この数日、イングリット・ヘブラーの晩年のモーツァルト・ピアノソナタ全集を何度も聞く。ヘブラーの良さがわかってきた。タッチが柔らかく、割と折り目正しく、速い曲はテンポよく、遅い曲は味わい深く弾く。思ったより、全体としては遅くない。アラウ爺さんと比べてみると、アラウは一音一音噛みしめるようにゆっくりと瞑想的に弾く。ヘブラーはリリカルだが可憐なところがあり、低音が弱い。割とさらりと弾く。その他最近のピアニストの廉価盤、ジャン・ミュラーのベートーヴェンのピアノソナタ・ライブ全集も聞く。ジャン・ミュラー、草食系で、親しみ易く、身軽な演奏で、心がこもっていて好演奏だった。拍手が入っているのもいいが、拍手もあっさりめ。渋谷のレコファンからナクソス社のワルター編曲四手のピアノ版マーラー復活届く。ピアノ版なのに78分もある。こんなに長いピアノ曲もそうそうない。78分間、手に汗握る迫力の充実演奏。復活の最期にちゃんと高揚して終わるから不思議。マーラーのピアノ版、いろいろ集めているが、4番5番8番、9番は見かけない。復活のピアノ版は小規模コーラス付きも感動だった。今はデッカのコレクターズ・エディションの、イングリット・ヘブラー演奏のシューベルト・ピアノソナタと即興曲と楽興の時の7枚組CDを聞いている。これもタッチが柔らかく、中庸のテンポで丁寧に弾いていて心地よい。数か月分のCDを東京のディスクユニオンめぐりとその拾遺(買えなかったのをそろえる)で買い尽くしてしまった。持っているCDを何度も聞いて、演奏の深みに繰り返し触れたい。
ゆったりと時間の奥に連れてゆくピアノソナタの指に漂う
ゆったりと時間の奥に連れてゆくピアノソナタの指に漂う