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日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

§ 280c[悟性的思考と国家理念の破壊]

2018年07月13日 | 哲学一般

 

§ 280c[悟性的思考と国家理念の破壊]

Aber indem die Vorstellung des Monarchen als dem gewöhnlichen Bewußtsein ganz anheimfallend angesehen wird, so bleibt hier um so mehr der Verstand bei seiner Trennung und den daraus fließenden Ergebnissen seiner räsonierenden Gescheitheit stehen und leugnet dann, daß das Moment der letzten Entscheidung im Staate an und  für sich (d. i. im Vernunftbegriff) mit der unmittelbaren Natürlichkeit verbunden sei; 

しかし、君主の観念は、平凡な意識にとっては、まったく当たり前のものと見られているので、そうしてここではさらに悟性は(概念と存在との)かの分離のもとに留まっているいるために、そして、そのあれこれ理屈をこね回す賢しらから導き出した結論のうえに立って、国家において本来的に(すなわち理性概念において)最終決定の要素が直接的な自然性(君主)と結びついていることを否定するのである。

woraus zunächst die Zufälligkeit dieser Verbindung und, indem die absolute Verschiedenheit jener Momente als das Vernünftige behauptet wird, weiter die Unvernünftigkeit solcher Verbindung gefolgert wird, so daß hieran sich die anderen, die Idee des Staats zerrüttenden Konsequenzen knüpfen.
 
そこから、さしあたってはこの(最終決定の要素と君主という自然性との)結びつきの「偶然性」が主張され、そして、理性的なものとしてのそれぞれの要素(普遍、特殊、個別)の絶対的な区分が主張されることによって、さらには、このような結びつきの不合理が結論づけられて、その結果として他面において必然的に、国家の理念を破壊するといった結末がもたらされるのである。※1
 
 
 
 
 ※1
国家の最終的な意思決定(概念)とその具体的な自然的存在である君主との結びつきを合理的なものとして認められない平凡な意識と悟性は、むしろ、その不合理を結論づけて国家の理念を破壊してしまう。

ヘーゲルの上記のこの説明は、彼が目撃したフランス革命のその歴史的な結末の論理的な検証でもある。そしてまた、今なおその具体的な事例となっているのが、憲法学者にして今はなき元東大名誉教授の奥平康弘氏などの「天皇制」理解と言えるかもしれません。

奥平氏は自らの著書『萬世一系の研究』の中で「「女帝」論議をひきおこす根幹である天皇制には、いかなる合理的な根拠があるのか。」という問いを発せられる一方、そのあとがきの中では「天皇制と民主主義とは両立しない」と断言される。

しかし、奥平康弘氏のこの結論は、「公共理性」の検証ともいえるヘーゲルの『法の哲学』の必ずしもじゅうぶんに批判的な検討の上に得られたものではないようです。むしろ、それはヘーゲルのいう「悟性的思考」によってもたらされたものにほかならない。

東大法学部で永年にわたって憲法学の講座を担当されてこられた奥平康弘氏のこの結論は、今日もなお、樋口陽一氏などの他の多くの日本の憲法学者たちとも共通する見解として、日本の憲法学界の多数意見として広範な影響力を有しているものと考えられます。

願わくは、現在東大法学部に在学中の司法の若き卵たちにも、このヘーゲルの『法の哲学』と奥平康弘氏の『萬世一系の研究』や樋口陽一氏らの「憲法学」との比較研究を実行して戦後日本の憲法学界の通説の是非を検証していただきたいものです。
 
 
 ※ご参考までに
 
 
 
 
 
 
 
 

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