金曜日に診察し、どうも腑に落ちない所のあった患者さん、土曜日にFAXされてきた異常値を診て、朝早くから患者宅に電話し、休診の総合病院に頼んで送り込んだ。その顛末を少し書いてみる。
患者さんは比較的元気な八十二歳のお爺さん、いつもは高血圧症と軽微な認知症で通院しておられる。水曜日に会社OBの忘年会に呼ばれ最長老ということで、平素より飲み食いが過ぎたようだった。翌日からどうも食欲がなく、元気が出ないと金曜日に受診された。熱も痛みもなく診察しても心音肺野に異常雑音はなく腹部にも所見はない、風邪のようでもなく飲み食いが過ぎて胃の調子が悪くなったのだろうかと、胃薬を出し念のため肝炎かもしれないと採血をしておいた。看護師が首をひねる私を見て、結果を至急にしておいてくれたので土曜の朝FAXで結果を知ることができた。ASTが230ALTが65LDHが580と肝疾患のようで、実は心筋障害を示唆する所見だった。慌ててS病院に入院精査依頼の電話をした。女医さんで声は優しいが、ハイハイどうぞとは行かずちょいと手こずったが受け取ってもらえ、患者さんを送り込むことができた。
昨日の午後患者家族から受付に心筋梗塞だったが入院でき幸い経過順調で、早く病気を見つけていただいてと感謝の電話があった。有難いご家族で、だから幸運が舞い降りたと秘かに思った。確かに非典型的で難しかったのではあるが、最初の日に心筋梗塞と診断できず半日遅れになってしまったわけで、家族や経過によっては感謝どころか、怒って来られたり恨まれたりする可能性もあった。
これを運不運で片付けて良いものかどうか分からないが、こういう仕事をしていると運が良かったと胸をなでおろしたくなる。