舞台はスコットランドの港町。父親のいない耳の不自由な少年フランキーのために、父親になりすまして手紙を出す母親や一日限りの“パパ”を演じる風来坊などが織りなす人情ドラマ。
一歩間違うとトンでもない“お涙頂戴有り難う”になるようなシチュエーションだが、これがデビュー作になる女性監督ショーナ・オーバックは物語とキャラクターをじっくりと練り上げ、安心して薦められる良心作に仕上げている。少なくとも感動の押し売りは希薄であり、大人の映画作りとはこうなのかと、誰しも納得することだろう。
グラスゴーから近いグリーノックの街の、うら寂しい風景が登場人物達の孤独な姿を反映している。臨時の“父親”を演じるジェラルド・バトラーがえらくカッコ良く、これは作者の“願望”を表現しているとも言えるが(笑)、ストーリー設定およびエミリー・モーティマー扮する母親やフランキーの友人達が地に足がついたような的確な描かれ方をされているため、有名スターにおんぶに抱っこ状態の“お手軽映画”とは一線を画することに成功している。
それにしても、フランキーの本当の父親の所業がこの一家に暗い影を落としていることに慄然とせずにはいられない。決して“甘いだけの人情篇”にしない製作者キャロライン・ウッド(「鳩の翼」など)の冷静さが光る映画でもある。