「経路依存性の光と影」 小林 航汰朗
1度決めたこと、決定した路線を後から変更することは難しい。これが経路依存性だと今日の授業で聞いた。財政健全化やグローバル化はこの経路依存性による負の影響の代表的な例であり、1度決めたことを変えられない、後戻りできないことの影響は計り知れない。
しかしその一方で、経路依存性がプラスに働くこともあるのではないかと考える。経路依存性がプラスに働くということはつまり、1度決めた道を不退転の決意で突き進むということになる。ことわざでいえば「継続は力なり」であろうか。
例えば、2020年に世界1位を記録した日本のスーパーコンピュータ富岳。2020年に暫定運用が始まり、2021年に本格稼働した。現在まで世界のスパコンのランキングで4期連続1位となっており、日本の技術力を世界に知らしめる結果となった。この富岳の前身である京は、民主党政権化である2009年に事業仕分けによって1度凍結となった。あの有名なセリフはあえて記述しないが、成果が出ないことで路線を変更しようとしたわけである。これは経路依存性を問題ととらえる見方からすれば、歓迎すべきであり喜ばしいことである。しかしその後開発が再開された京はスパコンランキングで1位に輝き、その流れを汲んだ富岳もトップに君臨し続けている。これは経路依存性がプラスに働いた事例と言えるのではないだろうか。
あるいは、スーパーカミオカンデ。スーパーカミオカンデとは世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置で、1996年に観測を開始された。ニュートリノ検出器は岐阜県飛騨市地下1000ⅿに5万トンの水を蓄えたタンクとその壁に設置された光電子倍増管として設置されている。このニュートリノ研究に対しても2009年の事業仕分けで予算縮減が決定された。ニュートリノ研究は典型的な基礎研究分野であり、人類生活に直接役立つものではないかもしれない。それでも研究は続けられ、ニュートリノ質量の存在を示すニュートリノ振動が発見され、2015年には梶田隆章先生がノーベル賞を受賞した。これも1度決めたことを貫き通したことの結果ではないだろうか。
このように、1度決めたことを後戻りせず進めることにも意味があるといえる。ただこれは当たり前のことで、特に科学技術の発展のためには小さな努力の積み重ねが重要である。ただ、経路依存性そのものが悪いのではなく、経路依存性によって招かれる事象が悪いのであって、結局は結果論なのであろうと私は考える。経路依存性によって考えを改めなかったために取り返しのつかない結果を招くこともあれば、1度決めたことを曲げずに進んだことで大きな成果を得ることもあるのである。
大切なことは、経路依存性というものがあると知り、自分の判断プロセスにおいてこの影響がないか俯瞰的に考えるようにすることではないかと私は考える。
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