伊勢の五十鈴川の清々しさは西行の心に安堵をもたらしただろうし、はるかに広大な伊勢の神域に西行は深い畏敬の念を抱いたのである。」(石川雅一『清盛の盟友、西行の世界を辿る』s.172)
福原へ宮こ遷りありと聞こえし比、伊勢にて、月の歌よみ侍しに
103 雲の上や古き都になりにけり澄むらむ月の影はかはらで
平清盛によって摂津の国、福原へ(現在の神戸市)へと遷都が行われたこと、この頃、西行は伊勢にあってそれを聞いてみずからの感慨を歌にしている。
雲の上の人々、公家人たちが住んでいた京も昔の都になってしまった。ただ夜空にあって澄み渡った月の光だけが今も昔も変わらないままで。