北野進の活動日記

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「評価書の結論を尊重せよ」県へ申し入れ

2015-12-25 | 志賀原発

さよなら志賀原発ネットワークとして志賀原発の敷地内断層問題で県へ申し入れ。
有識者会合はまもなく評価書をまとめるが、1号機原子炉建屋の下を走るS-1、2号機のタービン建屋の下を走るS-2、S-6について、この間の有識者会合の議論、そしてピア・レビュー(査読会)を経て、活断層の可能性は否定できないという見解で専門家の見解は一致している。S-1の一部が動いたメカニズムやS-1とS-2、S-6の関係については様々な見解があり、複数の見解が併記されると思われるが、それによって結論が覆ることはない。

今後、この評価書が原子力規制委員会に報告され、規制委員会は北陸電力から提出されている2号機の新規制基準適合性審査(再稼働審査)を審議する中で、この評価書を「重要な知見」として扱っていく。
新規制基準が合理的という前提に立っても、活断層の上に原発の重要構造物を設置してはならないとしており、1号機は再稼働不可=廃炉、2号機も現状では再稼働できず、仮に再稼働させるとすれば原子炉補器冷却系の配管の付け替えという大規模な工事が求められる(技術的、経営的に可能かどうかは私はわからない)。
タービン建屋の下であろうと活断層があるなんてとんでもない。
もちろん活断層問題以外にも様々な過酷事故の要因がある。使用済み核燃料問題も解決していない。CO2対策に原発など、国際的には恥ずかしくて言えることではない。電力需給も問題ない。そもそも発電のためになぜ何万人もの周辺住民が故郷を追われるリスクを負わなければならないのか。
1、2号機とも廃炉にすべきというのが私たちの立場だ。

これに対して「有識者会合の委員は自分の見解を予断をもって述べているだけ、そんな無責任な学者の議論で原発の廃炉が決まっていいのか」というのが谷本知事の立場。
本来なら知事に直接申し入れをしなければならないところだが残念ながら昨日(12月24日)の申し入れの対応は原子力安全対策室長ら。

今回の申し入れでわかったのは、①知事の見解が決して知事の思い付きの放言ではないということ。
原子力安全対策室としても有識者会合の議論について大きな不信感をもっており、評価書の結論は「活断層の可能性は否定できず」でも信頼性の理由付けが不明で信頼性の低いものになるとみている。
②今後の原子力規制委員会の議論では「重要な知見」として扱われるが、それには法的拘束力はなく「一つの知見に過ぎない」と捉えていること。
③したがって原子力規制委員会の議論で評価書の結論を否定する、あるいは一つの知見なので採用しないということも可能だと考えてること。

しかし、有識者会議で座長を務めた石渡明氏は原子力規制委員会の5人の委員の中の一人である。そして他の4人の委員は田中俊一委員長を含め地震、地質、活断層の専門家はいない。
「重要な知見」は「重要な知見」だ。
その道の専門家が議論を重ねた上での結論をどうやって覆すのか。
政治力で覆せると考えているとしたら反知性主義の暴挙だ。

仮に北陸電力がやれることがあるとすれば、次々と評価書に対する反論を提出したり、新たな再調査の結果やらを提出に結論を先延ばしすることくらいだ。
活断層の上の核燃料をそのままにしておいていいのか。
そして、そんな蛇の生殺しのような対応が果たして志賀町のためになるのか。廃炉作業に向かっていった方がよほど地元経済にもプラスとなる。

以下、申入書である。
議論は残念ながら平行線だが、志賀町の皆さんには特に読んでいただきたい。

2015年12月24日
申 入 書(案)
石川県知事 谷本正憲 様
さよなら!志賀原発ネットワーク
共同代表  岩淵 正明
南  高広
中垣 たか子

 今年5月、原子力規制委員会の有識者による評価会合は、北陸電力志賀原発の敷地内断層に関して「S-1,S-2,S-6断層は13~12万年前以降の活動が否定できない」との見解を全員一致で出しました。その後「評価書」(案)に検討が加えられ、さらに11月20日にはピア・レビュー(査読会)が行なわれましたが、結局、「敷地内活断層が活動する可能性は否定できない」とする評価書の根幹部分は認定されました。したがって、『志賀原発は敷地内の重要施設の直下に将来活動する可能性のある断層等がある』という評価書が原子力規制委員会に提出される見込みとなっています。
 原子力規制委員会が定めた新規制基準の規則の解釈および審査ガイド(2013年6月19日規制委員会決定)においては、「活動性が否定できない断層は、活断層とみなして耐震設計上考慮せよ」とされています。これは、過去に活断層の見逃しや過小評価があったことの反省を踏まえ、さらに地震や断層に関する科学には限界があることを認めた上で、原発が抱える潜在的リスクの大きさを考慮し「疑いのあるものは活断層とみなす」という、あくまでも安全側にたって判断するというものです。
 私たちは、何よりも安全を最優先で考えるべき原子力規制として、「疑わしきはクロ」という判断基準は当然であると考えています。また、評価会合委員は、全員が活断層に関する研究を担っている日本活断層学会等の4学会の推薦を受け、なおかつ過去の安全審査では個別の原発の活断層評価等には関わっていないメンバーであり、予断を持たずに科学的・客観的審査をすすめるための妥当な人選である判断しています。
 ところが北陸電力は、3年以上かかっても活断層でないことを示す証拠を提示することができなかったにもかかわらず、「評価書には法的拘束力はない」として、いまだに志賀原発を再稼働しようとしています。
 敷地内だけでなく志賀原発の周辺にはいくつも活断層があります。北電が2013年12月になってようやく活断層と認定した福浦断層、3分割して同時に動くことはないと評価していたものが2007年3月の能登半島地震で一体となって動き、原発が想定を超える強い揺れに見舞われ北電の評価が誤りだったことが判明した笹波沖断層、金沢地方裁判所による2号機差止め判決の根拠となった邑知潟断層帯、あるいは北電の評価よりも長い可能性が指摘されている富来川南岸断層など多くの活断層に囲まれていて、志賀原発は耐震安全性の観点から、実に不適当な場所に立地していることが明らかです。 

 2011年3月11日以降、志賀原発は2基とも停止していても電力需給に何ら問題はなく、経営面でも3年連続の黒字が続いています。断層問題の結論の先延ばしを図り、いつまでも原発再稼働に固執することに何ら合理的な根拠はありません。断層の活動性に関する調査や審議を、まだこれからも延々と続け、さらなる耐震補強工事を進めるなら、その間、活断層上に使用済み核燃料が貯蔵されている等の危険性は放置され、膨大な調査費や工事費はいずれ消費者が負担させられることになります。

 このような状況にもかかわらず、県が県民の安全を守る立場よりも、むしろ北陸電力の側に立って、原子力規制委員会の有識者会合の結論に異議を唱えようとしていることは、どうしても納得できません。
 とくに、県知事が「学者さんが自分の見解を述べているだけ」、「学者は責任を負う立場にないし、どういう根拠で主張しているかもわからない」、「予断を持たずに北陸電力からもヒアリングをし、きちんとした方向性を出してほしい」(11月21日付け読売新聞および北國新聞記事より)など、評価会合において繰り返された科学的な議論の経緯を無視し、県民の安全よりも北電の経営を重視し、志賀原発の再稼働を促すような発言をしていることは、県民として、到底、許すことはできません。
 さらに知事は11月25日の記者会見において「活動性を否定する北電が裁判に持ち込む可能性があるとの見方も示し、“裁判で規制委が負ければ、面目丸つぶれだ。北電の主張に根拠がないなら、きちっと説明しないといけない、説得力のある説明が必要だ”と指摘した。」(翌26日の北國新聞より)とも報じられています。
 しかし北陸電力は、2013年12月に「敷地内シームに関する追加調査 最終報告書」と提出した後も、さらに追加の調査を実施して、それでも“活断層ではないという主張”を裏付ける科学的な証拠を示すことはできず、何回も開催されたヒアリングでも説得力のある説明ができなかったのです。その結果が「評価書」(案)にまとめられたのであり、「評価書」(案)作成には携わらなかった専門家によるピア・レビューにおいても、その結論が認められたのですから、知事のコメントは的外れと言わざるを得ません。

 さらに、11月に実施された原子力防災訓練では、30km圏に限っても、住民および防災業務従事者が確実に避難できることを確認するような防災訓練はできていないことが明らかです。ましてや観光客の避難などまったく考慮されていません。高齢化が進む能登地区の実態に即して防災対策をたてることだけでなく、新幹線開通により国内外からの観光客が大幅に増加している現状をみれば、観光客をはじめとする訪問者の防災および避難対策も必要になっています。
 行政には、防災対策の観点からもより安全側に立って判断することが求められており、何よりも確実な原子力防災対策は、活断層の上にある原発をもう稼働させないことです。

 そこで、私たちは、昨年5月にもほぼ同様の趣旨の申入れをしていますが、ピア・レビューの結果および先月実施された原子力防災訓練の結果を踏まえ、あらためて下記の項目を申入れます。



1.県は、原子力規制委員会の有識者会合による志賀原発敷地内断層に関する「評価書」の結論を尊重すること。 

2.北陸電力に対して、これ以上、調査に時間を費やすようなことはせずに、原発に依存しない電力会社へ経営方針の転換を求め、1号機、2号機ともに廃炉に向けた検討を速やかに開始するよう申入れること。

3.原発に頼らない新たな地域振興策など、廃炉に向けた環境整備に着手し、県として必要な措置の検討作業を始めるとともに、必要に応じ国および志賀町などとも協議すること。

4.原子力環境安全管理協議会とその下に設置されている原子力安全専門委員会については、過去に志賀原発の安全審査や耐震性バックチェックなどに関わった委員を交代させること。また、「地域住民の安全を確保し、生活環境の保全を図る」という原子力環境安全管理協議会の設  置目的を再確認し、協議会および専門委員会の協議の内容が県民の安全確保と環境保全に資するものとなっているか、抜本的な見直しと検討を行なうこと。

5.県の原子力防災計画に、国の内外からの観光客や訪問者の防災および避難対策を盛り込むこと。また、11月に実施した防災訓練の結果、明らかになった検討すべき課題を踏まえて、原子力防災計画の見直しを行なうこと。

  


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