ヘーゲル『哲学入門』 中級 第二段 自意識 第二十八節[欲望の自己感覚]
§28
In der Begierde verhält sich das Selbstbewusstsein zu sich als einzelnes. Es bezieht sich auf einen selbstlosen Gegenstand, der an und für sich ein anderer, als das Selbstbewusstsein. Dies erreicht sich daher in seiner Gleichheit mit sich selbst in Rücksicht auf den Gegenstand nur durch Aufhebung desselben. Die Begierde ist überhaupt: 1) zerstörend ; 2) in der Befriedigung derselben kommt es deshalb nur zu dem Selbstgefühl des Fürsichseins des Subjekts als einzelnen(※1), dem unbestimmten Begriff des mit der Objektivität verbundenen Subjekts.(※2)
第二十八節[欲望の自己感覚]
欲望においては、自己意識は自ら自己に対しては「個別者」としてふるまう。欲望において自己意識は、自己をもたない本来的に他者である対象と、自己意識として関係する。したがって自己意識は自ずから、ただ対象を食い尽くすことのみを通して、対象との関係において自分自身と対象とが同等であることを実現する。
欲望は一般的に
1) 破壊的であり、
2)こうして欲望が充足されると、ただ個別者としての主体に、自分自身であるという自己感覚の自覚のみが生じてくるが、その自己感覚は主体と客体とがからまった、あいまいな概念である。
※1
dem Selbstgefühl des Fürsichseins des Subjekts als einzelnen は
直訳すると、「個別的なものとしての主体の自覚的存在の自己感覚へ」となるが、わかりにくい。
とくに、「Fürsichseins」は「自己に向かう存在」だが、この場合の「sich」は「Ich」=「私」「自我」「自分」の代名詞であり、したがって「Fürsich」は「自覚しつつある私、あるいは自覚した私」である。これに対し「Ansich」は「まだ無自覚な私」である。
※2
「私」とは、すなわち「自己意識」のことであるが、この「自己意識」は「欲望」によって、自分自身であるという個別的な独立した意識を確立する。この欲望の対象は、さしあたっては「物」、すなわち「自己をもたない対象」である。それゆえに、この場合に生じる自己感情(感覚)は、主体と客体の境があいまいである。食い尽くされた肉は、自らの身体と区別がつかない。
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