現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

児童文学においてアイデアをどうやって作品化するか

2016-11-01 13:29:13 | 考察
 児童文学の同人誌に参加していると、よくアイデアはいいのだが、まだ物語として仕上がっていない作品に出会います。
 特に、作品を書きなれていない初心者に多いようです。
 その多くは、せっかくのアイデアがよく熟成されていないうちに作品化されているケースが多いようです。
 アイデアが浮かんだ時に、それをすぐに作品化するのではなく、十分に熟成させる必要があります。
 アイデアを一つの形にまとめる作業は、創作だけでなくビジネスの場などでもよくおこなわれます。
 そこで、その世界でよく使われている手法をご紹介します。
 まず最初に、頭に浮かんだアイデアをかたっぱしから書き留めましょう。
 白紙に箇条書きに書いてもいいし、カードなどに書き留めてもいいです。
 アイデアがどんどんわいてきたときには、きれいに書く必要はありませんから、その辺にある紙に適当に書きなぐってしまいましょう。
 きれいにまとめるより、アイデアをもれなく文字化することがポイントです。
 パソコンを使っているときにはメモ帳でも、ワードでもかまないので入力しますが、タイピングの遅い人はいったん紙に全速力で書きなぐってから、改めて入力しましょう。
 アイデアには羽が生えていて、すぐに飛んで行ってしまいます。
 次は、出てきたアイデアをグルーピングするのですが、関連するものをひとまとめにしておくと、後の作業で便利です。
 ここでは、KJ法という有名な手法を使うと便利なのですが、詳しくは下のバナーにあげておいた本などで調べてください。
 そして、いよいよ作品化作業に入ります。
 まず、グルーピングしたアイデアを作品中の順序に基づいて、四つの塊に並べます。
 その時に、その四つをそれぞれ「起」「承」「転」「結」にしておくと、物語にメリハリがつきます。
 そうやって並べてみると、アイデアに抜けがあることに気が付きますので、必要なアイデアを補充します。
 この後、一般的には、シノプシスに仕上げるのですが、人によってはシノプシスを書くことによって満足してしまって、肝心の作品が書けなくなることもありますので、このステップは割愛してもいいかもしれません。
 そして、いよいよ本番の作品を書く作業をスタートさせます。
 以上のステップで、四百字詰め原稿用紙で四、五枚の掌編は、簡単に書けます。
 もっと長いものを書きたいときは、起承転結の各ステップにさらに小さな起承転結を作り、全部で16ステップにします。
 それ以外は、前出の方法で書けば、四百字詰め原稿用紙で20枚から30枚ぐらいの短編が書けます。
 さらに、その展開を繰り返して64ステップにすれば、120枚から160枚ぐらいの中編(児童文学の世界では長編として一冊の本になります)ができあがります。
 いったん以上のステップで作品を完成した後は、仕上げとしてこれらの構成にこだわらずに自由に書き換えて完成させる必要があることは言うまでもありません。

 
続・発想法―KJ法の展開と応用 (中公新書 210)
クリエーター情報なし
中央公論社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミミちゃん、ベラミ

2016-11-01 08:25:33 | キンドル本
 主人公は、私立小学校へ電車で通っています。
 ある日、通学電車の中で、風変わりな女の子に出会いました。
 その子は、満員電車の中で、不思議な呪文を唱えていたのです。
 主人公は、思い切って声をかけて、女の子と友だちになります。
 その女の子、ミミちゃんは、主人公と同い年です。
 主人公は、しだいにミミちゃんに淡い初恋の気持ちをいだきます。
 満員電車の中で、二人だけの秘密の遊びをします。
 そして、はじめてのキスをかわしたのは、帰りのすいた電車の中でした。
「ネコイラズ」の謎をめぐって、二人は冒険にでかけます。
 二人と不思議なおじさんとで、ネズミのお葬式をします。
 その帰りに、主人公が思ったことは?

 (下のバナーをクリックすると、スマホやタブレット端末やパソコンやKindle Unlimitedで読めます)。


ミミちゃん、ベラミ
クリエーター情報なし
平野 厚
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

綿矢りさ「亜美ちゃんは美人」かわいそうだね?所収

2016-11-01 08:20:59 | 参考文献
 みんなから注目される美人の亜美ちゃんと、親友で彼女の「マネージャー」と呼ばれるさかきちゃんとの、高校から大学、社会人、そして亜美ちゃんが結婚するまでの奇妙な友情を、駆け足で描いた短編です。
 題名を見たときに嫌な予感はしたのですが、案の定でした。
 一読、ひと昔前の少女マンガ(例えばくらもちふさこなど)か、群ようこのエッセイの世界のようです。
 設定も描き方も、非常に観念的なステレオタイプで新鮮さがありません。
 特に、作品内に漂うジェンダー観の古さは目を覆うばかりです。
 もっとも、不況による就職難のせいで、綿矢の主な読者である若い女性の間にはジェンダー観の揺り戻し(女性の幸せは結婚する男性次第、結婚には何より男性の経済力を求めるなど)が起こっているので、共感は得られるかもしれません。
 でも、なんで芥川賞を取った純文学系の綿矢が、こんな作品を書かなければならないのか非常に不思議です。
 まわりの編集者たちは、本や雑誌を売ることばかりに熱心で、文学的なアドバイスはぜんぜんしないのでしょうか。
 この短編のおかげで、「かわいそうだね?」という本はずいぶん値打ちを下げてしまいました。
 他の記事にも書きましたが、つまらない「オリジナリティ」のために、賞を取った短編や中編に抱き合わせで低レベルな短編をおまけにつける悪習はいい加減にやめてもらえないでしょうか。
 
かわいそうだね?
クリエーター情報なし
文藝春秋
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする