元・副会長のCinema Days

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「F2グランプリ」

2024-11-01 06:20:13 | 映画の感想(英数)
 84年東宝作品。いわゆる“F1ブーム”が日本で巻き起こったのは80年代後半だとされているが、この映画はそれを先取りした形であるのが興味深い。もっとも、題材になっているのはF1ではなく全日本F2選手権(現在のスーパーフォーミュラに相当)なのだが、それでも邦画では珍しいカーレースを扱ったというだけでも存在価値はあるだろう。とはいえ、出来映えがあまり伴っていないのは残念ではある。

 F2シリーズの第2戦でトップ争いをしていた4台のマシンのうち、2台が接触事故を起こす。結果、元チャンピオンの宇佐美が即死する。彼の妹で同じレースに参加していた中野訓の恋人であるしのぶは別れを切り出し、中野は孤立してスランプに陥ってしまう。そんな中、自動車会社とタイヤメーカーから新型マシンのトライアル要請が中野の元に届き、やっと彼は復活に向けての切っ掛けを見出すことになる。海老沢泰久原作の同名小説の映画化だ。



 苛烈な先頭争いから大規模なクラッシュに至る冒頭のシークエンスの迫力はかなりのもので、日本映画でこれだけやれたのは評価すべきだろう(ホンダが全面協力していたらしい)。しかし、それ以外はどうもピリッとしない。

 監督の小谷承靖の作品は他に「コールガール」(82年)ぐらいしか観たことはないが、元々は東宝専属で「若大将」シリーズなどを手掛けていた人材。だから、スマートでライトな作風が身上だったのだと思うが、どう考えても本作のカラーには合っていない。つまり、描き方が表面的でマシンとレーサーたちとの関係に絶対とでもいった熱い結び付きが感じられないのである。

 また、登場するレーサーたちに強烈な個性が無い。F3レースからF2へと昇格した新進気鋭の中野訓をはじめ、連続トップを狙うベテランや暴走族あがりで毎年2位から抜け出せずにいる者など、それぞれ厳しい人生と野望を抱えているはずだが、皆どうも小綺麗で現実味が薄い。

 主演の中井貴一に野性味が足りないのは仕方が無いとしても(苦笑)、田中健に峰岸徹、勝野洋、地井武男、森本レオ、木之元亮といった濃い面々を配していながらアクの強さが出ていないのは失当だろう。石原真理子扮するヒロインも、何やら影が薄い。なお、テクニカル・アドバイザーとして中嶋悟が参加しており、原作者によれば主人公のモデルは中嶋とのことだ。

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