擁壁内部に土木用発泡スチロールを敷き詰めていく作業員(広島市南区で)
3月に開業する広島駅の新駅ビルに乗り入れる広島電鉄の新線「駅前大橋ルート」(広島市南区)の高架工事で、一部区間に土砂の代わりに発泡スチロールを使った工法が採用されている。真下にある地下空間にかかる重さを軽減するためで、鉄道の営業線本線でこの工法を使うのは国内初という。
高架区間(約260メートル)のうち、猿猴川左岸から大州通りまでの72メートルの区間は地下にイベント広場がある。高架橋を渡す通常工法だと、広場を巨大な支柱が貫くことになり、人が集える空間の機能を損なう。また、通常の盛り土で高さを稼ぐと、地下に大きな荷重がかかる。
そこで、この区間は軌道の土台として溝状のコンクリート製擁壁を据え付け、中を発泡スチロールで埋める「EPS工法」(軽量 盛土もりど 工法)を導入した。長さ約55メートル、高さ約5メートル、幅約6・6メートルの範囲に、土木用発泡スチロールのブロック(縦2メートル、横1メートル、高さ0・5メートル)をカットしたものも含め計約2000個敷き詰める。同工法は、道路工事で一般的に用いられている。
土木用発泡スチロールは一般的なものより高密度で硬いため変形に強く、積み重ねても崩れないのが特長。ブロック同士は金具で固定する。3層構造で、1層分ができる度にコンクリートで蓋をする。ブロック1個分の重量は、標準的な土砂だと1800キロになるのに対し、土木用発泡スチロールはわずか25キロと、72分の1に軽量化できるという。駅ビル内の電停でも発泡スチロールのブロックが使われている。
この工法を使った作業は24日に完了し、線路の敷設準備に取りかかる。新駅ビルへの路面電車の乗り入れは夏頃になる見通し。広電広島駅JV工事事務所の平井修副所長は「発泡スチロールのブロックには十分な強度があり、擁壁は巨大地震に耐えられる構造になっている。都市内の土木工事ではあまりない工法だが、安全に作業を進めたい」と話している。