監督・犬童一心、脚本・渡辺あやという「ジョゼと虎と魚たち」のコンビによる新作は、ゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を舞台にした父と娘の葛藤劇だ。
前作と同様、登場人物達の心のひだを無理なく掬い取る犬童演出に感心する。“余命いくばくもない父の看病をする娘”と書けば聞こえは良いが、同性愛をカミングアウトして家族を捨てた父親とその仲間たちは、娘にとって嫌悪の対象でしかない。彼女にしたところで田舎の中小企業で働く事務員に過ぎず、やるせない日常を漫然と送るだけだ。しかし、父の“恋人”に対するほのかな想いが、ヒロインをして徐々に他者に向き合わせてゆく、そのプロセスの丁寧な描写には好感が持てる。
前回の身障者にしろ今回のゲイの老人にしろ、社会のアウトサイダー達とのコミュニケーションの可能性と共に、それでも微妙な屈託を捨てられない“弱さ”まで丹念にフォローする作劇を見るにつけ、作者の人間に対するポジティヴな視線を感じて快い。
キャラクターもすべて“立って”おり、柴咲コウがすっぴんで演じる主人公、オダギリジョーの海千山千の外見の内に秘めた純情さ、山田洋次監督作とはうって変わった役柄にチャレンジした田中泯のカリスマ的な存在感、そして波瀾万丈の人生を笑い飛ばすかのように明るく日々を送る老いたゲイの面々には泣けてきた。
細野晴臣の音楽も素晴らしい。犬童監督と渡辺あやはこれからもタッグを組んで作品を世に問うて欲しい。
前作と同様、登場人物達の心のひだを無理なく掬い取る犬童演出に感心する。“余命いくばくもない父の看病をする娘”と書けば聞こえは良いが、同性愛をカミングアウトして家族を捨てた父親とその仲間たちは、娘にとって嫌悪の対象でしかない。彼女にしたところで田舎の中小企業で働く事務員に過ぎず、やるせない日常を漫然と送るだけだ。しかし、父の“恋人”に対するほのかな想いが、ヒロインをして徐々に他者に向き合わせてゆく、そのプロセスの丁寧な描写には好感が持てる。
前回の身障者にしろ今回のゲイの老人にしろ、社会のアウトサイダー達とのコミュニケーションの可能性と共に、それでも微妙な屈託を捨てられない“弱さ”まで丹念にフォローする作劇を見るにつけ、作者の人間に対するポジティヴな視線を感じて快い。
キャラクターもすべて“立って”おり、柴咲コウがすっぴんで演じる主人公、オダギリジョーの海千山千の外見の内に秘めた純情さ、山田洋次監督作とはうって変わった役柄にチャレンジした田中泯のカリスマ的な存在感、そして波瀾万丈の人生を笑い飛ばすかのように明るく日々を送る老いたゲイの面々には泣けてきた。
細野晴臣の音楽も素晴らしい。犬童監督と渡辺あやはこれからもタッグを組んで作品を世に問うて欲しい。
