支払いを済ませて蕎麦屋を出た私を追って来た女将さんが、「お豆です。ビールのツマミにしてください」と、レジ袋に包んだものを自転車の買い物カゴに入れました。彼女は高級品を、気を使わせないよう、受け取り易いよう、レジ袋に入れて渡す習性があります。

店内では他の客の手前渡し辛かったのでしょう。それより何より突然のことに驚いて、「ありがとう」としか言えませんでした。
芋甚で氷を食べながらレジ袋を開きました。女将さんのことだから、きっと名店の品でしょう。

包装紙にある西片へ行ってみます。文京区西片は本郷界隈でも一番の高級住宅街です。高級住宅が並ぶ丘の麓の言問通り沿いに目指す店が在りました。紺色の庇の佇まいが好いです。道路を渡ります。

この通りはセンスの良い店が並んでいます。その並びに在ります。

ああ、好いですね。

通り過ぎて振り返ります。流石は女将さんが選ぶ店です。心地好い清潔感があります。思った通り名店です。

もう一度、道路を渡って眺めます。店内には、これも清潔感がある若夫婦が居ます。看板には「創業明治二十年」とあります。これは老舗中の老舗だわ!

「なるべくお早めにお召し上がりください」と言われなくても、すぐに無くなりました。

わさび豆は、先ず鮮やかな緑が食欲をそそります。噛み応えが固くなく柔らか過ぎずちょうど良いです。口の中でホロホロと砕けます。そして何より、ワサビの辛さと煎り豆の甘さのバランスが絶妙です。後を引きます。・・・難点は唯一、止められず食べた結果、暫くするとアルコールを吸収した豆が膨張して、膨満感が続くことです。食べ過ぎに注意です。
ピーナッツもホコホコとした噛み応えです。焼き具合が絶妙です。なるほど、この噛み応えがこの店の特徴でしょうか? ただ、ビールのツマミにはもう少し辛さが欲しいところですが、お茶うけには良いかも知れません。
私、先ずわさび豆をここで買います。合わせて、いっぱいあるいり豆から好みを見つけていきたい店です。