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ブログ仙岩

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大石邦子の「新しい年に」

2016-01-27 10:02:57 | エッセイ
新年になり、何度考えても行きつく処は、病気せず穏やかな日々が送れ、人に迷惑をかけないことに尽きる。

五人兄弟で、兄と妹が亡くなり、三つ違いの弟が頼みの綱。そんな弟が仙台からIHコンロを持参して、向かい合い弟が取り分けてくれるアツアツのすき焼きを食べた。家でのすき焼きは何年ぶりだろう。元気でいてよね。

私たち子どもの頃は、テーブルを二つ並べての食事でだった。八人家族というのも珍しくない時代だった。それが何時しかこの家に残るのは一人となった。

みんな掲額の主となって見守ってくれている。祖父母、父母、兄妹の優しい眼差し。その生きる姿から愛を、人生を教えられてきた。

生きていれば、傷つくことも、躓くこともあり、祖父の代の倒産、母の病気、病弱な子供たち、私の事故、それでも家族は耐えてきた。

人は生きられるように創られている。朝の来ない夜はない。春の来ない冬はない。自分を振り返り、そう思えるようになるまでの自分自身の心との戦いこそが、人生で最も辛いものだったように思う。

しかし、人は越えられるのだ。人と比べず、人を恨まず、自分の道を歩いてゆけば、心がずっと軽くなる。この年になって、私はそのことがよく分かった。・・・

100才以上生きた方は、くよくよしないと簡単にいうが、60過ぎると3年に一度、70過ぎると毎年辛い時が来る。80過ぎると途端に友が減る。これから先は未経験の人生、先輩の行動お話に耳を傾け、風雪に耐える春一番の花のように・・・。