§26
Das Gesetz (※1)ist der abstrakte Ausdruck des allgemeinen an und für sich (※2)seienden Willens.
法律は、本来的に存在する普遍的な意志の抽象的な表現である。
第二十六節
Erläuterung.
説明
Das Gesetz ist der allgemeine Wille, insofern er es nach der Vernunft ist. Es ist dabei nicht notwendig, dass jeder Einzelne bloß durch sich diesen Willen gewusst oder gefunden habe. Auch ist nicht nötig, dass jeder Einzelne seinen Willen erklärt hatte und dann daraus ein allgemeines Resultat gezogen wurde.
法律は、それが理性によるものであるかぎりにおいて、普遍的な意志である。その際に、各々の個人がただ自分でこの意志を知ったとか、あるいは見つけだしたかどうかといったことは重要ではない。また、各々の個人が自分の意志を説明して、そうして、そこから一つの普遍的な結論が導き出されたといったことも重要なことではない。
Es ist deswegen in der wirklichen Geschichte auch nicht so zugegangen, dass jeder einzelne Bürger eines Volkes ein Gesetz vorgeschlagen hätte und dann durch gemeinschaftliche Beratung mit den andern über das Gesetz übereingekommen wäre.
だから実際の歴史においても一つの民族の市民の各々が法律を提案し、そうして他の人との共同の話し合いを通して法律について合意にたっしたということもなかった。
Das Gesetz enthält die Notwendigkeit der rechtlichen Verhältnisse gegen einander. Die Gesetzgeber haben nicht willkürliche Satzungen gegeben. Es sind nicht Bestimmungen ihres besonderen Beliebens, sondern sie haben durch ihren tiefen Geist erkannt, was die Wahrheit und das Wesen eines rechtlichen Verhältnisses ist.
法律には、お互いに対する法的な関係の必然性が含まれている。立法者はかって気ままに法令を与えたのではなかった。法律は立法者の特別な都合による規定ではなくて、むしろ立法者は彼らの深い精神によって、法的な諸関係について何が真理であり本質であるかを認識したのである。
(※1)
前節§25においても明らかにしているように自然状態についてのヘーゲルの基本的認識は「暴力と不法の状態」である。したがって人間は必然的に「自然的状態」から「理性的状態」へと移行してゆかなければならない。
この「理性的状態」を担保するのは、本節§26で論じる「法律(Gesetz)」である。この法律は国家において現実的なものとなる。
(※2)an und für sich について、どのように訳すべきかについては、以下で論じた。
「an und für sich」をどう訳すべきか - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/tPnAPg
ヘーゲル『哲学入門』第二章 国家社会 第二十六節 [法律について] - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/T0W42r