臭木(クサギ)の花が花盛りを迎えています。
我が庵がある高台は平賀中台と呼ばれる高台です。地元で生まれ育った友人によると、彼女が小学生だった六十年ぐらい前は森や林ばかりだったそうです。
もちろん当時とは道路事情も異なるのでしょうが、彼女の生家から当時通った小学校まで、現在の地図を使って所要時間を測ってみると、三十五分。これは大人の足の速さですから、小学生、とりわけ低学年だとすれば四十分とか五十分かかったかもしれません。そんなころの平賀中台の様子といえば、下から上るためには蔦を伝って上らなければならなかったそうです。
平賀中台には著名な本土寺があって、創建は七百年以上も前。遥か昔からあり、寺域の広さも現在よりはずっと広かったということですから、すべてがすべて蔦を頼りに上らなければ行けなかった、ということはなかったのかもしれません。
いまでは森もほとんどなくなり、畑や野原も極めて尠なくなりました。代わりに増えつづけているのは建て売りの住宅です。いまでも農業をつづけている人によると、代が替わるごとに払わなければならない相続税のため、農地を切り売りして行かなければならない、ということですから、畑は日毎に狭く、尠なくなっているわけです。
話が横道にそれて行きそうになりましたが、そんなふうに自然が尠なくなっている台地の一画に、ほんの少しだけ人が立ち入りそうもない林があり、そこにクサギ(臭木)が生えている一画があるのです。
近づくと、ほんのりとピーナツバターのような臭いがします。ビタミン剤みたい、という人もいます。
これは花の臭いではなく、葉っぱの臭いなのだそうですが、私には花のない時期は臭いがしないように思われます。決して「クッサァー」と唸ってしまうような臭いではないと思いますが、植物としては異例な臭いがするので臭木=クサギと名づけられたのでしょう。
分類上はシソ科です。
誰かが植えたのでしょうか。ここだけ下草もなく、整然と並んでいるように感じられます。
スイフヨウ(酔芙蓉)も咲き始めていました。
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