元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」

2008-06-03 06:35:19 | 映画の感想(た行)

 (原題:Charlie Wilson's War)テーマはハードながら、トム・ハンクスのとぼけた持ち味とマイク・ニコルズの脱力系の演出が相まって、ライト感覚で観られるところが本作の取り柄であろう。

 時代設定は80年代前半、酒と女が大好きなテキサス州選出のお気楽議員チャーリー・ウィルソン(ハンクス)が、ひょんなことから侵攻したソ連軍によって荒れ果てたアフガニスタンの現状を知るに及び、アフガンの反ソ勢力を支援すべく東奔西走するという、実話に基づいた(という触れ込みの)政治ドラマだ。

 どう見てもそれまでマジメに国際紛争問題に取り組んでいた気配のない、軽佻浮薄なウィルソンがアフガン問題に興味を持ったのか、そのへんがハッキリしない。もちろん、カンダハルの難民キャンプの悲惨な状態を見れば、誰だって何とかしなければと思う。しかし、わざわざ現地まで足を運ばせることになったその動機が分からない。映画では政治資金の拠出元であるテキサスの大富豪夫人(ジュリア・ロバーツ)の影響が大きいように示されているが、それだけでは弱い。

 でも、ハンクスの口八丁手八丁ぶりは“そんなのどうでもいいだろ!”とばかりに観客まで丸め込む勢いであり、そのへんを笑って済ませてしまえばあとはラストまで一気呵成だ。軽くこなしているように描かれているが、ウィルソンの遣り口は相当ヤバい。海千山千のCIA局員(フィリップ・シーモア・ホフマン)の力を借り、何とパキスタンとエジプトとイスラエルを協力させてアフガンのゲリラに武器を提供してしまうのだから。ただし、アメリカの政界は敵同士でも簡単に談合させてしまう寝技を持ちながら、その目的が最終的に自分の不都合に繋がってしまうことを指弾しているのが、この映画の手柄であろう。

 反ソ勢力に武器を渡してソ連を撃退したまではいいが、その後のタリバン派の支配下に置かれたアフガンがテロリストの溜まり場になり、9.11後にまたアフガンに出兵するハメになるアメリカのディレンマを痛烈に皮肉る。またウィルソンは民主党議員だが、リベラルとされる勢力が結局は戦争の火種をばらまいてしまう運命の悪戯。何が正義で、何が大多数の利益に寄与するのか、そのシビアな問題を前に最後は彼はただ立ち往生するばかりだ。

 ハンクスとホフマンはいつもながらの手堅い好演。ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽も良い。ウィルソンの秘書役のエイミー・アダムスは「魔法にかけられて」に続いてまたしても動物に好かれる役を振られているようだ(笑)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする