新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

2024年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編]

2025-01-07 17:56:41 | 美術館・博物館・アート

「2024年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]」のつづきは、「次点に選んだ展覧会です。

こちらも観た順番に紹介することにいたしまして、まずは2024年1~4月に観た3展。

中尊寺金色堂 @東京国立博物館 [記事]

中尊寺には2015年8月の帰省ドライブの途中に立ち寄ったことがありまして、金色堂もそのとき拝観しました。ただ、金色堂もその内部もガラス越しでしか見られず、ちょっと欲求不満だったのですが、「金色堂建立900年」を記念したこの展覧会は、金色堂そのものこそ現物不在ですが、普段は藤原清衡公が眠る中央壇「ユニット」(阿弥陀如来坐像・観音菩薩立像・勢至菩薩立像と6体の地蔵菩薩立像、増長天と持国天)がそろって東京国立博物館特別5室にお出ましになるという「現地で拝観するより凄いという展覧会でした。
恐らく当代選りすぐりの仏師が造ったとおぼしい仏さまたちを、360°ぐるりと拝見することができた上、金色堂の伽藍内部を巨大LEDスクリーン実物大の8KDGで見られるという趣向は、いかにも現代だし、金色堂の精細な模型(1/5サイズ)も楽しかった

木村伊兵衛 写真に生きる @東京都写真美術館

木村伊兵衛東京・下谷の生まれですが、秋田県人にとっては、お隣の山形・酒田出身の土門拳よりも馴染み深い写真家だと思います。
木村の名前は知らなくても、木村が秋田で撮影した作品を1点も観たことがない人はいないのじゃなかろうかと思う次第で…。若い人でも、ちょっと前まで秋田県のキャンペーン「あきたびじょん」で木村の代表作「秋田おばこ」が使われていましたからきっと知っているはずです。

この展覧会は、

本展は日本の写真史に大きな足跡を残した写真家・木村伊兵衛(1901-1974)没後50年展として、その仕事を回顧するものです。1920年代に実用化が始まったばかりの小型カメラに写真表現の可能性をいち早く見出し、それを駆使した文芸諸家のポートレート、あるいは東京下町の日常の場面を素早く切り取るスナップショットで名声を確立しました。1933年に開催された「ライカによる文芸家肖像写真展」では、従来の型にはまった肖像写真ではなく、被写体の一瞬の表情の変化を捉える独自のスタイルを確立し、また1936年には初めて沖縄を訪れて生活感にあふれた日常を記録するなど、“ライカの名手”としての名を早くに馳せました。
木村伊兵衛はまた、広告宣伝写真や歌舞伎などの舞台写真、カラーフィルムによる滞欧作品、秋田の農村をテーマにするシリーズなど、実にさまざまな被写体を捉えた数多くの傑作を残しました。その卓越したカメラ・ワーク、そして写真機材や感光材料への深い理解などは、旺盛な好奇心と豊かな体験に裏付けられています。印刷メディアを媒体として人間の営みのイメージを伝えるという写真の社会的な機能を自覚して、自らを「報道写真家」と位置づけました。その独特な眼差しにこだわった写真表現は、きわめてユニークなもので、見るものの記憶の中にいつまでも生き続けます。

というもので、メインビジュアル(馬のお尻と板塀と郵便受けの写真)も秋田・追分(秋田市金足辺り)で撮影されたもの。

これまで何度観たか判らない「秋田シリーズ」も、初めて観た「夢の島-沖縄」も、時空を飛び越え自分がその場にいるかのような感覚に浸ったのですが、衝撃は、「画室の川合玉堂」でした。
高い天井ととてつもなく大きな障子が印象的な画室で、巨大なキャンバス(日本画だけど)に向き合う川合玉堂を真横から捉えたこの作品は、静謐さ緊張感がもの凄かった

ほぼこの作品のためだけに図録を購入したのですが、なぜか「画室の川合玉堂「第2章 肖像と舞台」の表紙代わりに使われていて、他の作品よりも小さく印刷されていたのが、なんとも残念でした…

どうぶつ百江戸東京博物館コレクションより
  @東京ステーションギャラリー

江戸幕府創設からおよそ420年。江戸は巨大都市として発展し、京都、大坂に並ぶ三都のひとつとなりました。大都市江戸・東京に暮らした人々は、どのように動物とかかわってきたのでしょうか。それを物語る美術品や工芸品など約240件を、江戸東京博物館のコレクションから選りすぐって紹介します。
本展は、2022年パリ日本文化会館(フランス)で好評を博した「いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし」展を拡充した凱旋帰国展です。画巻、錦絵、装飾品、郷土玩具などに登場する動物たちの多様な姿をお楽しみください。 

江戸東京博物館は、2022年4月から来年2026年春(予定)まで大規模改修工事のため全面休館中で、この間、収蔵品は国内外を「ドサ回り」をしていて、この展覧会も、その元ネタたるパリでの「いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし」展もその一環です。

江戸・東京において人々が動物をどのようにとらえ、表現していたのかを俯瞰します。

と、「動物」をキーワードにして一つの展覧会が構成できてしまうというのは、それほど多くの「動物」を扱った作品が存在し、大量にコレクションされているからこそだと思います。
そんな感慨を持ちつつも、メインビジュアルが、大好き歌川広重の、大好き「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」だというだけで、妙に評価を上げてしまうのが私でございます

   

次は 次点 のうち2024年6~10月に観た3展です。

法然と極楽浄土 @東京国立博物館

令和6年(2024)に浄土宗開宗850年を迎えることを機に、法然による浄土宗の立教開宗から、弟子たちによる諸派の創設と教義の確立徳川将軍家の帰依によって大きく発展を遂げるまでの、浄土宗850年におよぶ歴史を、全国の浄土宗諸寺院等が所蔵する国宝、重要文化財を含む貴重な名宝によってたどるものです。困難な時代に分け隔てなく万人の救済を目指した法然と門弟たちの生き方や、大切に守り伝えられてきた文化財にふれていただく貴重な機会です。

というこの展覧会、予想以上に楽しめたのですが、ただ、私が行ったのは会期最終週の6月6日で、展覧会の目玉といってよい綴織當麻曼陀羅 (~5月6日)、「法然上人坐像」 (~5月12日)「法然上人絵伝(法然上人行状絵図)」(同)、「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」 (同)は軒並み「公開終了」 

なお綴織當麻曼陀羅 は、2013年5月に、「當麻寺-極楽浄土へのあこがれ-」@奈良国立博物館現物を拝見しましたが、なんだか「黒ずんだ巨大な正方形」というイメージしか残っていません [訪問記]

この「法然と極楽浄土展」に限らず、日本美術の展覧会には展示品の入れ替えが「あってあたりまえ」ですから、事前に出品目録その他をチェックして、日程に余裕を持つことが必要です。って、どうして今さらこんなことを書いているんだろ

はにわ @東京国立博物館

「村上隆 もののけ 京都」展もそうでしたが、これほど笑顔の観客だらけの展覧会はそうそうあるものじゃないと思いました
もともと「はにわ好きの私ですから、はにわ大集結しているだけで気分は盛り上がりまくりでした
とりわけ、目玉の「挂甲の武人」5体の一斉展示は(そもそもこの展覧会のサブタイトルは「挂甲の武人 国宝指定50周年記念」)「反則だろでした

しかも50年前に国宝に指定され、東博でもちょくちょく観ることができる群馬県太田市飯塚町出土の「挂甲の武人」と、太田市や伊勢崎市で出土した他の「挂甲の武人」とはビミョーに造りが違っていて、それぞれの個性が感じられました。

展示方法も、単体で見てもかわいらしい動物のはにわを、こんな風に並べてしまう感覚

またこちらの「見返り鹿」もなかなかな造形です

一方で、この人物埴輪なんて、ウケ狙いで造ったとしか思えません

このように、「ほぼ土色の作品ばかりだけれど、楽しい」の極みだった「はにわ」展でしたが、残念だったのは、グッズ「挂甲の武人ぬいぐるみ」無かったことでした。

うちにいる「挂甲の武人ぬいぐるみ」は、2022年秋に開催された「国宝 東京国立博物館のすべて」展のグッズとして販売されていたもので、今回もこのぬいぐるみがあれば、「みずらカチューシャ」以上にウケていたと思うのですが…

檜細工師 三浦宏の粋
 @致道博物館

次点の最後は、記憶にも新しい「檜細工師 三浦宏の粋」展です。
この展覧会は、昨年10月末、懸案にしていた山形・鶴岡市探訪に出かけた際、たまたま致道博物館で開催されていたもの。

その内容はこちらでしっかりと書きましたので省略させていただきますが、こんな魅力的な展覧会に遭遇できたなんて、「僥倖としか言いようがありません

というところで「番外編」につづきます。

つづき:2025/01/08 2024年の美術館・博物館めぐりの振り返り [番外編]

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