元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ハウルの動く城」

2005-11-27 18:58:55 | 映画の感想(は行)
 宮崎駿監督作品としては最低の部類である。何より脚本が壊滅的だ。

 魔女に呪いをかけられ90歳の老婆にされてしまう18歳のヒロインが、自分の運命に大して悲観するでもなく“あっという間に”その境遇を受け入れてしまうという噴飯ものの設定をはじめ、加害者に対する確執も描かれないばかりか、どうやったら魔法が解けるのかも不明。だいたい、場面ごとに何の脈絡も前提条件もなく、ヒロインの見た目が20代から90代にランダムに移行していく様子も意図が分からない。

 対するハウルも全くキャラクターの練り上げが出来ていないし、そもそも彼が戦っている相手とその理由も全然説明されていない。彼とカルシファーとの関係についても明示されていない。

 いったい何を描こうとしているのか、どういう方向で観客を楽しませようとしているのか、皆目分からない。まったくもって、作者の独りよがり。

 映像面も特筆されるべき箇所は皆無。少なくとも同じ年に公開された大友克洋の「スチームボーイ」に完全に負けている。そしてトドメは声優。木村拓哉がヒドいってことは当初から予想していたが、倍賞千恵子の仕事はまさに惨状と言うしかない。 時間をかけてこの程度のものしか作れないのなら、もう宮崎駿は引退した方がよいだろう。

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 ・・・・なんてことを某掲示板に書いたのがほぼ一年前。「その通りだっ!」というレスもあったけど、「宮崎作品をケナすのは許せない」とか「画面がキレイだからそれでいいじゃん。文句付けるなコラ!」とかいう香ばしい反響がいくつか返ってきたことを思い出す(爆)。

 まあ、どんな感想を持とうと個人の自由ではあるのだが、ただひとつ「誰が何と言おうと傑作である。宮崎監督作品イコール傑作である。だいたいこれはファンタジー映画なんだから、ストーリーなんてどうでもいいのだ。オマエみたいにあれこれケチをつけるのは禁物だぞ!」というレスには正直参った。それって、ファンタジー映画そのものをバカにしているセリフじゃないか。「あなた、アニメ以外の映画観たこと無いだろゴラァ!」と言い返したくなった私である(実際は言い返していません。念のため ^^;)。
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「フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白」

2005-11-27 16:58:04 | 映画の感想(は行)

 2003年度アカデミー長編ドキュメンタリー賞に輝いたエロール・モリス監督作品。ケネディ・ジョンソン両政権の国防長官を歴任し、後に世界銀行総裁へと上り詰めたロバート・S・マクナマラへのインタビューを中心に、20世紀の戦争史を振り返る。

 これを観ると「華氏911」なんてのが“子供の遊び”に思えてくる。特定のイデオロギーに基づいてニュースフィルムを編集し、あまり笑えない寸劇を織り交ぜただけのマイケル・ムーア作品と、現代史の当事者本人を引っ張り出した本作との差は明白だ。

 東京大空襲における戦略やキューバ危機の内幕など、歴史好きを唸らせるネタもさることながら、戦争の関係者たちが誰一人として本心では交戦を望んでいなかった事実に愕然とする。小林正樹監督の「東京裁判」でもそういうアプローチは成されていたが、こういう“戦争に至るトレンド”は世界共通のものであることに改めて感じ入らざるを得ない。

 我々が享受している“平和”は、国際関係の微妙なバランスの上にかろうじて成立しているに過ぎないのだ。“人は善をなさんとして悪をなす”というマクナマラのセリフはずっしり重い。

 ベトナム戦争敗北の責任の一部は彼にあることは明らかだが、現時点での御為ごかしの弁明など何もならないことを、当時の国防長官だったマクナマラは一番よく知っている。老人は諦観してあの頃を回顧するしかないのだ。まさに“戦争は霧の中にある”。

 固定カメラは彼の表情をくまなく捉え、どんな逃げ道も与えない。時折挿入される当時のアーカイブ映像が絶妙の映像のリズムとなり、観る者をぐいぐいと引き込んでゆく。フィリップ・グラスの音楽も抜群の効果だ。
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「レイクサイドマーダーケース」

2005-11-27 10:01:58 | 映画の感想(ら行)
 東野圭吾のミステリー「レイクサイド」の映画化だが、プロット面はほとんど見るべきものがない。いくら登場人物たちが事件を必死で隠蔽しようとも、(主人公の「失態」を待つまでもなく)これではすぐにバレる。しかも、真犯人は中盤で察しが付いてしまう。

 そもそも“名門中学への受験準備のため、家族と塾講師が人里離れた湖畔の別荘で合宿する”という設定自体に無理がある。そこまでしなければ合格できない子供など、学校側は要らないのではないだろうか。“お受験”に疑問を抱きながら、結局そんな胡散臭い“合宿”に参加してしまう主人公も根性無しだ(笑)。

 しかし、観る価値はあると思う。問題を抱え、それでも世間体として“家族”を演じなければならない彼らの“心の闇”を、同じく少年少女を物語のキーポイントにした「EUREKA」の青山真治監督は容赦なく描き出そうとしている。それを活かすのが役所広司や薬師丸ひろ子、豊川悦司、柄本明といった出演者陣の怪演・熱演だ。一歩間違えば“セリフ過剰の舞台劇もどき”にしかならない題材を力業で観客の側に引き寄せており、観賞後の満足感は決して小さくはない。

 脇を固める鶴見辰吾、杉田かおる、黒田福美らも健闘しているが、個人的には主人公の若い愛人を演じる眞野裕子がエッチで良かった(笑)。
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