例年なら12月30日にアップしている「美術館・博物館めぐりの振り返り」2024年版を、遅まきながら書きます。
この「振り返り」は、その年に観た展覧会のTOP 3~4と次点の6~7展
を選んでおりまして、当然ながら、ここで選ばれたとしても何の箔
もつきません
それでも、2010年から13年も続けてきていますので、何かしらの「アーカイブ」にはなっているのではないかと思い、そのリンクを載せておきます。
2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
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前振りはこの辺にしておきまして、2024年に徒然煙草が観た展覧会のTOP 4は こちら
順番は、いつものように、私が観た順番です。
私は気づいていませんでしたが、この展覧会は開催前から、
本展のウェブサイトや広報資料について、文化の発信地としての性格のみが取り上げられており、人身売買や女性の性商品化といった遊廓の負の側面に触れられていないと批判が寄せられていた。(こちらのサイトより)
のだそうな。
展示も観ずに広報資料から批判するということ自体、「活動家」的な視点を感じるのではあるけれど、確かに「吉原」ほど「光と影」が交錯した場所はそうそうあるものじゃないし、江戸時代中期以降の日本(江戸)の文化は、吉原遊郭抜きに語ることはかなり難しい…
それは、「大吉原展」で展示されている作品のジャンルの広さや質・量に如実に現れていると思います。
ちょうど昨日からNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」が始まり、第1回から、「幕府公認」として岡場所を下に見る吉原遊郭自体が内部に抱える超格差社会とか、下層の遊女の悲惨さが描かれました。
そして、蔦重が叫ぶ「女郎あってこその吉原」という訴え、、、、、。
吉原の「光」にのみ目を向けるのは自己中心的だけれど、こちらの記事のように「性の搾取の場」としか見ようとしないのは、あまりにも視野狭窄だし無粋の極み(こちらの記事でいうキャンセルカルチャーそのもの)だと思うのです。
「神護寺」と聞くと、国宝の「神護寺三像」を所有しているとしかイメージを持たなかった私ですが、これほどまでに真言密教にとって重要
なお寺だとは思いもよりませんでした。
そして、空海存命中に描かれたという両界曼荼羅(高雄曼荼羅)(私が拝見したのは胎蔵界曼荼羅)の巨大さに驚き、江戸時代に描かれた模写で、その精細さに驚きました。
また、三筆・空海自筆の「灌頂暦名」は、それこそ「弘法も筆の誤り」で、修正しているのがなかなか人間っぽくて楽しかった
そして、展覧会のメインビジュアルに使われている「薬師如来立像」は、こんな厳しいお顔の薬師如来を見たことがない
っつうか、「どうして御本尊が薬師如来?」なのですが、神護寺の前身となる寺院の御本尊だったかららしい。
そういえば、比叡山延暦寺根本中堂の御本尊は最澄御手彫りの薬師如来像だったはず。これは偶然なのでしょうか?
空想旅行案内人
ジャン=ミッシェル・フォロン
@東京ステーションギャラリー
この展覧会は拾いものでした
私にとっては「初耳」だったジャン=ミシェル・フォロンの描く線、造形、色彩のなんと響いたことか
その響き方は、ガーンガーン
と物音を立てるのではなく、心の奥底からジワジワと体全体に広がっていく感じでした。
ジャン=ミッシェル・フォロン(Jean-Michel Folon, 1934-2005)は、20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとりです。若き日に偶然出会ったマグリットの壁画に感銘を受け、絵画世界に惹きつけられたフォロンは、1955年に移住したパリ近郊でドローイングを描く日々を送ります。フランスではなかなか芽が出ませんでしたが、アメリカの『ザ・ニューヨーカー』『タイム』などの有力誌で注目され、1960年代初頭にはそれらの表紙を飾るようになります。その後、各国で高く評価され、世界中の美術館で個展が開催されるなど目覚ましい活躍をみせました。
色彩豊かで詩情あふれるその作品は一見すると美しく爽やかにさえ感じられますが、そこには環境破壊や人権問題など厳しい現実への告発が隠れていると同時に、孤独や不安の感情が通奏低音のように流れています。
本展は初期のドローイングから水彩画、版画、ポスター、そして晩年の立体作品まで約230点を紹介する、日本で30年ぶりの大回顧展です。デジタル化やパンデミック、戦争など、社会的に大きな曲がり角にある現代、環境や自由への高い意識をもち、抑圧や暴力、差別などに静かな抗議を続けてきたフォロンの芸術を、いま、あらためて見直します。
という展覧会で、東京での開催は昨年9月で終わっていますが、1月11日~3月23日は名古屋市美術館、4月5日~6月22日はあべのハルカス美術館に巡回しますので、機会がありましたら、是非、お出かけください
2024年のTOP 4の最後を飾るのは、やはりこの展覧会でしょう
2024年2月3日~9月1日の約7か月という長い会期の間、いつか行くぞと思いつつ、気がつけば8月下旬になっていました
会期末の土日(8月31日-9月1日)は混雑必至だけれど、8月27(火)-28日(水)には台風10号が関西地方を直撃
するという予報が出ていたことから、8月29-31日の2泊3日で関西遠征を決行しました。
そして、メインの「村上隆 もののけ 京都」展は存分に楽しむことができたものの、ノロノロと進む台風10号
の影響で29日夕から東海道新幹線
が運休
するという事態が発生
結局私は、急遽新幹線から飛行機
に変更して帰宅するという、なかなかな遠征となりました。(遠征記)
こんなことがありながらも、「村上隆 もののけ 京都」展だけでなく、京都&奈良の観光はしっかりと楽しめたというのは、われながら大したもんだと思ったりして…
ということで、「後編」につづきます。
つづき:2025/01/07 2024年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編]