ニュートン式望遠鏡は口径の割に安価なので、天体撮影を始めるに当たって、少なからぬ人々が屈折でなく、ニュートン式から入手するのではないでしょうか。
ニュートン式反射望遠鏡を使っている人にとって、避けて通れないのが光軸合わせ。
しかし、これがなかなか思い通りにいかない人も多いのではないでしょうか。
特に、斜鏡がオフセットされてると話が単純でなくなってくるように思います。
光軸修正読本なるものを5年ほど前(?)に読んでみましたが、さっぱり理解できませんでした。
今までは、レーザーコリメーターでなんとかごまかしてきました。
この度、改めて試行錯誤してみました。
大前提として、光学的な理解は最初から諦めています。
自分で考えて、これでやってみよう!みたいな感じです。
科学的でないので、その点、ご容赦ください。
僕が使用した光軸修正用アイピースは、笠井トレーディングで購入したCHESIREタイプです。
光軸修正用アイピースをのぞくと、いろんな円が見えます。
●光軸修正用アイピースの内壁の円
●主鏡に映った斜鏡の円
●光軸修正用アイピースの反射鏡の円
●光軸修正用アイピースののぞき穴の円
●主鏡のセンターマーク
(正確には、これに加えて、「主鏡と斜鏡に映った接眼筒の円」もあるようですが、よく見えません)
これらの円が「同心円になる」のではないか?
と、僕は最初、思ったんですね。
全てが同心円なら、美しいですし、何と無く光軸が合っているとような気がするじゃないですか。
図に描いて確認してみました。
な、なんと!
主鏡に映る斜鏡の円は、同心円にならないのです!
衝撃的な事実でした。
光軸修正用アイピースの反射鏡についても、作図してみました。
こちらは同心円になります。
同じ理屈で、「光軸修正アイピースののぞき穴の円」「主鏡のセンターマーク」は同心円になりそうです。
つまり、光軸が合っている場合、光軸修正アイピースからは、このような像が見えるはずです。
(なお、この作図はわかりやすく描いた概略図で、上のGINJI-250FNの図面から起こしたものではありません。)
次に、ニュートン式反射望遠鏡で、調整できる箇所を洗い出してみましょう。
(1) 斜鏡の引ネジの方向の調整
(2) 押しネジによる斜鏡の傾きの調整
(3) 斜鏡の回転方向の調整
(4) 主鏡の押し・引ネジによる調整
(5) スパイダーの調整
これだけあると、複雑になります。
5つもパラメーターがあるということは、1発で光軸が合うことはあり得ない、ということです。
複数種類の操作を反復して、追い込む作業が必要だということです。
最初に困ったのが、引きネジ方向の調整です。
接眼部から覗いて見て、さっぱりわからん。
これ、斜鏡のオフセット中心がわからないと、無理でないですか?
斜鏡の長径と短径の中点から4mmの1.41421356倍(√2倍)の位置、筒先(対物)側にマジックで印をつけました。
これで(1) 斜鏡の引ネジの方向の調整の第一段階クリアです。
でも、(2) 押しネジによる斜鏡の傾きの調整で、引ネジ方向に若干のズレが生じますので、(1)と(2)を後ほど、複数回、行うことになります。
次に、(3) 斜鏡の回転方向の調整を行います。
が、ここで早速トラブルがありました。
なんと、どんなに斜鏡を回転しても、先ほどマジックで印をつけた斜鏡のオフセット中心が、光軸修正アイピースの十字線の交点に来ないのです。
つまり、光軸修正アイピースから覗いた視野の中心に、斜鏡の長径軸が来ない、ということです。
これは困った。
マジックの印は大雑把につけたとはいえ、誤差はせいぜい1mm程度かと思ってます。
それにしてはズレすぎる。
(2) 押しネジによる斜鏡の傾きの調整の問題かとも思いましたが、どうにも修正できない。
これはつまり、斜鏡を固定する引ネジが鏡筒の中心にないってことですね。
だから、(5) スパイダーの調整が必要と判断しました。
ところがGINJI-250FNは、スパイダーの調整はほぼ、できない構造なんですね。
強引に少しだけ中心に寄せる操作をしましたが、もともと、そういう調整はできなさそうなので、妥協しました。
よって、予定では斜鏡のオフセット中心が視野の中心にあるはずだったのですが、これ以降の操作でそれが実現することがありませんでした。
後日談ですが、このことをGINJI-200FN使いに聞いたら、同様だったそうです。
最初、僕と同じく、スパイダーで位置を調整したところ、星像が大きく歪んだそうです。
で、どうしたかというと、接眼部のネジを緩めて、接眼部を丸ごとスライドさせて、光軸修正用アイピースの十字の下に斜鏡のオフセット中心点が来るように調整したそうです。
次に、(2) 押しネジによる斜鏡の傾きの調整で、光軸修正用アイピースの反射鏡の円が、光軸修正用アイピースの十字線の交点にくるように調整しました。
次に、(4) 主鏡の押し・引ネジによる調整で、主鏡のセンターマークが光軸修正用アイピースの十字線の交点にくる(光軸修正用アイピースの反射鏡の円の中)にくるように調整しました。
この操作が一発で決まることはなく、(2) 押しネジによる斜鏡の傾きの調整と、(4) 主鏡の押し・引ネジによる調整を3回くらい繰り返して追い込みます。
どうしても追い込めない場合は、(1) 斜鏡の引ネジの方向の調整に戻って、最初からやり直します。
なんとかかんとか、
●光軸修正アイピースの内壁の円
●光軸修正アイピースの反射鏡の円
●光軸修正アイピースののぞき穴の円
●主鏡のセンターマーク
が同心円になりました。
が、これで終了ではないのです。
僕はもう1つ、光軸修正の道具を持っています。
レーザーコリメーターです。
レーザーコリメーターで見てみると、微妙に光軸が合ってません。
いつも通り、レーザーコリメーターでの光軸修正を行います。
そして、再びCHESIREタイプの光軸修正用アイピースでのぞきます。
すると、これまた微妙にズレてるんです。
最初からやり直しです。
これを数回繰り返すと、CHESIREタイプの光軸修正用アイピースでも、レーザーコリメーターでも光軸が一致するようになります。
いヤッタァ〜!と言いたいところですが、GINJI-250FNは鏡筒が脆弱であるため、望遠鏡を向ける方角を大きく変えただけで、光軸が微妙にズレるシロモノです。
あまりこだわり過ぎない方が身のためです。
僕の性格がのめり込むタイプなので、今回の光軸修正に、精神と身を削ってしまいましたが。。。
これだけ御託を並べましたが、これら、僕の試行錯誤の結果であって、実は科学的根拠に基づいた光軸調整ではないことを最後に念押しさせていただきます。
今の僕はこんな感じにニュートン式反射望遠鏡の光軸調整をやってますが、数年後には別のやり方をやっているかもしれません。
追記
GINJI-200FN使いの方に聞きました。
これで主鏡と斜鏡の中心軸は概ねあったことになるそうです。
しかし、これだけではまだダメだそうです。
あとは星を見ながらの調整になるとのこと。
コマコレクターなしで、フルサイズセンサーで撮影し、周辺の星が4隅で均一にコマを引くように、主鏡を調整して、終わりだそうです。
2024/07/31追記
未だ、光軸調整を極められたと思ったことは一度もありません。
猫五郎の光軸調整のその後の軌跡をリンクにまとめました。