元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「コピーキャット」

2008-06-02 06:34:32 | 映画の感想(か行)
 (原題:Copycat )95年作品。歴代の有名な殺人鬼の手口をそっくりマネする連続殺人事件が勃発。捜査を担当するサンフランシスコ市警のモナハン刑事(ホリー・ハンター)の元に犯罪心理学者ヘレン(シガニー・ウィーバー)から電話がかかる。二人で協力して犯人を挙げることになったものの、ヘレンは以前に殺人鬼ダリル(ハリー・コニックJr.)に襲われて以来、屋外恐怖症にかかっていた。「ジャック・サマースビー」のジョン・アミエル監督の手によるサイコ・サスペンスで、アメリカではヒットしたらしい。

 観る前は“そこそこの出来かな”と思っていたが、実際その通りだった。二大女優の共演は賑やかで、作劇もソツがなく、「セブン」みたいなコケおどかし映画とは違って実にまともなサスペンス劇だと思う。反面、観終われば何も残らない物足りなさも併せ持っている。

 この映画のようにサイコ趣味を通常のサスペンス作品の“単なるネタ”として扱う方法もそれはそれで存在価値はあるのだが、こういう狂った犯人像を提示している以上、もっとその実体に迫ってほしかった。ちょっと考えただけでも、他人の手口をマネすることしかできないこの犯人の屈折度と異常性は相当なもので、どういう思考構造でそういう犯行に及ぶのか観客ならば知りたいところだ。しかも主人公の一人は犯罪分析医だから、ここは徹底的に理詰めに犯人の内面を解明していくというプロット展開が正解だと思う。

 ところが映画は、そういう方面はサラッと流すだけで、屋外恐怖症のヒロインの被害者意識を煽り立てる方にドラマの中心を置いてしまっている。これはあまり賛成できない。モナハンの同僚の刑事に関するエピソードも消化不良に終わっている。

 出てくる犯人がフツーっぽいのはいいとして、それを強調するあまり外見が小物すぎてインパクトに欠ける結果となった。おとなしそうでも凄味を効かせたキャラクターであればよかったが、これでは小心者の“下っ端”である。

 ただ公開当時は面白かったのが、犯人がネットワークを通じてヘレンのパソコンに入り込んでいくところ。犯行現場の写真をカット&ペーストして悪趣味なメッセージを展開するあたりは思わず身を乗り出した。このセンで全編突っ走ってほしかったが・・・・。ラストの対決シーンは段取りが読めすぎてイマイチ楽しめなかった。
コメント
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