2016年6月16日(木)14時6分
オンタリオ州マウントホープ カナディアン・ウォープレーン・ヘリテージ停留所
カナダ軍用機歴史博物館を後にして、博物館の前の道路にあるバス停からバスに乗って移動します。
オンタリオ州の旭川電気軌道(社名的な意味で)こと、ハミルトン・ストリート・レイルウェイ(HSR)の#20系統 Aライン急行の北行に乗ります。車両はNFI D40LF (#1001)です。
このバスでハミルトン市街地を抜けて北へ走り、オンタリオ湖湖岸に近いGUISE at JOHNバス停で下車します。この間50分くらい。
同日14時57分
オンタリオ州ハミルトン HMCSハイダ国定史跡
バス停を降りてすぐ、今日の2箇所目の目的地へ辿り着きました。「HMCSハイダ国定史跡」です。ここは、カナダ海軍の駆逐艦「HMCSハイダ」をまるごと保存してある博物館船です。
HMCSハイダが保存されているのは、オンタリオ湖の岸壁です。つまり湖なわけですな。保存に際して、2隻のタグボートによって大西洋からはるばる運河を遡ってここまで曳航されてきました。駆逐艦も悠々と通行できる広い運河があるのがカナダ/アメリカのスケールのデカさを感じるわけです。
ちなみにアメリカは、第二次世界大戦時にアメリカ海軍の練習用空母をミシガン湖に浮かべて、艦載機の発艦着艦訓練をしていました。内陸のミシガン湖ならドイツのUボートは存在しないので、安全に訓練ができるというわけです。あとは、外洋と比べて波風が立たないのも新米パイロットには丁度いいというのもあったみたいです。
艦首旗です。カナダ海軍の艦首旗は時代によって何度か変わっているんですが、この旗は1957~1965年に使われていたものです。これはHMCSハイダの晩年の頃のことです。
さて、HMCSハイダの簡単な経歴をご紹介。
HMCSハイダは、1943年8月30日に就役したカナダ海軍のトライバル級駆逐艦の1隻です。トライバル級は、イギリス海軍が1934~1939年にかけて16隻建造した駆逐艦です。同時期外国で出現していた大型重武装の駆逐艦(例えば日本海軍の特型駆逐艦など)に刺激されて設計されたため在来型よりも大型重武装となっています。
イギリス海軍向け16隻の建造は1939年で完了しましたが、その後カナダ海軍向け8隻、オーストラリア海軍向け3隻が続けて建造されました。HMCSハイダもそのうちの1隻です。
死闘を繰り広げる第二次世界大戦中に就役したHMCSハイダは、ノルマンディー上陸作戦や北方での護衛任務などに従事しつつも大戦を生き延びました。この間、HMCSハイダはドイツのZ級駆逐艦、Uボート、駆潜艇などを撃沈。カナダ海軍で史上最も戦果を上げた軍艦として今も記録されています。
第二次世界大戦後は予備役と再就役を繰り返しましたが、1950年に勃発した朝鮮戦争により1952年に本格的に前線へ復帰しました。朝鮮戦争では沿岸を走る鉄道施設や列車を砲撃していました。なおこの朝鮮戦争出兵の際には佐世保港を中継地点にしていたようです。
朝鮮戦争後はNATOの共同任務に就くことが多かったです。1960年になると老朽化が深刻になり、その後数年はドックで修理を受ける日々を過ごしました。
1963年4月にHMCSハイダは五大湖で訓練・巡航任務を務めた後、同年4月30日に退役しました。想像ですが、老朽化の進みが深刻でもう以前のような外洋航行はできない状態だったかもしれませんが、それでも名誉あるカナダ海軍駆逐艦として最後の花道を飾らせたかったのだと思います。
というところが、就役から退役までのざっとした流れです。
HMCSハイダの見どころは、なんといっても現存する唯一のトライバル級駆逐艦というところ。下手すりゃイギリス海軍系の駆逐艦でも唯一の現存例かもしれません。イギリス、あんなに海軍でブイブイいわせてたのに第二次世界大戦後は退役した軍艦をほぼ全てスクラップにしてしまったので・・・。あれはお金がなかったのかしらん。
あとは、第二次世界大戦を戦った駆逐艦というくくりで見ても結構貴重です。隣のアメリカにはフレッチャー級が数隻保存されていますが、それ以外では確か残っていないはずです。
まあHMCSハイダは朝鮮戦争前後にあちこち近代化改修されていますし、今の保存形態も晩年仕様ですから、第二次世界大戦時の仕様からは遠いですが、この細く引き締まった船体は就役時からのものですから、雰囲気は十分味わえると思います。
艦橋とかマストとか。
煙突。駆逐艦らしくて素晴らしい。
後部構造物。船体と構造物で色が違うのね~。
艦尾の方は柵で遮られていて行くことができませんでした。
地面に置かれている謎の対空機銃。ボフォース40mmでしょうかねえ?よく分かりません。
後ろ。なんだかでかい釘を重しにして固定しています。
機雷は嫌い、という渾身のギャグでおなじみの機雷。これもただ置いてあるだけなので詳細不明です。飛び出ている触覚に触ったら爆発するやつかなあ。
ちなみに機雷の右の緑の筒はゴミ箱です。カナダの街中や観光地にはこういうゴミ箱が割りとあるんですのよ。極東の島国、ゴミのポイ捨てをどうこう言うならゴミ箱でも置いて管理でもしたらどうですかねえ。民度は悪くないんだからゴミ箱置けばみんなそこに捨ててくれると思うヨ。
21インチMk.IX魚雷です。これだけ説明書きが立っていたので分かりました。
これはHMCSハイダが搭載していた魚雷と同種の訓練弾です。
機関部ですねえ。
空気室ですかねえ。
弾頭ですねえ。訓練弾では発射後にここに空気が入るようになっていて、次第に魚雷が海面に浮いてくるようになっていたのでした。後で魚雷を回収するためですね。魚雷はお高いので訓練では使い捨てできないんです。
というところで今日はここまで。次回から乗船します。
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