北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

原子力防災訓練監視行動

2018-11-11 | 志賀原発


2012年度から毎年実施されている住民参加の原子力防災訓練(3.11以前は隔年実施)、今年度の訓練が今朝7時からおこなわれた。
社民党県連合と社民党自治体議員団は2018年石川県原子力防災訓練監視・調査団を組織し、各訓練会場で監視行動を実施した。
私も自治体議員団の一員として参加し、オフサイトセンターを担当した。



今回は朝7時、震度6強の地震が発生したという想定。
私は5時40分頃に自宅を出て志賀町に向かう。
7時過ぎにオフサイトセンターンに到着。
窓のないオフサイトセンター内はご覧の通り暗いままだ。
かつての訓練は事故発生前に関係者が原子力センターに集まって事故を待ち構えるというものだったが、いまは地震発生を受けて関係者が参集する。
7時8分、オフサイトセンターの近くに住む原子力規制庁の防災専門官が駆け付け、電灯にスイッチを入れるとこから動きが始まる。



県庁職員や志賀町職員、県警、自衛隊、海上保安庁など防災業務従事者が徐々に参集し、各班参集者の名前の確認からはじまり、パソコンも立ち上げられていく。



かつては事前に配布されている手元の原稿を読み合う中で進行する訓練で、シナリオを暗記している小学生の学芸会にも及ばない訓練だったが、ここも近年の訓練は様変わりである。
オフサイトセンターに参集する防災業務従事者には、参集時間だけは事前に伝えてあるが、これから先の展開にはほとんど原稿はない。
3.11前から私たちがずっと求めてきたブラインド訓練が実施されている。
発電所の状況、モニタリングの数値、風向き含めた天候などが伝えられ、各班それぞれ対応を協議し、行動に移していく。
この訓練含め年に4回程度関係者を集めて研修を実施しており、原子力防災の基本的な流れは皆さん頭の中に入っているとのこと。
この場で「放射線って何?」という人はもちろんいない。



地震によって送電線が倒壊し、外部電源が喪失。
「施設敷地緊急事態」を受けての現地事故連絡会議が開催され(8:03)、PAZ(5キロ圏内)の要配慮者への避難指示発令。
さらに非常用発電機全機停止で「全面緊急事態」となり(9:05)、PAZ 圏内の一般住民へ避難指示。
原子力災害合同対策協議会は原稿通りの進行だが、予定された人以外の発言もありという雰囲気。



原子力災害合同対策協議会は内閣府や30キロ圏の自治体の首長(各自治体災害対策本部長)も参加するテレビ会議。
ときどきつながらなかったり、音声が入らなかったりなどのトラブルがあるが、今回は無事進行。
内閣府との間の音声だけがやや音質が悪かった。



会議の様子は各班にあるモニターでも映し出され、リアルタイムで情報が共有されていく。



9:40 ここで時間は48時間スキップする。
放射能が漏れ、志賀町、輪島市のモニタポストでOIL2の基準を超える値が確認されたことになる。
そして10:00、安倍晋三原子力災害対策本部長名でUPZ(30キロ圏)の一部(南の風風速4mを想定)に一時移転の指示がでる。

さて、ここまでいかにも順調な訓練だが、それはオフサイトセンターでモノゴトが完結しているから。
PAZ圏内のよう配慮者は291人でうち在宅は191人。一般住民は3,579人である。ただちに避難することになるが、その先は未知の世界だ。

さらにUPZ圏内の一部避難指示となるが、48時間スキップって何?と思われるだろう。
放射能が漏れだして、地面に付着し、そこから24時間OIL2の基準値20μSv/hを超えた段階での避難指示である。
しかも避難はそれから1週間以内程度でおこなうという基準である
時間的な余裕がある・・・と思ってはいけない。
多少の被ばくは受忍してもらう(受忍させる)避難計画なのである。
果たしてそれまでじっとしている住民がどれだけいるのか。
さらにOIL1という「数時間以内に住民を避難、あるいは屋内退避させる」基準(500μSv/h)もある。
このOIL1を想定した訓練はやらなくてもいいのかという疑問も含め、とてもこれで安心、安心という話ではないのである。



さて、オフサイトセンターの訓練はここで峠を越えるので、私は能登空港に設けられたスクリーニングポイントに向かう。



今回の避難は奥能登方面で、ルートは3本設定されており、それぞれにスクリーニングポイントが設けられている。



汚染が確認された車両は除染を行う。





汚染が確認された車両の中から代表して1名をスクリーニングし、被ばくが確認されれば、乗車している人全員をスクリーニングすることになる。



能登空港のスクリーニング施設は輪島市空港交流センター(航空学園の体育館)。
かつては能登空港の駐車場でスクりーニングを行っていた。
今日のような好天の日中ならいいが、雨天、荒天、酷暑、吹雪き、いずれの条件でも屋外はアウトである。
今回は他の2ルートも学校の体育館で実施している(航空学園含め、学校施設でスクーニングを実施することも問題だが)。



谷本知事も各訓練会場を視察。



スクリーニングで被ばくが確認され、簡易除染しても基準値を下回らない住民は、県立中央病院へ搬送する。
まず救急車で体育館から能登空港滑走路で待機する防災ヘリまで搬送。
救急車の中もビニールシート隔離される。



ヘリの操縦士?も防護服。
金沢へ向かうヘリを見送り、私の今回の監視行動は終了である。
避難やスクリーニングをめぐっても課題、問題点は山積であるが、そこは後日に回したい。

さて、今回の訓練の参加者は住民約1,000人を含め、約2,200人とのこと。
秋の行楽シーズン、各地では様々な行事もある中、本当にご苦労様である。
訓練を準備された皆さんも本当にお疲れさまである。
そこは関係者の皆さんの努力を認めつつも、しかし、である。
そもそもなぜこんな訓練をやらなければいけないのか、やはり関係する皆さん全員に考えていただきたい。
なぜ一企業の、一つの発電手段でしかない原発、動かなくても生活や経済活動に何ら支障のない原発のために多くの住民が命や暮らしを脅かされなければならないのか。
あらためて「常識」に立ち返ることを訴えたい。
以下、本日の訓練に対する調査団の抗議声明である。
少し長いが、最後の段落だけでも是非ご一読いただきたい。

抗議声明


 本日午前7時から志賀原発の事故を想定した石川県原子力防災訓練が実施された。東京電力福島第一原発事故後7回目となる防災訓練である。この間、私たちは再稼働前提の訓練に抗議すると同時に、福島原発事故の教訓を踏まえるなら最善の原子力防災は原発廃炉であると訴えてきた。しかし、石川県はじめ関係自治体は今回も志賀原発の再稼働を前提とした非現実的で実効性のない訓練を実施した。強く抗議し、以下、問題点を指摘する。

1.停止中の原発の危険性を直視せよ
(1)再稼働路線容認の防災訓練
 志賀原発直下の断層について有識者会合は全会一致で活動層との評価書をまとめたが、北陸電力は志賀再稼働の方針を変えず、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に臨んでいる。しかし、ここでも北陸電力の見解は次々と否定され、北電社内でも「本当に動くのか」との声が上がるあり様である。こうした中、県が繰り返し再稼働前提の訓練を繰り返すことは、北電の再稼働路線を容認し、あるいは期待しているかのようなメッセージを県民に送ることになる。「敷地内断層問題の決着が最優先」という谷本知事の発言とも矛盾している。

(2)向き合うべきは停止中の原発の危険性
 志賀原発は来年度も稼働しないことが確定している。しかし、停止中とはいえ原発には今なお使用済核燃料や新燃料が存在している。そしてその直下には活断層が存在する。私たちは地震などの自然災害はもちろん、武装集団によるテロ攻撃や大規模停電など様々な原因による過酷事故の危険にさらされ続けている。実際、1昨年は雨水大量流入事故が発生し、原子力規制委員会の田中俊一委員長(当時)から冷却機能喪失で「重大事故につながる危険性があった」という深刻な指摘を受けている。防災上の最優先課題は核燃料の一日も早い撤去であり、撤去までの間は停止中の原発の過酷事故を想定した訓練を実施すべきである。

(3)リアリティのない訓練で緊張感が低下
 停止中の原発の危険性に向き合わない訓練は、周辺住民に「停止しているからとりあえず安心」との誤解を生み、なにより防災訓練参加者の緊張感の低下を招いている。今年2月の原子力規制委員会との訓練では北陸電力社内の情報共有システムがダウンし発電所内の情報が伝わらない、先般は敷地内のモニタリングポストが浸水するなど、過酷事故に対応できない事態が続発している。

2.実効性のない訓練の繰り返し
(1)新たな安全神話をつくる「スムーズな避難」
原子力防災における避難行動は、被ばくの恐怖に直面する中、時間との勝負となる。しかし、あらかじめ決められたごく一部の住民が参加する避難訓練では、避難指示の伝達漏れはなく、避難バスも事前に配車され、自家用車による避難の渋滞もなく、スクリーニングポイントでの順番待ちもない。課題として残るヨウ素剤の配布や服用指示の訓練は今回も実施されなかった。訓練全体に手抜き感が漂うが、その中で毎回確実に実現する「スムーズな避難」は、新たな安全神話をつくるものである。

(2)どうする?半島先端への避難
 今回の避難訓練は輪島市や能登町への避難に重点が置かれているが、半島先端方向への避難は当初から様々な課題が指摘されている。避難車両やスクリーニングポイントでのマンパワーと資機材は確保できるのか。地震など複合災害の場合の避難路は確保できるのか。季節によっては多くの観光客や帰省客がいる。里山海道が寸断されれば混乱必死である。要支援者の避難先での生活や医療面での支援も含め課題は山積、不安は尽きない。加えて、風向きや放射能の放出量によっては半島先端までもが汚染区域となることが予想される中、果たして計画通り半島先端方向へ住民は避難するのかという問題も残されたままである。

(3)課題から逃げまくる非現実的訓練
 PAZ圏内、UPZ圏内それぞれの住民へのヨウ素剤の配布、服用指示は重要な課題であるが、いまだ必要な住民への配布が可能かどうか検証はできていない。観光客など一時滞在者、特に近年増加する外国人旅行者への避難情報の伝達、避難、ヨウ素剤の配布等も懸念される。SPEEDIの使用を中止した中、緊急時モニタリングを迅速、的確に実施し、UPZ圏内の住民の避難行動につなげることができるのか、実践的な訓練も求められている。防災業務従事者の被ばく対策や交代要員の確保も重要な課題である。加えて先に述べたように半島先端方向固有の課題もある。課題を列挙するときりがない。この間の訓練同様、今回もやりやすい項目をつまみ食いするだけで課題の検証から逃げた訓練だと言わざるをえない。

3.繰り返して指摘する「今こそ常識に立ち返れ」
一 企業の、電気を生み出す一手段に過ぎない志賀原発。7年8カ月停止状態が続いても停電にもならず経済活動にも支障がでない志賀原発。そして今後、稼働する可能性はほとんどないと思われる志賀原発のために今も多くの県民が命や暮らしを脅かされ、財産を奪われ、ふるさとを追われる危険に晒され続けている。このような異常な事態を放置し、さらには覆い隠すかのように防災訓練が繰り返されている。
私たちは毎回、すべての原子力防災関係者に常識に立ち返るよう訴え続けてきた。避難させるべきは住民ではなく核燃料である。北陸電力は人災である原子力災害を防止するため、直ちに志賀原発の廃炉を決定せよ。活断層上にある核燃料を速やかに撤去せよ。

  2018年11月11日
社会民主党石川県連合、自治体議員団 2018年石川県原子力防災訓練監視・調査団


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