北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

今年の記念講演は、あの「樋口判決」の樋口英明元裁判長

2019-03-25 | 志賀原発廃炉訴訟
   
今年の「志賀原発を廃炉に!訴訟原告団」総会の記念講演は樋口英明元福井地裁裁判長。
福島第一原発の事故後、全国各地で原発訴訟が相次いで提訴される中、樋口氏は再稼働を控えた大飯3・4号機に対して運転差止の判決を下した。
3.11後では初の差止判決というインパクトもさることながら、基準地震動を超える地震は「来ない」という関電の主張には根拠がないということを暴き、「差止め」という結論を導いた判決文の論理構成は実に明快で、さらに原発問題の核心を衝く鋭い視点が随所に盛り込まれ、原告はもちろんのこと、長年脱原発運動に携わってきた全国の市民からも「まさに我が意を得たり」との声が上がった。
「高校生が読んでもわかるような判決にしようと考えて書きました」(樋口氏の言葉)という「樋口判決」は、一見難解で専門家の手の内にあると思われがちな原発訴訟を市民の側に引き戻し、「脱原発運動のバイブル」とも評されている。

判決文の中から一部を引用すると・・・
〇原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである。
〇原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。本件訴訟においては、本件原発において、かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。
〇コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

樋口判決は昨年7月、名古屋高裁金沢支部で取り消され、住民側に逆転敗訴が言い渡された。
樋口判決が指摘した点に具体的に反論し、原発は実はこんなに安全だったと納得させる内容なら「歓迎」するが、「新規制基準に従っているから心配ないというもので、全く中身がなく、不安が募るばかり」(樋口氏)であったことから、昨年8月に退官した後、原発差止訴訟について積極的に発言している。

志賀訴訟はいま、原子力規制委員会の審査を見守るとする加島滋人裁判長の下、判決の見通しが不透明となっている。
まさに名古屋高裁金沢支部同様、司法が規制委に追随する姿が顕著となっている。
これに対して今年の総会では新たな取り組みも含めた活動方針を提起する予定だが、その大前提となる「原発訴訟と裁判官の責任」について、原告・サポーター、さらには多くの市民の皆さんとともに学習する場を設けたい。

2カ月以上先の予定となるが、ぜひスケジュール表に書き込んでいただきたい。

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