策に乗り出した。

記事の中に出てくるのは「東向商店街」の話(近鉄・山口会長のコメント)、つまり近鉄奈良駅前だ。このリード文では勝手に「主要駅周辺」に拡大し、かつ事実を検証せずに「地の文」に変えている。新大宮駅前も大和西大寺駅前も富雄駅前も、飲食店はずいぶん遅くまで営業している。

観光客が多いため、進んで集客をしない商売人たちの姿勢は「大仏商法」とも称され、海外のガイドブックには「奈良は3時間で十分」と書かれる始末。市は約半世紀前まで栄えていた花街・元林院の復興を柱に、「夜の観光」活性化を目指す考えだ。

この記者は「大仏商法」の意味をご存じないようだ。もともともは「奈良は、東大寺の大仏という優れた観光コンテンツを持っているので、多くの観光客が自然と集まる」という褒め言葉として使われ出した。最近はこれを曲解して「優れた観光コンテンツを持っているのでそれに安住し、観光関連業者は積極的にPRせず、待ちの姿勢だ」という悪い意味に使う人が増えた。

しかしそれでも単に「観光客が多いため、進んで集客をしない」ということとは違う。「優れた観光コンテンツ」が前提だ。だから《観光都市なのに「大仏商法」》という珍妙な見出しをつけた整理部の記者も、全く理解していない。どうせ書くなら《「大仏商法」に安住?》くらいのところか。書いてほしくはないが…。

元林院町・菊乃さんの「つるや」の月替わりランチ。これで2,500円!菊乃さんのホームページから拝借

世界遺産・興福寺の南にある猿沢池のほとりに開けた花街、元林院。大正末期から昭和初期の最盛期には置屋は16軒を数え、200人超の芸舞妓(げいまいこ)で華やいだ。伊藤博文や志賀直哉、司馬遼太郎ら、政財界や文化人がこぞって訪れたという。今も昔ながらの木造建築が立ち並ぶが、現在、置屋の数は2軒で、芸妓も4人ほど。元林院町の人口も、昭和29年は213人だったが、現在は39人にまで激減している。飲食店などもあるが、夜になれば街は真っ暗だ。

もともと、近くに奈良市役所があったこともあり、飲み屋街として栄えていたが、市役所の移転がとどめを刺した格好だ。今は飲食店の数も少ない。それにしても「伊藤博文や志賀直哉、司馬遼太郎」と、こんなに時代も立場も違う人を、よく簡単にヨコに並べたものだ。伊藤博文は明治時代、陸軍演習の際などに對山楼(たいざんろう)によく来ていたようだ。志賀直哉は昭和の初期、奈良に住んでいた。司馬遼太郎はお母様が奈良県出身で、司馬自身、東大寺などへの取材で、何度も奈良を訪れている。

市は「『夜を楽しむ』という部分が奈良観光には欠けている」とし、重要なコンテンツと位置づける奈良町の「夜の活性化」のカギは元林院と設定。近畿日本鉄道の山口昌紀会長や画家の絹谷幸二氏ら有識者4人と、仲川げん市長による「元林院懇話会」を立ち上げ今月15日、初会合を開いた。仲川市長は「奈良は外国のガイドブックには『3時間で十分』と書かれ、通過する観光地になっている。『シカと大仏しかない』とされる現状を脱却したい」と意気込むが、効果的な打開策はまだ見えない。

記事は、市長の「外国のガイドブックには『3時間で十分』」を、わざわざリード文と本文に取り上げている。しかし無限にある「外国のガイドブック」の中で、これがどこの国のどのガイドブックのことなのか、突っ込んでいないし、裏も取っていない。

世界で最も広く読まれている外国語による観光ガイドブックは、『lonely planet』(ロンリー・プラネット)だ。私は2011年に発行された12版(最新版より1つ古い)を持っている。そこには真逆のことが書かれている。
 Lonely Planet Japan
 Lonely Planet
 Lonely Planet Publications Pty Ltd


Nara's best feature is its small size: it's quite possible to pack the most worthwhile sight into one full day. Many people visit Nara as a side trip from Kyoto, and comfortable express trains link the cities in about half an hour. Of course, it's preferable to spend two days here if you can.

(拙訳)奈良(市)の最も素晴らしい特徴は、そのサイズが小さいこと。最も価値のある観光地を、まる1日にまとめることが可能である。多くの人々は京都からの追加旅行として奈良を訪ねる。快適な特急列車は約30分で両市を結んでいる。可能であれば奈良に2日間を費やすことが、もちろん望ましい。

3時間どころか、まる1日から2日間の滞在が推奨されているのだ。『lonely planet』に逆らって「3時間で十分」と書いたマトモな「外国のガイドブック」があるとは、とても信じられない(辛口で知られる「trip advisor」のサイトにも出ていない)。しかも仲川市長は「3時間で十分」と書かれ、「通過する観光地になっている」ことが残念だと思い、「現状を脱却したい」と懇話会を立ち上げたのだ。その前段だけを針小棒大にとりあげることに、どんな意義があるというのか。

また《奈良町の「夜の活性化」》という記者の不用意なフレーズも、気になる。元林院町は奈良町の一角(北端)だが、今回の話は、もともと昼間の観光地である「奈良町」全体に関する夜の観光活性化の話ではないはず。「(奈良町の一角にある)元林院の夜の文化の復活による、奈良市の観光活性化」が目的だろう。なお「元林院懇話会」を報じた毎日新聞奈良版(5/16付)は、相当ニュアンスが違う。

《元林院:復興へ「新しい創作を」 奈良で懇話会初開催》《ならまちの一角で、花街の歴史がある元林院(がんりいん)の復興懇話会が15日、奈良市役所で初めて開かれた。南北朝から室町時代にかけて興福寺の別院・元林院があった一角で、江戸時代には絵師が多く住んだ。明治から花街として発展し、芸妓(げいこ)が鉄道で着いたばかりの観光客に芸を見せ、春日大社に神楽を奉納するなど、観光振興に役立っていたことが紹介された》。

《山口昌紀・近鉄会長は「餅飯殿や椿井も含めたエリアで、奈良の町衆が遊びに行って楽しい街に。若い従業員に三味線を教え、猿沢池に舞台を出して歩行者天国にするなど、細かい施策の積み重ねが重要」と話した。元林院町に生家がある画家、絹谷幸二さんは、かつて存在したサロン文化の思い出を語り「食文化でも踊りでも昔の復活だけでは駄目。女性も楽しめる、奈良らしい、新しい創作がいる」と指摘した。仲川げん市長は「鹿と大仏だけ見て帰ってしまう方が多い。滞在時間を延ばし、奈良の魅力に触れていただく仕掛けを考えたい」と話した。次回は7月ごろの開催を予定している【松本博子】》。


理路整然として過不足のない、お手本にしたいような記事である。閑話休題。産経の引用を続ける。

活性化策の第1弾としては、国内外から多くの観光客が訪れる9月の「なら国際映画祭」に合わせ、お座敷体験や日本舞踊上演などを実施する方向で検討している。市の担当者は「奈良の街は、頑張って商売しなくても季節を問わず観光客が訪れるからか、『大仏商法』といわれる特殊な環境。店が開いていないから観光客が宿泊しないのか、客が来ないから閉めるのか分からないが、悪循環になっていることは間違いない」と話している。

駅前8時で真っ暗/泊まる理由ない
バックパックを背負った外国人や、修学旅行の子供たち…。新緑の奈良は、観光客であふれかえっているが、午後8時になれば主要観光地のターミナルである近鉄奈良駅周辺の商店街はシャッターがほとんど閉まって飲食店の明かりも消え、人影はなくなる。奈良市が開いた「懇話会」では、委員からそんな街の現状に厳しい声が上がった。




この記事には、「午後8時を過ぎた近鉄奈良駅前の東向商店街。ほとんどの店のシャッターが閉まり、閑散としている」として写真が出ているが、この写真に写っているのは、ぷかりこ(原田たばこ店)、横田物産本店(土産物店)、福泉堂(名産品店)と銀杏や(喫茶店)。本来、夜遅くに訪ねるような店ではない(なお原田たばこ店の右奥にあるジャンボカラオケ広場は、深夜まで開いている)。しかも異常に人が少ない。「午後8時を過ぎた」とあるが、本当に「午後8時を少し過ぎた」時間帯の写真なのだろうか。


昼間の東向商店街。以下3点の写真は、6/1(日)の午後4時に撮影したもの(6/3追加)

「昔は東向商店街も午後9時半ぐらいまで開いていた。でも、今は午後8時にはシャッターが閉まっとるでしょ」かつての奈良町のにぎわいを知る近畿日本鉄道の山口昌紀会長は懇話会でこう指摘。かつての元林院について「旦那衆の社交場だった」とし、「気の張ったお客さんが来るときは、家に芸妓を呼んだ。花街は料亭だけではなく、市民の生活と密着していた」と振り返った。


近鉄系の「月日亭」(東向商店街)も、午後10時まで開い
ている。午後8時に閉まるのは「うどん亭」(近鉄系)だ

「昔は東向商店街も午後9時半ぐらいまで開いていた。でも、今は午後8時にはシャッターが閉まっとるでしょ」という発言を載せているが、この「昔」とはいつのことか。少なくとも、私が初めて奈良に住み始めた1978年(昭和53年)の東向商店街は、今より早く店を閉めていた。今は東向商店街で、最終電車までハシゴすることが可能である。


産経記事に登場する、シャッターの閉まった店。向かって右はぷかりこ(原田たばこ店)、
となりは横田物産本店(土産物店)。いずれも飲食店ではない(6/1午後4時に撮影)

画家の絹谷幸二氏も「今は働くばかりで、夜が暗いですな」。ほかにも、「しっとり飲める場所がない」「ホテルがないから(奈良には)泊まらないんじゃない。泊まる理由がないからや。あれば業者もホテルをつくる」と、厳しい意見が相次いだ。元林院については「憩いの場として夜の雰囲気を残しながら、住んで楽しい街に仕上げていくことが大事」との指摘も。懇話会は今後、定期的に開催され、奈良の「夜の観光」活性化に向けた対策を検討するという。

絹谷氏は東京を拠点に活動されているので、現状をよくご存じないようだ。「しっとり飲める場所がない」とおっしゃるが、私はいつでも、夜遅くまで「しっとり飲める場所」を紹介させていただきたい(絹谷氏のご親戚の「まんぎょく」は、午後11時までしっとり飲める)。また「今は働くばかり」というくだりも疑問だ。奈良県は、県外就業率(県外の職場で働く比率)が約3割で日本一である。「地元民は、地元で働いていない」のが現状である。


そのとなりは福泉堂(名産品店)と銀杏や(いちょうや=喫茶店)。6/1午後4時に撮影

また「ホテルがないから泊まらないんじゃない。泊まる理由がないからや」とおっしゃるが、この「懇話会」は、その「泊まる理由を作ろう」という懇話会のはず。7月以降に開催される次回以降では、もっと実のある議論をしていただくことを期待している。毎日新聞によれば、元林院に息づいていた「夜の文化」を復活させようという壮大な計画のようだから。言葉尻をとらえられ、つまらぬ茶々を入れさせないためにも…。

この産経記事、ネット上でも物議を醸している。焦点は産経記事の《海外のガイドブックに「奈良は3時間で十分」と書かれる始末》というくだり。K田さんのFacebookによると、

(5/28 K田さん)盟友が「悪意」と評したが、確かに悪意ではないと云えばウソになると感じる。3時間で終わる、との事だが、逆な言い方をすれば、3時間しか見ていない。また、3時間分のコンテンツだけではないのに、それだけしか見ないのは、その人の自由。もっと云うなら、30分で終わる人も居るかも知れないし、例えば大仏だけなら、30分で十分。もっと言うなら、スカイツリーなんかは、5分で十分やないですか??? 上から見下ろすだけなんだから。それに3000円位の入館料を取る。これこそ、ぼったくり。奈良で3時間、見学して、いくらのお金を使うか、この記事書いた人、ちと考えたらいい。店の閉まるのが早いってんなら、さっさと閉まるまでに行けばいい事やし、飲食系は、もっと遅くまでやってる。

またこの元林院プロジェクト、近鉄の偉いさんなんか名が有るけど、この会社、元林院なんかを使ってない。花街なんだけど、ここを使って接待してるのは、私の子供の頃、40年以上前に終わった。奈良の会社…それも名だたる民間企業が接待しないのだから、花街がなくなるのなんて当たり前。近鉄なんかを、有識者に入れるから、総論賛成・各論反対になるのは、当たり前の成り行きだ。これ書いたの、ホントに記者か???


(5/28 K岡さん)「主要駅周辺の飲食店の多くが午後8時に閉店するため」って そうなのでしょうか… ちゃんと数えてるのでしょうか… 食品小売店が大多数入ってませんか… それに、この写真、20時の撮影でしょうか

(5/29 T井さん)心ない記者の心ない記事で、奈良のイメージが音を立てて崩れていく気がします…。

(5/29 K田さん)K岡先輩、飲食店が、例えば仮に8時で閉まったら、多分、激怒されてると思います。我々が、いっぱい飲みに行けないやないですか!?それに第一、8時に閉まってるのは販売店のみで、食事どころは開いてますよ。それに言われる様に、これ私の見るところ9時廻ってる感じです。

(5/30 K田さん)ボロクソ言うんなら、来なけりゃイイんです。極端な言い方なら、こんな見方なら、3時間ももったいないです。ハルカスで高い入場料払って、上から5分で満足いただく方が、価値あります。どんな記者が書いたか、聞いてみたい気もしますが、そいつに言わせれば海外のガイドブックに書いてあった、位の事だと想定され、事実を報道したまで位の開き直りコメが来る事が想定されます。

どちらにせよ、価値を認めた方々に来て頂けて、満足してもらって、その方々のみで、奈良の経済が廻れば、私はそれで十分満足かと感じます。ミスマッチのお客様がいくら来られても、これは不平不満でしか無い訳ですから、こんな方々が来られるが故に、店云々となるのだと思っています。


産経の記事は、奈良のことを知らない記者が言葉の上っ面だけをとらえ、「悪意」に充ち満ちた記事に仕立て上げた、という風にしか読めない。せめて『lonely planet』くらい、チェックしてほしかった。しかも夕刊なので、奈良版ではなく大阪本社版になる。ネットにも転載されたので、全国・全世界に「奈良の悪口」が発信された。《心ない記者の心ない記事で、奈良のイメージが音を立てて崩れていく気がします》という意見には同感だ。悪口を書くことは記者の自由だが、どうせ書くなら「愛のある」悪口を書いていただきたいと切に願う。



この記事のことを紹介した私のFBに、Kenji Maekawaさんが、こんなコメントをしてくださいました(2024.5.31)。

3時間で十分は、朝日、観光経済新聞、週刊東洋経済、産経、読売、日経、All About NEWS、TBS、まぐまぐニュース!などが報じ、抗議に対しても「平成18年の『奈良県外国人観光客実態調査結果報告書』に書かれた内容に基づいていると確認」「報告書では、『ロンリー・プラネット』等には、奈良観光旅行の紹介を滞在3時間程度あれば可能と紹介」とのことでしたが、当の調査をした県庁職員は「当時の新聞報道にその旨の記載があった」「しかしロンリープラネットにそのような記載内容は確認できなかった」と、調査内容が事実でなかったと認めています。

しかし、産経は記事を2021年までネット上に公開し続けたため、3時間が栗栖史博・Saki(2015)『奈良あるある』、博学こだわり倶楽部(2020)『47都道府県 話のネタ大事典』などにも引用されてしまっていますね。

一方、奈良の夜は早いについても、2024年1月23日放送のNHK・ならナビが「午後6時半を回ると多くの店が営業を終えています」、2024年5月30日放送のABCテレビ・newsおかえりが「日中は真っ直ぐに歩けないほど混雑していた駅前の商店街も、夜は一変」と報じています。

https://youtu.be/zUx9BeZFO1w
コメント (19)
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僧職男子とのお寺拝観&座談会「なら僧侶茶論」は、6月14日(土)開催!(2014Topic)

2014年05月30日 | お知らせ
『美坊主図鑑~お寺に行こう、お坊さんを愛でよう』(廣済堂出版)という本が話題になったことがあったが、「なら僧侶茶論(そうりょさろん)」は奈良市観光協会の恒例企画、女性限定の「僧職男子とのお寺拝観&座談会」だ。同協会のHP「新着情報・お知らせ」(PDF)によると、

奈良らしいシチュエーションで、若いお坊さんと気軽にフリートークをお楽しみいただく「なら僧侶茶論」 今回はJR東海のポスターモデルにもなった薬師寺のスター☆村上定運さん 特別公開中の玄奘三蔵院伽藍をご案内いただいたり、特別に鐘つきさせていただいたり♪ さらに今回は国宝東塔大修理に関連したサプライズも用意してくださってるとか…

お寺拝観のあとは、イタリアンの名店「アムリット」でおいし~いドルチェを食べながら 村上さんとのお話♪お申込みはE-Mailで☆先着20名限定です!お早目に!

*語り手… 薬師寺村上定運(むらかみじょううん)氏
*実施日…平成26年6月14日(土)16:00~19:00
*会場… 薬師寺/薬師寺門前AMRIT(座談会場)
*参加費… おひとり3,000円(薬師寺玄奘三蔵院伽藍特別拝観料、軽食代税込)
*定員… 先着20名(女性限定)
*お申込み方法… お名前・居住市町村をご明記のうえEメールにてお申込みください。
narasoryo@narashikanko.or.jp
折り返しご連絡を差し上げます。
※満員になり次第、締め切らせていただきますのでご了承ください。

スペシャルオプションJoun☆プライベートディナーショー@AMRIT
定運さんともっとお話ししたい!イタリアンの名店アムリットのお食事を満喫したい! という貴女に・・・僧侶茶論終了後、定運さんとゆっくりディナーはいかがですか?
オプション料金:おひとり10,000円(ディナー料金+フリードリンク税込)時間:19:30~21:00

主催:公益社団法人奈良市観光協会
お問合せ:Tel0742-27-8866


 美坊主図鑑~お寺に行こう、お坊さんを愛でよう
 日本美坊主愛好会
 廣済堂出版

ウチの職場に勤務する独身のT嬢は、ちょうど定運さんと同じくらいの年齢である。PDFをプリントして「こんな企画、どう?」と薦めると「村上さん、高校の同級生です」! これには驚いた。世間は広いが、奈良は狭い。

同級生の方もそうでない方も、独身の方も既婚者も、女性であればどなたでも参加できる。先着20名の限定企画。ぜひ、お申し込みください!

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羊の除草作戦、ルーツは今井町&王寺鉄道部(JR西日本)です!

2014年05月29日 | 奈良にこだわる
火曜日(5/27)の産経新聞「関西Biz」の見出し《線路脇の除草 ヒツジにお任せ 沿線住民と交流「癒される」》を見て、「おお、今井町の粘り強い取り組みにスポットが当たったか!」と喜び勇んで記事を読んで、ガッカリした。記事が間違っているというのではないが、キーパーソンに取材していないので「心棒のない記事」になっているのだ。長年の産経愛読者としては、とても残念である。まずは記事全文を紹介する。

関西の鉄道各社が線路脇の除草にヒツジを活用するユニークな取り組みで注目を集めている。各社の頭を悩ます草刈り費用の節減などが目的だが、予想を超える熱心な“仕事ぶり”で成果は上々。「ヒツジの姿に癒やされる」と沿線住民からも好評で、思わぬ反響を呼んでいる。

除草にヒツジを派遣しているのは、奈良県山添村の神野山観光協会が管理する「めえめえ牧場」。もともと過疎化で増えた村内の耕作放棄地の再生策として思いついたが、その情報を聞きつけた同県橿原市内の住民が、「線路脇の土地の草刈りに使えるのでは」とJR西日本に提案した。

線路沿いは斜面が多く、草刈り作業がしにくい上、草刈り機の轟(ごう)音(おん)や刈った草を積み込むためのトラックが近隣住民の迷惑になることもある。一方、ヒツジは斜面、平地を問わず活動でき、鳴き声くらいで大きな音は立てない。めえめえ牧場が休耕田を使って調べたところ、2~3頭のヒツジで約1カ月間で約1千平方メートルの雑草を食べ尽くすほどの“能力”があるという。

除草代に頭を悩ませていたJR西も、経費の節減につながると導入を決め、平成24年秋から同県橿原市の桜井線沿いの一角でヒツジの放牧を始めた。次第に放牧面積を広げ、今では牧場から年3回派遣を受けている。排泄(はいせつ)物の臭いが気にならないように、頭数と放牧期間も調整している。

ヒツジが電車の通過音に驚いて線路上に飛び出し、事故を引き起こす危険性などが懸念されたが、ヒツジ3頭は、トラブルもなく“任務”を遂行。JR西は草刈りのために業者に委託していた費用を年間で約40万円カットできた。さらに沿線の子供たちがヒツジを紹介する看板を作成したり、奈良市内の学校から除草を兼ね「教育に取り入れたい」と牧場に問い合わせがあるなど、ヒツジを通じて地域とのコミュニケーションも生まれている。

評判を聞いた近畿日本鉄道も、同牧場と提携して今月からヒツジの放牧を実験的に始めた。大阪線松塚駅(奈良県大和高田市)近くの斜面約500平方メートルで、「キン」と「テツ」と名付けられたヒツジ2頭が活動中で、結果を踏まえて本格導入を検討する方針だ。

24日にはヒツジ2頭の写真を満載した記念入場券の発売(1枚150円)も開始。遠方からもヒツジを見に来る人が多いことから、お土産代わりにしてもらおうと急きょ作製した。めえめえ牧場の職員、竹内弘昭さん(50)は「当初は除草の目的だけだったが、各方面で交流を生むなど予想しない効果を上げていてうれしい」と話している。


この写真は、若林さんのブログから拝借

橿原市今井町の若林稔さんがJR西日本(王寺鉄道部)の来海(きまち)部長(当時)・めえめえ牧場の竹内さんと協議を重ね、苦労の末実現した「羊の除草大作戦」が、いつのまにか近鉄の話にすり替わっている。記事の写真も、近鉄から提供を受けた松塚駅付近(大和高田市)で草を食べる羊の写真である。

羊による除草は、一般社団法人地域づくり支援機構の「地域プランナー・コーディネータ養成塾」の5期生として共に学んでいた若林稔さん(今井町町並み保存会会長)と山添村の藤田和子さんの熱い議論から生まれた。山添村の「めえめえ牧場」では羊を50頭保有し、エサの牧草が不足している。他所で刈ってきて補充しているが、限界がある。しかし今井町にあるJR桜井線の土手には、大量の雑草が生い茂っていた。

今井町の若林宅の裏手には、JR桜井線が走る。土手には雑草が生い茂り、カメムシが大量発生して悩まされていた。若林さんがJR西日本(王寺鉄道部)にお願いしたところ、30人もの作業員が来て草刈りをしてくれた。刈った草はトラックで運び出し、焼却処分されるという。このコストが年間40万円にのぼるそうだ。

こんなムダを何とかできないか、というところから話が始まった。若林さん、牧場の竹内さんとJRの工科長(王寺鉄道部)の3者で協議が始まる。2012年の秋のことで、11月9日には試験放牧にまでこぎつけた。この辺りの経緯は若林さんのブログ「今井町に羊の除草大使がやってきた」に詳しい。私も当ブログ記事「めえめえ除草大作戦!」でエールを送った。

本番に至るまで何度もテストを繰り返し、さまざまなリスクをあぶり出して対策を講じ、契約書まで交わした。いよいよ2013年6月7日から本番が始まった。除草を目的として、線路の土手で羊を放牧するのは、おそらく全国でも初の取り組みだろう。NHK奈良放送局の記者は10回以上も今井町に足を運び、その模様が6月21日にニュースとして放送され、私も画面に食い入った。電車の窓から羊を見て小躍りする子供たちが印象的だった。読売新聞は、6月23日付の朝刊(大阪本社版)で報じた。この辺りのことは若林さんの「羊大使はめえめえ牧場にご帰還」に出ている。

ここまでの最もスリリングな部分が、冒頭の産経新聞の記事にはすっぽ抜けているのである。なお、若林さんのブログに掲載されている羊による除草の記事は、カテゴリ「羊大使」にすべてまとめられている。羊に雑草を食べさせる前に草刈りをし、翌年に柔らかい「良い雑草」が生えたときに羊を呼ぶ、という手間までかけておられるのだ。

産経の記事を読んで疑問に思ったのは、私だけではなかった。「地域プランナー・コーディネータ養成塾」の関係者であるY田さんは、産経記事を紹介したFacebookの「とみきたスクール“ひつじプロジェクト”」(同記事に登場する「奈良市内の学校」)に《今井町の若林会長と山添村の藤田さんが最初の仕掛け人です。産經新聞の記者さん、最初のご苦労人の功績もしっかり伝えて下さい!!》。Y村さんは《Y田さんのおっしゃる通りで、今井町の若林さんが数ヶ月前に、わざわざ北登美ヶ丘の現場までお越しになり、Mさんに体験指導された後、我が家に立ち寄られました。若林さん、その現場も、やっと形になって参りました。有難うございます》と書かれている。

キーパーソンへの取材をすっ飛ばすと、実に珍妙な記事が出来上がるものだ、と自戒を込めて書いておきたい。「キン」と「テツ」のことなど、どうでも良いのだ。それにしても取材を受けた「非キーパーソン」の人々は、若林さんや藤田さん、JRの来海さんのことを記者にアドバイスしてあげなかったのだろうか?

地域おこしには「先走りするバカ、プランナー、コーディネーター」の3者が必要である。とりわけ、リスクを取りながら新たな試みに挑戦する「先走りするバカ」の功績をきちんと評価してあげないと、彼らが浮かばれないし、後に続く者が現れない。
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ローマ法王に三輪そうめんを献上!マル勝高田商店(桜井市)

2014年05月28日 | 奈良にこだわる
桜井市芝の株式会社マル勝田商店・田社長が、ローマ法王に「三輪そうめん」を献上された! 同社のニュースリリースによると、

ローマ法王に謁見し、三輪そうめんを献上しました!
~4月23日、バチカン市国で。株式会社マル勝田商店の商品「三輪の神糸」を献上~

本年4月23日(水)、田勝一(かついち)[株式会社マル勝(かつ)田商店 代表取締役]は、バチカン市国サンピエトロ広場において、ローマ法王(ローマ・カトリック教会 フランシスコ法王)に謁見の上、弊社製品である三輪そうめん「三輪の神(かみ)糸(いと)」を献上いたしました。



奈良新聞(5/28付)

三輪そうめんは奈良時代、大神神社の大神主であった大神朝臣(おおみわのあそん)狭井久佐(さいくさ)の次男穀主(たねぬし)が、神意に沿って生産を始めたとされます。保存食として有効なそうめんは、当時飢餓で苦しむ人々を救ったと伝えられています。

弊社の「三輪の神糸」は、三輪地方に伝わる手延べ三輪そうめんです。「三輪の神糸」は伝統的な三輪そうめんの製法を受け継ぎ、原料にもこだわった商品で、使用する植物油はイタリア直輸入のエキストラバージンオリーブオイルです。イタリアでオリーブは、平和の象徴とされています。


田社長。5/27、「文化教育記者クラブ」(奈良県庁内)で

弊社は2012年、イタリアの7人のシェフ(=ミシュランガイドで星を獲得した料理店のシェフ)の賛同を得て、手延べそうめんを使ったメニューをご考案いただき、レシピ本を制作いたしました。

ミラノ(ロンバルディア州ミラノ県)にある日本人カトリック教会のルチアーノ神父様に、三輪そうめんの長い歴史や、大神神社と深く関わる宗教的な背景、そしてイタリアのオリーブ油を使うという斬新な取り組みに感銘していただき、そのお力添えで、今回の謁見と献上が叶いました。



このような名誉な機会を与えていただけたのは、上記のような背景があったからこそと、感謝申し上げております。法王に献上した「三輪の神糸」は桐箱に入れ、手すき和紙である「吉野紙」を掛け、そこに「奈良市」出身で国際的にも有名な河瀬直美監督に「三輪の神糸」の墨文字を書いていただくなど、徹底的に「奈良」にこだわりました。


向かって右は、記者会見をセットした南都銀行三輪支店長の神谷(じんや)英昭さん

今回、南都銀行三輪支店のご協力により、このニュースを発表させていただくことといたしました。三輪そうめん業界の、そして奈良県の発展のためにも、広く報道していただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

ローマ法王というと、「ローマ法王に米を食べさせた男」である高野誠鮮氏がよく知られている。高野氏はとっさのヒラメキで手紙を書いて承諾を取り、バチカンに持参したが、田社長はイタリアとの長い付き合いのなかでカトリック教会神父の仲介を受け、今回の献上が実現した。

昨日(5/27)は、私も会見に同席させていただいた。テレビ3局を含む約10社の報道機関が勢揃いされていた。奈良新聞(5/28付)によると《田社長は4月23日、バチカン市国のサンピエトロ広場で法王と謁見。そうめんの歴史や食べ方などを記した手紙と一緒に桐箱を手渡した。田社長によると、パスタ好きとされる法王は「日本のパスタだね」と言って笑顔を見せていたという》《田社長は「法王は優しさが身体からにじみ出ていた。これを機会に、世界の人々にそうめんを知ってもらえれば」と願っていた》。



社長によれば、法王は「パスタ・ジャポネーゼ」(日本のパスタ)と喜んでおられたという。また社長は手紙に、日本風のツユに漬けて食べる食べ方を書いたそうだが、側近によると「法王は、たぶんトマトソースで召し上がるのでは」とのこと。イタリアにも「エンゼルヘアー」というそうめんほどの極細パスタがあり、たいていトマトスープの具にして食べるようだ。側近の話は、ここからの連想なのだろう。

中国で発明された「麺」が、ヨーロッパへ渡ってパスタに、日本に渡ってうどんやそうめんになったというのは周知の事実だが、今回の「麺」つながり、また「オリーブ油」つながりは、奇しくもキリスト教と三輪の神道という「神さま」つながりでもある。

今回のそうめん献上は、マル勝田商店のみならず、三輪のそうめん業界全体にとって、とても喜ばしい出来事である。いよいよこれからがそうめんの美味しい季節。皆さんそれぞれの工夫で、「パスタ・ジャポネーゼ」を美味しく召し上がっていただきたい。

田社長、神谷支店長、有難うございました!

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奈良 地理・地名・地図の謎(実業之日本社)の書評が登場!

2014年05月27日 | ブック・レビュー
好評発売中の実業之日本社刊『奈良「地理・地名・地図」の謎』の書評が、地域創造のための専門情報誌「日経グローカル No.244」(2014.5.19)の「Book Review」欄に掲載されました。

「なぜ平城京には大極殿の跡がふたつもある?」「奈良公園の鹿はどのように数えている!?」――。平城宮跡や東大寺、唐招提寺など数々の世界遺産で知られる古都・奈良。古代から近代に至るまで様々な歴史の舞台となり、重層的な歴史が町そのものを織りなしてきた。

魅力に触れようと、国内外から多くの観光客が訪れるが、著名な社寺などを足早に巡ることが多く、そこに秘められた歴史のエピソードに触れる機会は少ない。本書は奈良の地理・地名・地図を通して見えるそんな78の「謎」を紹介。初めて訪れる人も、リピーターも興味をそそられる観光ガイドになっている。


 奈良「地理・地名・地図」の謎 (じっぴコンパクト新書)
 奈良まほろばソムリエの会 監修
 実業之日本社

監修した奈良まほろばソムリエの会(奈良市)はご当地検定「奈良まほろばソムリエ検定」の最上級・ソムリエ資格取得者を中心に2011年に発足。13年にNPO法人化した。ボランティアガイドのほか歴史セミナー、史跡ツアーなどを手がける。本書は同会の地域活動の成果の一環。受け身が目立つといわれる奈良の観光業界にとり、カンフル剤の役割も期待されそうだ。(寿)

短い文章で端的に、本書の「効能」や、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の地域貢献活動を紹介して下さっている。これは有り難いことだ。本書は初版の1万部を売り切り、再版の3千部が現在発売中で、これも売れ行き好調とのこと。まだお読みでない皆さん、ぜひ、ご一読を!
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