今年は銀塩写真に回帰した年であった。
モノクロフィルムで撮影し、アナログ暗室を復活させ、自宅(風呂場)で全紙プリントまで焼いた。
そのプリントを並べて写真展をしたことで、いままでぼんやりしていたイメージがはっきりとし、形に表すことができた。
同時につぎに撮るべきイメージも見えてきている。
また写真制作と並行して、自分が写真を撮ることの意味や写真でなにを表現しようとしているのかを文章化する作業をすすめた。
その結果、自分自身でも気がつかないまま「なんとなく」撮っていたものが、じつは自分の幼いころの記憶の「あること」に感応してシャッターを押していたことがわかった。
すなわち、写真表現のテーマが自分史を掘り下げるなかから見えてきたのだ。
そのテーマがまた撮影にフィードバックされ、視覚がより先鋭化したように思う。これはあたらしい制作態度の発見であった。
ただ、そのテーマと写真とがまだ完全に一体化していない気がするので、この掘り下げないしはまとめの作業は今後もつづくだろう。
ところで、先日撮った2歳になる娘さんの写真であるが、選んでもらうためのサンプル写真(L判58枚)とそれを入れるかわいいミニアルバム、そして後日、三面の台紙アルバムに仕上げて写真を納品したら、代金の入った封筒のなかにこんなメモが入っていた。
「今回は本当にありがとうございました。たくさんの写真とミニアルバムもいただくことができ、家族みんなで写真を見て楽しませていただきました(後略)」
たったこれだけのことだが、ああ、撮ってあげてよかったな、と感じた。
自分が撮った写真で喜んでもらえるというのは、カメラマン冥利に尽きると思う。
仕事の写真はもちろんだが、自分の作品としての写真を見た人が幸せな気持ちになってくれたら、なおうれしいだろう。
来年はそんな写真が撮れたらいいなと思う。