元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「サウンド・オブ・フリーダム」

2024-10-28 06:27:10 | 映画の感想(さ行)
 (原題:SOUND OF FREEDOM)かなり重要な題材を扱っており、鑑賞後の手応えは高レベルだ。描かれるのは児童人身売買の様態、および闇組織と当局側との死闘などだが、これらが実話を元にしているというのだから驚くしかない。世界の理不尽さに晒されるのは無辜の市民だというのは理解しているが、抵抗する術も持たない年少者が犠牲になる事実を突き付けられると慄然とするばかりだ。

 アメリカ国土安全保障省の捜査官ティム・バラードは、性犯罪組織に誘拐された少年少女の追跡捜査を敢行するため、犯罪の温床と思われる南米コロンビアに単身潜入する。当然のことながら捜査は難航するが、それでも地元警察やスポンサーを買って出た資産家パブロ、そして前科者ながら児童人身売買に対して義憤を抱いているバンピロらの協力を得て何とか結果を出し続けていく。やがてティムは誘拐された少女を救うため、ジャングルの奥地へと乗り込んでゆく。



 正直言って、事件解決に至るサスペンス描写や、アクション場面は大したことがない。アレハンドロ・モンテベルデの演出は万全とは言えず、展開もそれほどスムーズではないし、観ていて若干ストレスが溜まるのも事実。しかし、主人公ティム・バラードは実在の人物なのだ。そして彼の言動も事実に基づいている。だから迫真力が違う。

 児童人身売買の手口はエゲツなく、冒頭近くで犯罪組織が芸能オーディションという名目で近所の子供を集め、いつの間にか親の知らないうちに全員が連れ去られるというシークエンスがあるが、これがかなり衝撃的。さらに、ネット上で子供の“オークション”まで開かれて変態どもが落札に“応募”するに至っては、この世のものとは思えないおぞましさだ。

 ティムはこの地でかなりの実績を上げたことが示されるが、それでもこの悪行は今でも綿々と続いているのだ。映画の評価はまずウェルメイドに徹しているかどうかで決めるべきなのだが、映画の主題が出来自体を凌駕して求心力を押し上げることもある。本作はその好例だろう。

 そして何より主演のジム・カヴィーゼルの使命感に突き動かされたような熱演が印象的。エンドクレジットで彼が何と観客に語りかける箇所があるが、それがさほど不自然に見えないのは、事の重大さが観る者を圧倒している証左だと思う。ミラ・ソルヴィノやビル・キャンプ、エドゥアルド・ベラステーギら脇のキャストは申し分ない。そして出てくる子役たちも達者だ。また、ハビエル・ナバレテによる音楽が本当に効果的。幾分饒舌かとも思われるが、目覚ましい美しさを提供していることは確かだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「決戦は日曜日」 | トップ | 「F2グランプリ」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画の感想(さ行)」カテゴリの最新記事