One Never Knows/Modern Jazz Quartet
(Atlantic 1284)
(Atlantic 1284)
ジャズボーカル界では音楽とは密接な関係があり女優さんがシンガー、そして映画で唄われる歌曲がその映画を代表する音楽となっている場合が多く、多くのスタンダードを生んだといえます。一方、映画音楽のためにかかれた、モダンジャズインストアルバムはさほど多くはないですよね。ジャズファンにとっては、マイルスの「死刑台のエレベーター」、本日アップのMJQの「たそがれのベニス」、JMの「危険な関係のブルース」、ロリンズの「アルフィー」の4枚は特に知られたものでありましょう。年代的には、このベニスが最も古いものとおもわれます。その次に登場したマイルス盤が極めて緊張度の高いサスペンス映画にふさわしい傑作で、ジャズファンにも取っ付きやすいアルバムなのに対し、このべニスはジョン・ルイスのバロック音楽への傾倒から生まれたものでジャズファンにとっては、少々取っ付きが悪いアルバムのように思えます。全てがスコア化された感じで、アドリブ重視のモダンジャズの本質とややかけ離れた仕上がりになっているところに起因しているのかも知れません。
アトランティクのMJQは「フォンテッサ」で人気を得たクラシックよりの演奏が特徴的であり、このアルバムもその延長上にあり、美しく叙情的な仕上がりが特徴です。メンバーはルイス、ジャクソン、ヒースそしてK.クラークにかわって参加したコニー・ケイのカルテットです。有名曲、"Golden Striker"をA面冒頭に配し、"One Never Knows"の抒情性豊かな演奏もいいですが、B-1の"Cortege:行列"のドラム、ベースの小さな音量からルイス、ジャクソンのスウィンギーなソロが展開してくるくだりはこのグループの真骨調ともいえる演奏ですね。アルバム中最も好きなトラックですね。
所有盤はアトランティックの黒ラベル、シルバーロゴのモノラルオリジナル盤です。静かな曲が多い中、コニーケイのブラシワークやヒースのWalking Bassが極めてビビッドに録られているのがわかります。MJQを代表する名盤の一枚ですが、ジャズと映画との融合を果たした最初のモダンジャズアルバムと言っても良いと思います。絵画的価値の高いJ.M.W.Turnerの"View Of The Grand Canal"を使ったカバーのすばらしさは言うまでもありませんね。