開始日時:2023/03/12
持ち時間:0分+10秒
場所:81Dojo
手合割:角落ち
下手:某四段
上手:日向
【第1図】までの指し手
△6二銀 ▲7六歩 △4二玉 ▲7八飛 △5四歩 ▲6八銀
△8四歩 ▲4八玉 △8五歩 ▲7七角 △6四歩 ▲3八銀
△6三銀 ▲3九玉 △5二金左 ▲5八金左 △7四歩 ▲2八玉
久しぶりに角落ち上手の将棋を発信したい。
プロはもちろん、アマチュアでもある程度指せる方から見れば、
こんなミスだらけの将棋は何の役にも立たないが、
級位者の方にはお役に立てている様で、
実はアクセス数が多い記事ジャンルの一つである。
局面は下手三間飛車本定跡のオーソドックスな出だし。
対振り飛車の場合、上手の王将は△4二王としておくのが最初のポイント。
ちなみに、下手は四段で同段位かつレートも自分より少し上だ。
自分の感覚では、同段位の相手に角を落としてもらって指すなど全く考えもしないが、
対局中にAIを使用するなど、勝つことに手段を択ばない人が多く、
近年はそういう傾向らしい。
こちらは相手が誰でも指す一手。
【第2図】までの指し手
△7二金 ▲1六歩 △7三金 ▲5六歩 △8四金 ▲6六歩
△7五歩 ▲6七銀 △7六歩 ▲同 銀 △7五歩 ▲6七銀
上手の△7五歩を許したのは、下手の油断だと思う。
若いころ全国大会クラスのアマ強豪の方々に角落ちで1000局以上稽古をつけてもらったが、
彼らは一様に「上手に位を許すのは損」と言っていた。
多分、それは今も変わらないと思う。
【第3図】までの指し手
△9四歩 ▲9六歩 △3二玉 ▲6八角 △7二飛 ▲1五歩
△4二銀 ▲4六角 △7四金 ▲7七桂 △5三銀 ▲6五歩
下手は角を転換して▲6五歩だが、
7~5筋は上手の勢力圏で簡単に突破は許さない。
では、これで上手が有利か?
と問われればそういうことはなく、
角1枚の差がほんの少し減った程度だと思う。
上手は厚みを活かしてディフェンスラインを堅守する方針。
【第4図】までの指し手
△7三桂 ▲6四歩 △同銀左 ▲6五歩 △5三銀 ▲5五歩
△同 歩 ▲同 角 △5四歩 ▲4六角 △4四銀 ▲5七金
右桂馬が使えて、上手としてはまずまず、といった感じ。
▲5五歩からの歩交換に△5四歩とするのは感触が悪く、
平手なら絶対指さないが、そこを耐えて、
無難に納めるのが駒落ち上手を指すコツだと思う。
最初から戦力不足の上手は、序盤でミスったら勝てない。
これは平手にも通じる考え方だと思う。
【第5図】までの指し手
△5五銀 ▲3五角 △6五桂 ▲同 桂 △同 金 ▲6六歩
△6四金 ▲5六金 △4四銀 ▲2六角 △8六歩 ▲同 歩
戦力が少ない方は局地戦にして、
部分的に互角な戦いに持ち込むのがセオリーだ。
余計な争点を作らず、戦いを8~5筋に収めるように指すのが良いと思うが、
下手の指しっぷりからすると、
下手はそのセオリーに気付いている様子はなさそうだ。
上手としてはそこがねらい目か。
【第6図】までの指し手
△8二飛 ▲8八飛 △5五歩 ▲6五金 △7六歩 ▲同 銀
△5六歩 ▲5八歩 △5五桂
通常は、駒がぶつかれば力の差が出て、
ハンディキャップを解消できることが多い。
しかし、今回の相手はレートが自分より上なので、そうはならない。
指し手が見えず、中盤の折衝で損した関係で、
多分、第6図は上手不利な局面だろう。
それを自覚し、ぼんやりした△5五桂で下手に手を渡す。
相手を惑わす可能性がある実戦的な勝負手で、
後々、下手の焦りを誘うのが目的。
ただし、失敗したら差はもっと広がる可能性もある。
そもそも最善手ではないので、この類の手は棋書には書いていない。
【第7図】までの指し手
▲8五歩 △7五歩 ▲同 銀 △同 金 ▲同 金 △6七桂成 ▲7四歩
この辺りの折衝は私には難しく、とにかく差が広がらない様にするだけで精一杯で、
いわゆるキャンセル待ちの様相を呈してきた。
ただし、キャンセル待ちは重要かつ実戦的な技術の一つ。
【第8図】までの指し手
△5四銀 ▲7三歩成 △8一飛 ▲6四金 △4五銀右 ▲6三と
△5一金 ▲5三と △5七歩成 ▲同 歩 △5二歩
局面は下手優勢だが、上手が逆転に成功するには、下手に間違ってもらうしかない。
間違いやすい局面をいかに作るか?が上手のテーマとなる。
すんなり土俵を割らない様に、歩を成り捨てて△5二歩。
スペースを埋めつつ、相手の攻め駒を責める。
【第9図】までの指し手
▲5四と △同 銀 ▲同 金 △7一飛
将棋は基本的には攻めている方が有利だが、
そうならない局面も実は多い。
この場面、下手は効率の悪い手を指すと、
簡単に攻めが切れてしまうリスクがある。
上手は、善悪よりも下手のその心理を突く指し手を優先して選択する。
△7一飛は遊び駒の活用と言えばそれまでだが、
下手が焦ってくれないと悪手を指してくれないので、
冷静に見れば間に合ってないが、少しでも焦らせるのが目的だ。
【第10図】までの指し手
▲4四角 △7九飛成 ▲3五桂 △3四銀 ▲4三桂成
△同 銀 ▲2二金 △同 玉 ▲4三金 △4二金打 ▲3四銀 △3一桂
下手は▲4四角で決まったと思っていただろう。
一見、取る一手のようだが、実はここが技をかけるチャンス。
利いているかどうかわからないが、
△7九飛成で意図的に相手の読みを外し、しつこく相手の悪手を誘う。
【第11図】までの指し手
▲4二金 △同 金 ▲5一銀 △4一金打 ▲4二銀成
△同 金 ▲5一銀 △4一銀 ▲4二銀成 △同 銀
▲4一金 △5三銀打
形勢が悪い方は勢力差の少ない局地戦に誘い、
ひたすらに相手のミスを誘い続ける。
不利な局面にはそもそも最善手は存在しないので、
心理的に最も効果がありそうな手を探す。
駒落ち上手は、そういう手を見つける良い訓練になる。
【第12図】までの指し手
▲同角成 △同 銀 ▲4二金打 △同 銀 ▲同 金
△3二金 ▲4一金打 △4二金 ▲同 金 △3二金
▲4一金打 △6四角
形勢は良く分からないが、局地戦に持ち込む事はできた。
上手は攻めきられたら負け、下手も攻めが切れたら負け、
と互いに恐い局面になった。
下手に正確に指された時は仕方ない、
しかし、間違ったら許さない。
こういう局面に持ち込むのも大事な技術の一つ。
△6四角は感覚が指させた手だが、
大駒を受けに使うなら、やはり遠くから利かすのが好手になりやすい。
【第13図】までの指し手
▲3二金 △同 玉 ▲3一金 △同 玉 ▲4三銀不成
△4二金 ▲3五桂 △4四金 ▲2三桂不成 △4一玉 ▲6二銀
繰り返しになるが、勢力が互角の局地戦に持ち込み、
相手のエラーを誘い続ける、諸先輩方は私にそう教えてくれた。
ようやくその時が訪れる。
【投了図】までの指し手
△4三金上 ▲2二銀 △3二玉 ▲1一銀不成△2三玉 ▲2六香 △2四歩
まで151手で上手日向の勝ち
150手を超える長い戦いに、ようやくピリオドが打たれた。
「将棋は最後に悪い手を指した方が負ける」は大原則で、
前図の▲2三桂不成+▲6二銀は、
上手が配置した△6四角の利きをうっかりした大悪手となった。
アマチュアの将棋はこんな決着のオンパレードだが、
これはこれで勝っても負けても楽しい。
平手全盛の時代だが、駒落ちを指すキッカケになれば幸い。
了
持ち時間:0分+10秒
場所:81Dojo
手合割:角落ち
下手:某四段
上手:日向
【第1図】までの指し手
△6二銀 ▲7六歩 △4二玉 ▲7八飛 △5四歩 ▲6八銀
△8四歩 ▲4八玉 △8五歩 ▲7七角 △6四歩 ▲3八銀
△6三銀 ▲3九玉 △5二金左 ▲5八金左 △7四歩 ▲2八玉
久しぶりに角落ち上手の将棋を発信したい。
プロはもちろん、アマチュアでもある程度指せる方から見れば、
こんなミスだらけの将棋は何の役にも立たないが、
級位者の方にはお役に立てている様で、
実はアクセス数が多い記事ジャンルの一つである。
局面は下手三間飛車本定跡のオーソドックスな出だし。
対振り飛車の場合、上手の王将は△4二王としておくのが最初のポイント。
ちなみに、下手は四段で同段位かつレートも自分より少し上だ。
自分の感覚では、同段位の相手に角を落としてもらって指すなど全く考えもしないが、
対局中にAIを使用するなど、勝つことに手段を択ばない人が多く、
近年はそういう傾向らしい。
こちらは相手が誰でも指す一手。
【第2図】までの指し手
△7二金 ▲1六歩 △7三金 ▲5六歩 △8四金 ▲6六歩
△7五歩 ▲6七銀 △7六歩 ▲同 銀 △7五歩 ▲6七銀
上手の△7五歩を許したのは、下手の油断だと思う。
若いころ全国大会クラスのアマ強豪の方々に角落ちで1000局以上稽古をつけてもらったが、
彼らは一様に「上手に位を許すのは損」と言っていた。
多分、それは今も変わらないと思う。
【第3図】までの指し手
△9四歩 ▲9六歩 △3二玉 ▲6八角 △7二飛 ▲1五歩
△4二銀 ▲4六角 △7四金 ▲7七桂 △5三銀 ▲6五歩
下手は角を転換して▲6五歩だが、
7~5筋は上手の勢力圏で簡単に突破は許さない。
では、これで上手が有利か?
と問われればそういうことはなく、
角1枚の差がほんの少し減った程度だと思う。
上手は厚みを活かしてディフェンスラインを堅守する方針。
【第4図】までの指し手
△7三桂 ▲6四歩 △同銀左 ▲6五歩 △5三銀 ▲5五歩
△同 歩 ▲同 角 △5四歩 ▲4六角 △4四銀 ▲5七金
右桂馬が使えて、上手としてはまずまず、といった感じ。
▲5五歩からの歩交換に△5四歩とするのは感触が悪く、
平手なら絶対指さないが、そこを耐えて、
無難に納めるのが駒落ち上手を指すコツだと思う。
最初から戦力不足の上手は、序盤でミスったら勝てない。
これは平手にも通じる考え方だと思う。
【第5図】までの指し手
△5五銀 ▲3五角 △6五桂 ▲同 桂 △同 金 ▲6六歩
△6四金 ▲5六金 △4四銀 ▲2六角 △8六歩 ▲同 歩
戦力が少ない方は局地戦にして、
部分的に互角な戦いに持ち込むのがセオリーだ。
余計な争点を作らず、戦いを8~5筋に収めるように指すのが良いと思うが、
下手の指しっぷりからすると、
下手はそのセオリーに気付いている様子はなさそうだ。
上手としてはそこがねらい目か。
【第6図】までの指し手
△8二飛 ▲8八飛 △5五歩 ▲6五金 △7六歩 ▲同 銀
△5六歩 ▲5八歩 △5五桂
通常は、駒がぶつかれば力の差が出て、
ハンディキャップを解消できることが多い。
しかし、今回の相手はレートが自分より上なので、そうはならない。
指し手が見えず、中盤の折衝で損した関係で、
多分、第6図は上手不利な局面だろう。
それを自覚し、ぼんやりした△5五桂で下手に手を渡す。
相手を惑わす可能性がある実戦的な勝負手で、
後々、下手の焦りを誘うのが目的。
ただし、失敗したら差はもっと広がる可能性もある。
そもそも最善手ではないので、この類の手は棋書には書いていない。
【第7図】までの指し手
▲8五歩 △7五歩 ▲同 銀 △同 金 ▲同 金 △6七桂成 ▲7四歩
この辺りの折衝は私には難しく、とにかく差が広がらない様にするだけで精一杯で、
いわゆるキャンセル待ちの様相を呈してきた。
ただし、キャンセル待ちは重要かつ実戦的な技術の一つ。
【第8図】までの指し手
△5四銀 ▲7三歩成 △8一飛 ▲6四金 △4五銀右 ▲6三と
△5一金 ▲5三と △5七歩成 ▲同 歩 △5二歩
局面は下手優勢だが、上手が逆転に成功するには、下手に間違ってもらうしかない。
間違いやすい局面をいかに作るか?が上手のテーマとなる。
すんなり土俵を割らない様に、歩を成り捨てて△5二歩。
スペースを埋めつつ、相手の攻め駒を責める。
【第9図】までの指し手
▲5四と △同 銀 ▲同 金 △7一飛
将棋は基本的には攻めている方が有利だが、
そうならない局面も実は多い。
この場面、下手は効率の悪い手を指すと、
簡単に攻めが切れてしまうリスクがある。
上手は、善悪よりも下手のその心理を突く指し手を優先して選択する。
△7一飛は遊び駒の活用と言えばそれまでだが、
下手が焦ってくれないと悪手を指してくれないので、
冷静に見れば間に合ってないが、少しでも焦らせるのが目的だ。
【第10図】までの指し手
▲4四角 △7九飛成 ▲3五桂 △3四銀 ▲4三桂成
△同 銀 ▲2二金 △同 玉 ▲4三金 △4二金打 ▲3四銀 △3一桂
下手は▲4四角で決まったと思っていただろう。
一見、取る一手のようだが、実はここが技をかけるチャンス。
利いているかどうかわからないが、
△7九飛成で意図的に相手の読みを外し、しつこく相手の悪手を誘う。
【第11図】までの指し手
▲4二金 △同 金 ▲5一銀 △4一金打 ▲4二銀成
△同 金 ▲5一銀 △4一銀 ▲4二銀成 △同 銀
▲4一金 △5三銀打
形勢が悪い方は勢力差の少ない局地戦に誘い、
ひたすらに相手のミスを誘い続ける。
不利な局面にはそもそも最善手は存在しないので、
心理的に最も効果がありそうな手を探す。
駒落ち上手は、そういう手を見つける良い訓練になる。
【第12図】までの指し手
▲同角成 △同 銀 ▲4二金打 △同 銀 ▲同 金
△3二金 ▲4一金打 △4二金 ▲同 金 △3二金
▲4一金打 △6四角
形勢は良く分からないが、局地戦に持ち込む事はできた。
上手は攻めきられたら負け、下手も攻めが切れたら負け、
と互いに恐い局面になった。
下手に正確に指された時は仕方ない、
しかし、間違ったら許さない。
こういう局面に持ち込むのも大事な技術の一つ。
△6四角は感覚が指させた手だが、
大駒を受けに使うなら、やはり遠くから利かすのが好手になりやすい。
【第13図】までの指し手
▲3二金 △同 玉 ▲3一金 △同 玉 ▲4三銀不成
△4二金 ▲3五桂 △4四金 ▲2三桂不成 △4一玉 ▲6二銀
繰り返しになるが、勢力が互角の局地戦に持ち込み、
相手のエラーを誘い続ける、諸先輩方は私にそう教えてくれた。
ようやくその時が訪れる。
【投了図】までの指し手
△4三金上 ▲2二銀 △3二玉 ▲1一銀不成△2三玉 ▲2六香 △2四歩
まで151手で上手日向の勝ち
150手を超える長い戦いに、ようやくピリオドが打たれた。
「将棋は最後に悪い手を指した方が負ける」は大原則で、
前図の▲2三桂不成+▲6二銀は、
上手が配置した△6四角の利きをうっかりした大悪手となった。
アマチュアの将棋はこんな決着のオンパレードだが、
これはこれで勝っても負けても楽しい。
平手全盛の時代だが、駒落ちを指すキッカケになれば幸い。
了