ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第七十八節[個別の本性について]
§78
Das Böse ist die Entfremdung (※1)von Gott, insofern das Einzelne nach seiner Freiheit sich von dem Allgemeinen trennt und in der Ausschließung von demselben absolut für sich zu sein strebt. Insofern es die Natur des endlichen freien Wesens ist, in diese Einzelheit sich zu reflektieren, (※2)ist sie als böse zu betrachten. (※3)
§78[個別の本性について]
個別が自らの自由によって、自己を普遍から分離するという点において、そして普遍を排除して絶対的に自立してあろうとする点において、悪 とは神から離反することである。この個別性のうちに自らを映し出すことが、有限で自由な存在の本性である点において、その本性は悪とみなされなければならない。
※1
Ent-fremd-ung は、ふつう「疎外」と訳される場合が多い。
要するに「(自己から分離して)他者、他人になること」である。
人間と異なり、動物はこの離反、分離 Entfremdung の自由をもたない。
fremd = foreign
よそよそしい、 見知らぬ、居心地の悪い、外国の、得体の知れない、なじみのない、などの訳語が当てられる。
マルクス主義で、労働者とその労働の生産物との関係を「Entfremdung 疎外」として使うようになって一般化した。
※2
die Natur des endlichen freien Wesens
「有限で自由な存在」とは、もちろん「人間」のことである。
in diese Einzelheit sich zu reflektieren
自己を個別性に映し出すこと。個別性に固執すること。
※3
マルクス主義やその他多くのユートピア学説、人権論は、この個別の本性を見落としている。
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