90年作品。第二次大戦中の富山県を舞台に、そこに疎開してきた東京の少年と地元の少年たちとの友情と葛藤を描く。柏原兵三の小説「長い道」を基にした藤子不二雄Aの漫画「少年時代」の映画化。監督は「鑓の権三」「舞姫」などの篠田正浩。
昭和19年、東京の政府高官の息子である小学5年生の進二は父の里である富山に一人で疎開してくる。坊っちゃん然とした進二にまず近づいてきたのが、クラスの級長でリーダー格の武である。武は貧しい漁師の子で、家の手伝いをしながらも成績抜群。腕力もある。彼は子どもたちのボスとして君臨していた。皆の前ではガキ大将として独裁的な力をふるう武だが、進二と二人きりの間は対等な友達関係でいる。しかし、副級長の須藤は武をうとましく思っていて、ひそかに打倒・武の陰謀をめぐらす。武と須藤のパワー・ゲームはエスカレートする一方だが、進二は武との友情に心ひかれながらも、横暴な彼の態度に賛同できず、須藤の側につくが・・・・。
戦時中を舞台で主人公が少年というと、どうしても日本映画の場合、センチメンタリズムを前面に押しだしたりして、観る方をうんざりさせるが、この映画は違う。実に見応えのある、格調高い作品である。まず、日本映画にしては珍しく、子役がいい。優柔不断なお坊っちゃんといった進二役の子どもや、策略に長けた政治家みたいな須藤役の子役、圧巻は武を演じた堀岡裕二だ。子どもでいながら、人生を見透かしたところのある表情、それでいて周囲に対するコンプレックスを背負っているような目付き、すばらしい演技だと思う。武が隣町の番長にからまれている進二を助けるため、雪の中を自転車で飛ばしていくシーンはこの作品のクライマックスのひとつ。そしてそのあと、町の写真館で二人で撮った写真が感動のラストシーンの伏線となる。
子どものドラマといっても、全然甘いところがない。仁義なき権力抗争、新参者に対する情け容赦のなさ、などは完全に大人の世界である。それだけに印象は苦い。しかし、子供たちの好演と抑制の効いた演出は、この映画をさわやかなものにしている。大事にしていた戦艦陸奥のバックルを、さんざんいじめられた武にあげて、富山を去っていく進二の心情がよくわかるのも、そこにいたる盛り上げ方が巧妙なためだ。
岩下志麻、細川俊之、河原崎長一郎といった大人たちも好演。山田太一の脚本はよくできている。そして時代を見事に画面に反映させた木村威夫の美術と、鈴木達夫によるすばらしいカメラワークに拍手を送りたい。
昭和19年、東京の政府高官の息子である小学5年生の進二は父の里である富山に一人で疎開してくる。坊っちゃん然とした進二にまず近づいてきたのが、クラスの級長でリーダー格の武である。武は貧しい漁師の子で、家の手伝いをしながらも成績抜群。腕力もある。彼は子どもたちのボスとして君臨していた。皆の前ではガキ大将として独裁的な力をふるう武だが、進二と二人きりの間は対等な友達関係でいる。しかし、副級長の須藤は武をうとましく思っていて、ひそかに打倒・武の陰謀をめぐらす。武と須藤のパワー・ゲームはエスカレートする一方だが、進二は武との友情に心ひかれながらも、横暴な彼の態度に賛同できず、須藤の側につくが・・・・。
戦時中を舞台で主人公が少年というと、どうしても日本映画の場合、センチメンタリズムを前面に押しだしたりして、観る方をうんざりさせるが、この映画は違う。実に見応えのある、格調高い作品である。まず、日本映画にしては珍しく、子役がいい。優柔不断なお坊っちゃんといった進二役の子どもや、策略に長けた政治家みたいな須藤役の子役、圧巻は武を演じた堀岡裕二だ。子どもでいながら、人生を見透かしたところのある表情、それでいて周囲に対するコンプレックスを背負っているような目付き、すばらしい演技だと思う。武が隣町の番長にからまれている進二を助けるため、雪の中を自転車で飛ばしていくシーンはこの作品のクライマックスのひとつ。そしてそのあと、町の写真館で二人で撮った写真が感動のラストシーンの伏線となる。
子どものドラマといっても、全然甘いところがない。仁義なき権力抗争、新参者に対する情け容赦のなさ、などは完全に大人の世界である。それだけに印象は苦い。しかし、子供たちの好演と抑制の効いた演出は、この映画をさわやかなものにしている。大事にしていた戦艦陸奥のバックルを、さんざんいじめられた武にあげて、富山を去っていく進二の心情がよくわかるのも、そこにいたる盛り上げ方が巧妙なためだ。
岩下志麻、細川俊之、河原崎長一郎といった大人たちも好演。山田太一の脚本はよくできている。そして時代を見事に画面に反映させた木村威夫の美術と、鈴木達夫によるすばらしいカメラワークに拍手を送りたい。