「インフラにおける民間と行政の組み合わせ」 大橋 直輝
1964年の東京オリンピックの時にたくさんできた首都高速道路などのインフラが一度に後期高齢インフラとなり、更新していくにも莫大な量になってしまう。建設当時、老朽化はしないものだと考えられていたようだ。おかげで首都高速道路は各地で大規模更新や大規模修繕工事を行っている。多くの人が長い間インフラの老朽化には盲目であった。そのことは国土交通省の「国民意識調査」より、「わが国では、これまでに多くの社会資本が整備され生活が豊かになった反面、施設の老朽化により、今後多くの施設が更新時期を迎えます。あなたは、社会資本に老朽化の問題があることを知っていましたか。」という質問の結果、70%の人がそのことを理解していないことからでも明らかである。またインフラの更新について、正しく理解をしていないので回答者の約六割が「すべての施設の更新」を進めることを希望する旨の回答をした。もちろん一度にそんなことはできない。また費用も膨れ上がってしまう。
そのため、私の考えることの一つに、民間企業がよりインフラの更新に参加しやすい、参加する意欲が上がるような制度を作るべきだ。そもそもインフラはだれでも使うことができて、整備や更新をしても儲からないとされてきたので国や行政が運営していた。しかし国にとっても赤字ならほかの分野で使いたいお金が無くなってしまう。今まで郵政や国鉄が民営化されたが、通行料金を徴収しない一般道のでは費用は集まらない。これでは参入しようという民間企業は現れない。まず一般道で稼げるものを作る必要がある。そのスペースを使って新たなビジネスチャンスの創出をできるような法制定が進めばそこでの利益を修繕や更新の費用に充てることができる。
平成23年度より、河川空間において、社会実験としての区画指定を行わずに全国で規制緩和の実施が可能になった。そうすることにより、イベント施設やオープンカフェの設置など地域のニーズに対応した河川敷地の多様な利用が可能になり、水辺における賑わいの創出や魅力ある街づくりを通して、都市及び地域の再生等を進めている。大阪の道頓堀川では民間事業者によるオープンカフェの設置やイベントの開催が行われた。
このように道路空間や河川空間の利用制限を緩和し、これらの空間を民間に開放し、行政財産の商業的利用を図ることで、民間からの収益還元を活用したインフラ整備・管理の展開、地域活性化にもつながる新たなビジネスの展開等の効果が期待される。このようにして社会資本を民間に開放することにより、既存のストックを有効活用する手法を展開している。
まずはインフラの更新に対して現状を知る、そのために国や行政からより積極的な情報提供があれば、多くの人の目に留まり、様々なアイディアがもたらされるかもしれない。さまざまな地域での事例を見たうえで自分たちの地域ではどのような対策をしてきたのか、どのように対応していくのか、持続可能なインフラ整備に関心を持ち、国や行政に任せきりではなく、民間の使えるノウハウを意欲的に使えるような制度設計を進めていき、官民一体となってインフラの再生を果たしていく必要があると私は考える。
インフラに限った話ではないが、パッケージ化の政策をわすれてはならない。多様な価値観のある現在で社会に一意的な解は存在しない。だから一つの政策で複数の社会課題に対応し、別の政策と合わせることで相互作用を生む組み合わせを生みだし、効率化を図る。そこにあるだけでも威力を発揮してくれるのがインフラであるが、そこにあるだけではなく民間と組み合わさることがインフラの再生・活性化につながるのではないか。